大学に入学するにあたって、大きな問題となるのが学費です。学費以外にも一人暮らしをする場合には、家賃や生活費などさらに出費が重なります。
その他にもサークル費や教科書代、交際費などを考えると家計を圧迫してしまい、子供の大学進学を諦めてしまうなんて事態も考えられます。
そうならないために利用したいのが奨学金です。そこで、この記事では奨学金について制度や基準について解説していきます。
日本学生支援機構の奨学金制度
まずは、奨学金を受けている学生の約8割が利用している日本学生支援機構の奨学金について、その制度と申し込み方法を確認しておきましょう。
日本学生支援機構(以下JASSO)の奨学金には、給付型と貸与型の大きく2種類があります。
給付型は原則として返す必要がない奨学金ですが、貸与型は借りたら卒業後に働きながら返していく奨学金です。貸与型には利息がない「第一種奨学金」と、利息を付けて返す「第二種奨学金」があります。
一定の条件を満たせば、「第一種奨学金」と「第二種奨学金」は併用できます。いずれも高校3年生の時に申し込む予約採用と進学後に申し込む在学採用があります。詳しい申し込み方法については後述します。
JASSOの奨学金は、進学後に毎月5万円など一定額が指定した口座に振り込まれます。そのため、授業料など、まとまったお金を支払うためには、計画的に奨学金を積み立ててから学校に納付しなくてはなりません。
また、奨学金は入学後に受けられるお金ですので、受験料など試験を受けるための費用や、入学時に納める入学金等には間に合いません。
もし、「国の教育ローン」に申し込んだにもかかわらず審査に通らなかったら、JASSOの「入学時特別増額貸与奨学金」があります。入学時に1回のみ、10万円から50万円の範囲で10万円刻みで受けられる貸与型の奨学金です。
しかし、入学後第1回目の奨学金と一緒に振り込まれるため、入学金等進学前に必要なお金に間に合わないのが難点です。
給付奨学金の申し込み基準
2020年4月よりJASSOの給付奨学金制度が新しくなりました。
住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生を対象に、大学等の授業料や入学金の減免の制度と、JASSOの給付奨学金がセットで受けられるようになります。
授業料や入学金の減免は各大学や専門学校等に、給付奨学金の支給はJASSOに申し込みます。新制度により給付対象が広がり、進学前の予約採用のみでなく、進学してからの在学採用も始まりました。
在学採用は年2回、春と秋に進学先の大学等を通してJASSOに申し込みます。併せて大学の授業料の減免の手続きも行いますので、学校からのアナウンスを逃さないようにしましょう。
なお、予約採用では奨学金の申し込み時期と、進学先の大学等が行う入学金や授業料等減免の申し込み時期が異なりますので注意しましょう。
給付奨学金を受けるための基準は以下の4つです。
- 学力基準
- 家計基準
- 資産基準
- 進学先の学校が給付奨学金の対象校となっていること
の4点です。
進学先が給付対象校となっているかどうかは、文部科学省のホームページから確認できます。
学力基準
高校3年生で申し込む予約採用と進学後の在学採用の申し込み基準は、申し込む時期に応じて決まっています。下表のいずれかを満たす必要があります。
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/shikaku/index.html
給付奨学金については目標を持って学習する意欲があり、進学後も計画を持って単位を取得していくことが条件です。
災害や病気、転入や編入といった個別の事情以外は、条件を満たさなければ奨学金の廃止や警告といった措置もあります。奨学金が廃止になる前に警告を受ける基準もあります。警告が連続すると廃止になります。詳細は下記よりご確認ください。
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/shikaku/zaigaku.html
家計基準と給付額
家計基準は、家族構成や父母(生計維持者)の収入や会社員か自営業者かによって、3つの区分に分けられています。区分ごとに給付額が異なります。
たとえば、父が会社員で母が無収入の場合、全額給付の第I区分の収入の目安は271万円以下(住民税非課税世帯)、2/3支給の第II区分は303万円以下、1/3支給の第III区分は378万円以下が目安です。
受けられる給付額は国公立か私立か、自宅通学か自宅外通学かによって異なります。
貸与奨学金の申し込み基準
大学卒業後に返還義務がある貸与型奨学金には、第一種(無利息)と第二種(有利子)、併用型の3種類あります。
