多くの国立大は「前期日程(入試)」「後期日程(入試)」「AO入試(2021年度から総合型選抜)」の3つで入学させる学生を選抜します。
北大(北海道大学)ではさらにもうひとつ、「総合入試」という、他大学ではあまり見られない選考方法があります。
総合入試の特徴
- 総合入試は理系と文系にわかれて行なわれる
- 1年生は学部には入らない。2年になったら学部に配属される
- 文系(または理系)から理系学部(または文系学部)入ることも可能
驚くべきことに、総合入試での入学者は、文系からでも医学部医学科に行くことができます。
それでは北大の入試制度を説明していきます。
北大の入試制度の概要
総合入試は「北大の入試制度」の一部にすぎないので、まずは北大入試の全体像を確認しておきます。
北大入試の概要を理解していると、総合入試の位置づけが明確になります。
北大の入試は以下の種類があります。
- 前期日程
・学部別入試
・総合入試
・国際総合入試 - 後期日程
- 総合型選抜
前期日程の学部別入試と後期日程の学部別入試が、いわゆる「普通の入試」です。
国際総合入試は、総合入試の一種ですが、募集定員が極端に少なく例外的な存在です。
総合型選抜は、以前はAO入試と呼ばれていて、特別に秀でた個性や能力を持っている人を、大学入学共通テスト(元センター試験)、書類、論文、面接で審査する方法です。
総合入試は前期日程の一種類なので、総合入試と前期日程の学部別入試は、受験生はいずれかのみしか受験できません。
北大の定員をチェック
5種類の入試で、何人が北大に入ることができるのか確認しましょう。
北大の2021年度入試の総定員は2,463人になります。
その内訳は、文系学部の定員が620人(総定員に占める割合25.2%)、理系学部の定員が1,843人(同74.8%)となっています。
文系学部と理系学部の定員には、総合入試の定員も含みます。
北大は理系大学の色合いが濃いことがわかります。文系学部の総合入試の定員は95人で、この数字は、総定員の3.9%、文系学部の15.3%です。
理系学部の総合入試の定員は1,017人で、この数字は、総定員の41.3%、理系学部の55.2%になります。
総合入試は、新入生に、大学に入ってからじっくり学部を選んでもらうための制度です。理系学部は種類が多く選び方も難しいので、総合入試の定員を増やしているわけです。
一方の文系学部は、そもそも文学、教育、法学、経済の4学部しかありません。
さらに、その4学部は「あまり似ていない」ため、文系学部生は、学部選考に、理系学部生ほど悩まないで済みます。
総合入試の位置づけがわかったところで、さらに詳しく総合入試をみていきましょう。
総合入試の仕組みを解説
北大の入試には、総合入試、国際総合入試、総合型選抜(元のAO入試)と、「総合」がつく入試が3つもあるので注意してください。
ここでは総合入試について紹介します。
総合入試で北大に入るには、1次試験にあたる「大学入学共通テスト(元のセンター試験)」を受け、その後、2次試験にあたる「個別学力検査」を受けなければなりません。
2つの試験の合計点で合否が決まります。
この「原則」は文系も理系も同じですが、「細かいルール」は文系と理系でかなり違います。
文系の総合入試は次のとおりです。
・大学入学共通テスト:6教科8科目:計300点
(国語60点、地理歴史と公民で80点、数学2科目60点、理科2科目40点、外国語60点)
・個別学力検査:計450点
(国語150点、地理歴史または数学150点、外国語150点)
理系の総合入試は次のとおりです。
・大学入学共通テスト:5教科7科目:計300点
(国語80点、地理歴史または公民40点、数学2科目60点、理科2科目60点、外国語60点)
・個別学力検査:計450点
(数学200または150点、理科100点または150点、外国語150点)
※科目は選抜群ごとに異なる
文系の総合入試の科目は1種類しかありませんが、理系の総合入試の科目は「選抜群」ごとに異なります。
理系の総合入試の「選抜群」
総合入試・理系の選抜群には「物理重点」「化学重点」「生物重点」「数学重点」「総合科学」があり、それぞれの試験科目は以下のとおりです。
ポイントは、理科が主要理科とその他の理科の2種類あることと、数学の点数が微妙に異なる点です。
そして、理科より数学が得意な受験生は、数学重点選抜群を選ぶことができます。
理科も数学も満遍なく得意な受験生や、とりわけ得意科目がない受験生は、総合科学選抜群を選ぶことができます。
文系でも医学部医学科に行ける?
