”あれ、ちょっと周りの子と違うかも?”お子さんを見ていて、そう感じることはありませんか?
文部科学省の調査によると、普通学級に通う生徒の6.5%は発達障害の疑いがあると言われています。ということは、35人クラスの場合、2~3人程度の割合で診断を受けてはいないけれども、発達障害かもしれない生徒がいるということです。
この調査は普通学級の生徒を対象に行われています。つまり、特別支援学級や特別支援学校に通う生徒は除外されているので、実際には発達障害のある生徒はもっと多くいることがわかります。
そもそも、発達障害とは何なのでしょうか?どうして診断を受けていない子がいるのでしょうか?周りに発達障害の生徒がいる場合、どう接すれば良いのでしょうか?発達障害に関する様々な疑問にお答えしたいと思います。
発達障害とは?
発達障害者支援法によると、発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
少し難しいですね・・・。
簡単に説明すると、「あの子コミュニケーション取りにくいな」「ちょろちょろしてて落ち着きないな」「話すと普通なのになんで読み書きが苦手なんだろう?」等の、周りの子に比べて感じる違和感が個性の範疇を超えている場合、発達障害の可能性を疑います。
発達障害には様々なタイプ、程度があるため一概に言えず、よく書籍やコラムで紹介されている説明書きにぴったり当てはまることは多くありません。
一人ひとりに個性があるように、発達障害の姿も一人ひとり異なるのです。
グレーな子とは?
冒頭でもお話ししましたが、”あれ、周りの子とちょっと違う?もしかして発達障害かも?”と感じているものの、診断を受けていない子、または、病院にかかったけれども診断がつく程度ではない子のことをさします。
発達障害ってどんなタイプがいるの?
発達障害は大きく分けると、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つです。それぞれの特徴を紹介します。
自閉症スペクトラム(ASD)
いわゆる、自閉症のことをさします。皆さんは自閉症というと、殻に閉じこもっている、同じ行動を繰り返す、目が合わない・・・等のイメージがあるのではないでしょうか?
幼少期に疑われる自閉症スペクトラムは、皆さんの知っているイメージに当てはまる子が多いのですが、学童期以降に疑われる場合は少し違います。
小さい時は違和感を感じてはいなかったけど、歳を重ねるにつれて、周りの友達の話題についていけずに孤立してしまう、少し幼さを感じる、小さい頃からの習慣を変えられない、空気が読めない・・・等が、普通学級にいる自閉症スペクトラムの子の特徴の一部です。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
落ち着きがない、座っていてももじもじしている、授業中にもかかわらず席を立ってしまう、喋り出すと止まらない、順番が守れない等が一般的なADHDの特徴です。
多くのADHDの子は、幼少期は衝動性が強く、動きも多いので大人も目をかけやすいのですが、学齢期になると目に見える衝動性は少なくなっていきます。しかし、内面的には授業を聞いているように見えて、集中できていなかったり、掲示物が気になって話が聞こえてこなかったりと実は困っていることが多くあります。
また、知的には普通~やや低い程度のADHDの子の場合、周りの子に比べて自分はできない、劣っていると傷つきを抱えている場合もあり、年齢を重ねると2次障害(後ほど詳しく説明します)になる可能性もあるため、配慮が必要となります。
学習障害(LD)
全般的な知的発達には問題がなく、コミュニケーションも違和感なく取れるにも関わらず、読む、書く、計算するなどの特定の力のみどうしてもうまくいかない状態の子をさします。
読み書きが必要になる学齢期に気づくことが多いのが一般的です。
簡単な漢字であれば書けるのに、複雑な漢字は書けない、字の形が捉えられない、読み聞かせられれば理解できるのに、全く同じものが文章になるとわからない等、周りから見るとなんで?と思ってしまう場合もあります。
うちの子、発達障害かもと思ったらどうしたら良いの?
幼少期は違和感なく(少なく)過ごしてきたけれども、学年が上がるに連れて少しずつ違和感を感じ、周りの子との差を感じ始めた・・・でも、まさかうちの子が発達障害だとは信じたくない。
多くの親御さんはこう感じると思います。
もし、なんだかおかしいな、と思ったらまずは学校の先生に相談してみてください。一番近くで、長い時間お子さんと一緒にいるお父さん、お母さんが感じる違和感は大きく外れることはありません。学校の先生には相談しにくい場合は、習い事の先生やスクールカウンセラーの先生も良いと思います。日頃、お子さんを見ている人に相談して、一緒に考えるのが良いと思います。
もし、周りの大人が違和感を感じているのに、なんのサポートもなく、みんなの輪に入れ続ける・・・それはお子さんにとって辛い状況かもしれません。本当は、助けを求めている可能性もあります。
相談した結果、発達障害であっても、適切なところで、適切な対応を受ければ、その子の人生は変わります。まずは、周りが理解して、受け止めること。そして、その子にとって最善の選択をすることがとても大切です。
まとめ
厚生労働省のHPに発達障害についてわかりやすくまとまっているページがあるので、ぜひご覧ください。
一昔前は、「発達障害は育て方が悪いからだ」「発達障害は一生治らない」等の誤解がありましたが、それは全て違います。
発達障害は、脳の機能障害、生まれ持った特徴の一つです。目が悪い人が眼鏡をかけるように、足が悪い人が松葉杖や車椅子を使うように、コミュニケーションが取りにくい、じっくり考えるのが苦手、字が読めないのであれば、その子が心地よく過ごすために、適切な対応が必要です。
また、その特徴は年齢とともに少しずつ変化していきます。年頃の子の気持ちが複雑になるように、発達障害の子の気持ちも複雑になりますし、悩みも多岐に渡ります。
そんな時、適切な対応がなく、周りに理解されない場合、その子は”全然理解してもらえない””やってもできない””自分は全然できないダメな子だ”と傷つきを抱え、うつ病といった2次障害になる可能性もあります。
例えば、この子は気が散りやすいから、前の方の席に座ってもらって、余計な刺激が入りにくい環境を整えよう、この子はコミュニケーションが苦手で誤解されやすいから、周りの大人が橋渡ししよう、この子は国語は苦手だけど数学は得意だから、数学の課題を多くしてみようなど、ほんの少し周りの大人が配慮するだけで、その子は何倍も心地よく過ごすことができます。
ちょっと周りの子と違うかも?でも、いきなり病院を受診するのはちょっと・・・と思ったら、ぜひ学校の先生やその子によく接している大人に相談してください。
きっと、悩みを解決する糸口が見つかると思います。