実は全国の学生の3人に1人が借りているのが、JASSOの貸与型の奨学金です。
貸与奨学金の申し込みの目安は学力基準と家族構成によります。また、生計維持者である父母が会社員か自営業者かによっても異なります。
申し込み基準は第二種、第一種、併用の順番で厳しくなります。
しかし、第一種と併用の学力基準は、住民税非課税世帯であれば第二種奨学金と同じで、平均水準以上、または学ぶ意欲があると認められれば対象です。
在学中の高校等の判断となりますが、成績が水準に満たなくても、第一種奨学金を申し込むことができます。
貸与奨学金の貸与額
貸与奨学金の貸与額は国公立か私立か、大学か短大か専修学校かなど学校の種別と、自宅通学か自宅外通学かということによって異なります。
無利息の第一種奨学金については月額2万円以上1万円単位で、最高月額まで貸与額を選べます。
たとえば、私立大学の自宅通学であれば、最高月額は5万4,000円です。
貸与月額は、2万円、3万円、4万円、5万4,000円の中から選べます。
第二種奨学金は学校種別、通学の仕方にかかわらず貸与月額2万円から12万円の範囲で1万円刻みで選ぶことができます。
ただし、第二種奨学金を毎月12万円ずつ4年間借りれば、貸与額の合計は576万円です。貸与利率1%、20年で毎月一定額を返還すると、毎月の返還額は2万6,000円ほどです。
返還は卒業の7カ月後、一般的には10月27日から始まります。在学中は無利息ですが、卒業後は貸与終了時の利率で利息がかかります。貸与利率は2020年6月時点で、返還中の利率が変わらない利率固定方式で0.163%、5年ごとに金利が見直される利率見直し方式で0.005%です。
申し込み方法と申し込みのスケジュール
JASSOの奨学金申し込みは、進学前の高校等で申し込む予約採用と大学等に入学後申し込む在学採用、在学中に保護者が亡くなったり、災害に遭ったなどして家計が急変したときなどに、いつでも申し込める緊急採用・応急採用があります。
予約採用は、高校3年生で学校を通して申し込みます。学校により説明会や申し込みの時期が異なりますので、学校からの案内に注意して申し込み時期を逃さないようにしましょう。
大学入学後にも大学の担当者を通して申し込む在学採用がありますが、進学後のお金の見通しを付けて安心して入学できるよう、まずは予約採用を申し込んでおきましょう。
予約採用の申し込みはJASSOのホームページからスカラネットで申し込みます。スマートフォンからも申し込み可能です。併せて「確認書」など提出書類を在学中の学校を通してJASSOに提出します。
提出書類の詳細は「2021年度入学者用申し込みのてびき※」で確認しましょう。さらに生計維持者(父母等)と本人のマイナンバーカードを直接JASSOに郵送します。
その他の奨学金
日本学生支援機構の奨学金制度以外にも奨学金制度は存在していますので、紹介していきます。
もし、自分にあったものが見つかったら利用を検討してみてはいかがでしょうか。
大学独自の奨学金
大学独自の奨学金の中には、地方の高校出身者に限定する制度、入学前に申し込み合格後の奨学金を保証する制度、被災地(災害救助法適用地域)の入学者に対する入学金返還や給付金・奨学金の制度、卒業生や篤志家の寄付による奨学金など、バラエティに富んだ制度が数多くあります。
特に給付型や授業料等の減免については、経済的事情と成績優秀が大前提です。進学を希望する大学の奨学金制度の基準をよく調べ、申し込み時期を逃さず受けられるようにしましょう。
JASSOの給付型奨学金の条件となったこともあり、現在私立大学の約9割は給付型奨学金の制度を設けています。
自治体の奨学金
都道府県や市区町村が窓口となる奨学金もあります。保護者の居住地か大学の所在地かで受けられる場合が多いようです。
各自治体の奨学金は貸与型が多いようですが、中には卒業後にその自治体で就職した奨学生に対し、奨学金の返還を支援する制度※もあります。
※都道府県(基金設置団体)
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/chihoshien/sosei/seido/sousei_ken.html
最後に
貸与奨学金は借りたら返す「借金」ではありますが、ただの借金ではありません。奨学金を借りて大学等で勉強し、勉強したことを卒業後に社会で活かすための自己投資です。
投資したお金は将来に働いて収入を得ることで回収し、回収したお金から奨学金を返還して、次の奨学生へ投資するお金として役立てることができます。
他にも公益財団法人や医療機関等が奨学金制度を設けており、給付型奨学金も多数あります。募集人数が少ないものが多いのですが、当てはまる制度があればぜひ利用してみてはいかがでしょうか。