分かれ道総合入試の「目玉」の仕組みは、総合入試・文系で入学した学生でも、2年目に理系学部に行けることです。
総合入試・理系で入学した学生でも、2年目に文系学部に行けます。
「自分は文系人間(または理系人間)だと思っていたけど、北大で勉強を始めたら、理系人間(または文系人間)であることがわかった」と感じた学生にとって、ありがたい仕組みです。
そして、総合入試・文系で入学した人でも、医学部医学科に行けるかもしれません。もちろん、総合入試・理系から医学部医学科に行くこともできます。
ただし、総合入試で入学した人が、医学部医学科に入るには、かなり厳しい条件をクリアしなければなりません。
その条件とは、1年生のときの成績が、すべての北大1年生のなかでトップ級であることです。
そのため、総合入試合格から医学部医学科に入るより、最初から医学部医学科の学部別入試に合格したほうが「楽」とさえいわれています。
普通は、総合入試・文系で入学した学生は、2年生のときに文系学部に行き、総合入試・理系で入学した学生は、2年生のときに理系学部に行きます。
総合入試で入った場合の学部の選び方
総合入試での入学者だけでなく、学部別入試で入った人も含め、すべての北大1年生は総合教育部に入ります。
総合入試入学者の1年生は、「本人の志望」と「1年生のときの成績(総合教育部での成績)」を合わせて、2年生から配属される学部が決まります。
もし、法学部を志望する1年生の数が「枠」を超えたら、成績上位者から順に法学部に入っていきます。成績下位者は、別の学部に入らなければなりません。
成績下位者であっても、留年しない限り、どこかの学部に入ることはできます。
総合入試・文系の定員は95人、総合入試・理系は1,017人でした。これらの総合入試入学者の文系学部の「枠」は次のようになっています。
- 文学部30人
- 教育学部20人
- 法学部20人
- 経済学部30人
- 合計が100人
総合入試・文系入学者の1年生95人が全員文系学部に入っても、5人余ります。この5人は、総合入試・理系入学者からの移行分と考えることができます。
総合入試入学者の理系学部の「枠」は次のようになっています。
- 理学部229人
- 医学部医学科5人(6年制、医師になることができる学科)
- 医学部保健学科9人
- 歯学部10人
- 薬学部薬科学科35人
- 薬学部薬学科21人(6年制、薬剤師になることができる学科)
- 獣医学部5人
- 水産学部40人
- 工学部511人
- 農学部162人
- 合計が1,027人
総合入試・理系入学者の1年生1,017人が全員理系学部に入っても、10人余ります。この10人は、総合入試・文系入学者からの移行分と考えることができます。
「国際総合入試」とは?
