教育改革によって、出願書類に新たな評価基準を設けた入試制度が始まりました。これまでAO入試と呼ばれていたものは総合型選抜と名称を変え、書類や面接での評価に加え学力を求められるようになっています。
厚生労働省は学力における3つの要素、「知識・技能の確実な習得」「思考力、判断力、表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ姿勢」を養うことを掲げてきました。高大接続改革として、AO入試も変革を迫られたのです。今回はそんな変革が行われてきた総合型選抜の特徴や仕組みをご紹介します。
総合型選抜とは?
これまではAO入試として存在していた出願方式の一つです。大学側が求める人物像に適した学生の採用を目的とした仕組みで、教育改革によって学力での評価基準がプラスされました。総合型選抜には大きく3つの種類があります。
1つ目は「選抜型」です。国公立大学を受験する際は、選抜型の出願方式となるケースが多くなっています。志望理由書・自己推薦書課の作成や、小論文・レポートの提出、それらに基づく面接などが行われます。
2つ目は「対話型」です。私立大学を受験する際は、対話型の出願方式となるケースが多くなります。面接を複数回に分けて行うことで、学生の人物像を測ることを主眼においた方式です。人物像や人格、学問への意欲、入学の動機などを重視する形式で、学力よりも人となりを伝える力が求められます。
3つ目は「実技・体験型」です。実技を通した授業やセミナーへの参加を出願条件とする方式です。参加後にレポートや課題の提出を行うことで、学力や学問への姿勢が審査されます。
これらが学力の3要素を加味した新しい総合型選抜の概要となりますから、どのような大学へ進むかを検討する中で下調べを済ませておきましょう。
総合型選抜では学力をどのように評価するのか
教育改革であらたに評価基準として挙げられるようになった学力評価ですが、どのような判断基準が設けられているのでしょうか。大学側の審査を受ける例として、以下の課題や試験があります。
・小論文の提出
出題の意図を的確に掴み、構造建てながら自分の意見を主張していく論文課題です。
最終的に伝えたいことを、順を追って理由づけしていく方式が一般的です。
・プレゼンテーション
論理的な意見の主張が求められる試験です。書類やパワーポイントが使えるケースもありますから、視覚的にも伝わりやすい内容での資料作りが適切です。
・口頭試問
問題についての解答プロセスを見る試験であり、学問への基礎知識や専門知識だけでなく、筋立てて伝える力も試されます。発想力や考察力を求められる試験です。
・科目試験
一般的には3教科型の試験が多くなっています。理系であれば英語・数学・理科の試験を、文系であれば英語・国語・地歴、公民や数学から1科目選択といった形式です。
・共通テスト
国公立大学を目指す場合は原則として必須であり、私立大学でもテストの成績が評価基準となる場合があるのです。このテストを受けると複数の大学へ出願が可能となり、総合的な合格確率が上がります。
総合型選抜対策に必要な対策とは
総合型選抜は推薦入試に比べて長い時間を費やします。例えば私立の場合、一般的には出願から合否発表・入学手続きまで半年ほどかかります。出願を決める際には、自分自身が大学の求める人物像に合致しているか、そのための面接、小論文を始めとした試験の対策が可能なのかを見極めましょう。
大手の学習塾を始めとして、非常に多くの総合型選抜対策サービスが展開されています。事業者ごとに実績を確かめ、希望する大学への進学率やカリキュラム内容を吟味して、自身の進学に役立てるのも良いでしょう。
学力評価基準が新設されたとはいえ、やはり人物像が重視されることに変わりはありません。その上で、志望動機をしっかりと固めておくことが不可欠です。大学について下調べを済ませておく、オープンキャンパスに参加する、オンライン説明会を受講するなどが有効です。希望する大学の特色や修めたい学問について、自らの言葉で説明ができるようにしておきましょう。
勉学だけでなく、部活やボランティア活動での実績も十分に評価基準となります。大学側も時間をかけて志望者とコミュニケーションをとりますから、自身を魅力的にアピールできる材料は、どんなものでも有効に活用しましょう。
まとめ
総合型選抜は、これまでAO入試と呼ばれていた出願方式に学力評価がプラスされた、新しい入試の形式です。出願から入学手続きまで半年ほどかかるなど、長期間での審査となりますから、事前の対策が必要不可欠です。
志望動機や面接などで自己表現をしつつ、小論文・口頭試問・共通テストなど論理的に考える学力についても、一定水準を求められるようになりました。対策を考える際は大学が掲げる生徒の人物像に自身が合致するを見定め、適切なアプローチ法を考えると同時に学力試験に備えた学習を行いましょう。
今後総合型選抜での入試を検討されている場合は、参考にされてみてはいかがでしょうか。