総合入試の仕組みは以上ですが、「国際総合入試」について以下では紹介していきます。
国際総合入試の定員は、文系は5人、理系は10人となっていますが、一定レベルに達していないと合格させません。
つまり、優秀な受験生がいなければ合格者が0人ということもありえます。
その場合、国際総合入試の文系5人、理系10人の「定員枠」は、総合入試に回されます。
国際総合入試は、一般的な受験生の他に、次のような条件の人も受験できます。
北大が、個別の入学資格審査により、高校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、18歳に達した者、または入試の年の3月31日までに18歳に達する者
ここには、「高校を卒業した者」という条件も、「高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)に合格した者」という条件もないため、中卒でも国際総合入試に合格すれば、北大に入ることができます。
また、第1次選考を受けるには、成績評価証明書、調査書、志願理由書、自己推薦書を提出しなければなりません。
第1次選考を通過したら、第2次選考に進みますが、そこでは面接や学力の確認、英語力の確認が行われます。論文の提出を求められることもあります。
国際総合入試に合格するのはかなり難易度が高いです。
総合入試で北大に入るメリット・デメリット
総合入試で北大に入るメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
学部選択によるミスマッチを防ぐ
北大が総合入試を導入した最大の動機は、「未成熟な学部選択によるミスマッチを防ぐ」ことです。
受験生のなかには「とにかく北大に入りたい。学部なんてどこでもいい」と考えている人は少なくないでしょう。道内大学のトップに君臨する北大は、それくらい魅力的です。
北大は、「何を勉強したいのか、わからない」と思っている北大生や、「自分が入った学部では自分が勉強したかったことを学べないことがわかった」と感じている北大生が多いことを危惧していました。受験生が頻繁に、学部選択のミスをおかしていたのです。
学部選択のミスは、学生だけでなく、教授たち教員にとっても「悲劇」です。
やる気のない学生や、学問への興味が薄い学生を教えなければならないからです。
総合入試であれば、「とりあえず北大に入る」ことができ、そのうえ、北大で学びながら学部の情報を集め、自分に合った学部に進むことができます。
行きたい学部に行けない可能性がある
総合入試のデメリットは、行きたい学部に行けないリスクがあることです。
総合入試入学者が希望する学部に行くには、1年生の講義で優秀な成績を取らなければなりません。
すでに行きたい学部が確定している受験生は、総合入試ではなく、学部別入試を受けたほうがよいでしょう。
北大が総合入試を実施する狙いとは?
総合教育部で学ぶ内容は、文系理系共通の「教養科目」と「基礎科目」です。
北大ではこの2科をまとめて「全学教育科目」と呼んでいます。
全学教育科目では、次のようなことを学びます。
環境と人間、健康と社会、人間と文化、思索と言語、歴史の視座、芸術と文学、社会の認識、科学・技術の世界、人文・社会科学の基礎、入門線形代数学、物理学Ⅰ、化学Ⅰ、生物学Ⅰ、心理学実験、情報学Ⅰ・・・
このように北大は、文系学生に理系科目を学ばせ、理系学生に文系科目を学ばせています。それは、学生たちに「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」「実学の重視」の考え方を身につけさせたいからです。
他の専門分野や文化に触れる機会を持つことで、学生たちは異なった価値観が存在することを理解できるようになります。それは、多様な発想と感性を磨くことになるでしょう。
北大は学生に、あえて、一見すると非効率に感じられる学びを提供しています。
それは「北大生ならできる」と考えているからです。
- 1位:医学部 共テ得点率 68%~86% 偏差値 50~65
- 2位:獣医学部 共テ得点率 77%~88% 偏差値 58~65
- 3位:文学部 共テ得点率 78%~83% 偏差値 63
- 4位:教育学部 共テ得点率 78%~81% 偏差値 60~62
- 4位:法学部 共テ得点率 77%~81% 偏差値 60~62
- 4位:経済学部 共テ得点率 78%~79% 偏差値 60~62
- 4位:薬学部 共テ得点率 77%~82% 偏差値 58~62
- 4位:理学部 共テ得点率 77%~83% 偏差値 57~62
- 4位:農学部 共テ得点率 77%~84% 偏差値 58~62
- 5位:工学部 共テ得点率 77%~85% 偏差値 57~60
- 6位:歯学部 共テ得点率 75%~78% 偏差値 55~58
- 7位:水産学部 共テ得点率 73%~78% 偏差値 55~57
偏差値など気になることがあれば学部をクリックしてください。
詳細にまとめてありますので、ぜひ見てください。