学歴社会と大学進学率について分析を行い、高学歴のメリットとデメリットを分析したいと思います。
私たちの生活する社会において、かなり以前から学歴社会という言葉が存在します。
学歴社会とは、その人の最終学歴によって就職やその後の地位や収入、その他の評価など様々な面に影響を与えることが世間一般に多いと認識されている社会を指します。
例えば、就職で企業が人を採用するかどうかの目安として学歴を見ることもその一つに挙げられます。実際に、「学歴」と「就職」には密接な関係があります。言い換えると、大きい企業へ就職するためには高い学歴が必要であり、それが20世紀から現代まで一貫して重要とされていることは否定できません。
その分かりやすい例として大学への進学率があります。かつて戦後間もなくの社会では、大学への進学率が2割以下でした。そこから高度経済成長を経て3割以上となり、1990年代には4割以上になりました。
その後も大学進学率は伸び続け、21世紀初頭には既に5割へ到達し、その後も更に伸びています。現在も続く少子化による大学入試の倍率低下なども加味すると、大学進学率が下がっていくことは考えにくい状況です。以下のグラフは大学・短期大学を合わせた総合的な大学進学率の推移です。(文部科学省・学校基本調査)
企業は学歴を重要視してるのか?
このような大学進学率を見ると、今や大学に行くだけでは「学歴が十分にある」とは言えなくなってきます。
そこで、次は具体的に「就職で有利になる大学とはどのくらいのレベルか」が気になるところです。
就職活動において、企業が新卒採用の目安となる基準として実質的に存在する言葉に「学歴フィルター」と呼ばれるものがあります。
企業で働く人々の中で、人事に関わる業務を一部の部署が担当しますが、その人数は他の部署と比べてそれほど多くはありません。その少ない人数だけで、応募してくる学生の全ての履歴書に目を通すには余りにも時間がかかり過ぎます。まして面接までするとなれば、ほぼ不可能です。
どうしても何らかの方法で応募者を振り分けなければならないのです。
それが学歴フィルターです。では、どのような企業が学歴フィルターを用いるのでしょうか。
当然ながら応募者の多い企業が面接などの人数を絞り込むために用います。
もちろん学歴を問わない大企業もありますが、何らかの選別方法を用いるのはやむを得ないと言えます。社員数の多い企業なら採用する従業員の人数も多くなり、その多くの新人を選ぶためには更に遥かに大量の学生と面接しなければいけなくなります。
しかし、それは至難の業です。だからこそ何らかの選別方法を用いることになり、その代表が学歴フィルターということになります。
そして就職を目指す学生は、大企業なら中小企業より高い収入を期待できると思い、可能なら大企業に就職したいと考えるようになります。
それを実現する大きなセールスポイントが学歴という訳です。このことから、今後も企業は新卒採用において学歴フィルターと呼ばれる選別方法を用い、そこに就職を目指す学生は学歴を身につける。そういう構図は簡単には無くならないと予想できます。
[図表3]採用戦略におけるターゲット大学の設定(HR 総研)
採用のターゲットとなる大学は?
そういう経緯からすれば、少しの勉強だけで簡単には合格できないレベルの大学が採用基準の一つになります。分かりやすく具体的な大学名を挙げていきましょう。まず地元の北海道では当然ながら北大の名が挙がります。
本州では東京一工(東大、京大、東京工業大、一橋大)という括りの最難関の国立大に、それと並ぶ大阪大、名古屋大、東北大、九州大の旧帝国大学があります。
一方、私立では早慶(早稲田大、慶應義塾大)と上理(上智大、東京理科大)がその筆頭に挙げられます。次いで、東京外国語大やお茶の水女子大など難関国立大、私立ではGMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政、学習院)、関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)と呼ばれる大学群、国際基督教大や津田塾大など語学に強い大学が挙げられます。
その他にも、成成独国武明学(成城、成蹊、獨協、國學院、武蔵、明治学院)に東京女子大、日本女子大、聖心女子大など名門女子大を加えると結構な数になります。これらに続いて、よく知られる日東駒専(日本、東洋、駒澤、専修)などの大学群と、これらに匹敵する首都圏の大学が幾つもあります。
それとは別に、地方の地元企業では、例えば道内なら小樽商大、室蘭工大、道教育大、札幌市立大などを含む国公立大の人気は依然として高く、単に偏差値とは違う地元ならではの評価があります。
しかしながら、地元の大学よりも難しい大学へ進学した学生が道内にU ターン就職するとなれば、それは道内の地元の企業も優秀な学生を獲得できるチャンスと考える場面ともなります。
どちらを出た学生を採用するかは、その企業の考え方によって違ってくるでしょう。しかし、ここに身近な道内の私立大の名前がまだ出てきません。つまり、それら道内の私立大は上記に挙げた多数の大学より合格するのが難しくないということになります。
実際に生涯賃金の差は大きかった‼
企業規模別年収の推移(大卒男性)
企業規模別年収の推移(大卒女性)
道内には、入りやすい大学がたくさんあります。
採用担当者の立場になると、どうでしょう。
一所懸命に勉強して難関校を突破してきた学生を採用すれば、おそらく仕事も一所懸命にしてくれるのではないだろうかと考えても不思議ではありません。また、仕事を早く覚えたり、工夫して取り組んでくれる可能性が比較的高いだろうと考える採用担当者がいてもおかしな話ではありません。そして一般的に規模が大きい企業は年収も高いというデータがここにあります。そのような年収の高い企業で働く人々が、自分たちの後輩や自分たちと同じくらいのレベルの大学を出た人を入れようと思うのは珍しくありません。
上記のような規模の大きい企業へ入ると、それ相応の待遇が得られることが分かります。
では、ここでズバリ、学歴によって生涯賃金がどれだけ違うかを知っておきましょう。下記の学歴別生涯賃金のグラフを見て、特に男性は高卒と専門学校卒の生涯賃金がほとんど差がないことに着目してください。大学に行くのと行かないのとでは如実に違います。これに上記の企業採用における学歴フィルター、企業の規模による年収の違いも合わせて考えると大きな差が生じることが分かります。具体的な金額で述べれば、なんと4600万円もの差があります。また、女性の生涯賃金の差も大きく、高卒と専門学校卒との差が1700万円程度であるのに対し、専門学校卒と大卒との差は3400万円にもなります。
これなら、例えばどうしても美容師になりたいから専門学校に行く、などの進路を決めている人でない限りは大学を目指したほうが得策です。
まとめ
このデータを見れば、私たちはレベルの高い大学へ進学するに越したことはありません。そして、そのための策を講じることが求められます。
まず目標の立て方として、国公立大を目指すか私立大を目指すかを考えましょう。
国公立大と私立大とでは受験科目の数が違うため、どちらを目指すのかを考える必要があります。同時に、目指す職業や働き方、生活スタイルなども考えてみるところから始めましょう。
それによって、受験への態勢をどのように構築していくかを決めていきます。
最後に、大学進学のデメリットを記します。第一に、受験が終わるまであまり遊べません。しかし、上記の説明を見た上で、それでも大学進学を棄ててまで遊ぶことがメリットと言えるのでしょうか。
第二に、大学進学には費用がかかります。しかし、上記の大きな企業に入ることや高学歴による生涯収入の差を見れば取り返せることが分かります。また、進学とはそもそも将来の自分への投資なのであり、勉学で沢山の知識やものの見方、考え方を養うことができます。その代価が学費なのですから、それをデメリットと言えるのでしょうか。
参照資料
図4 男性の学歴別生涯賃金。賃金データは厚生労働省・平成28年賃金構造基本統計調査から、退職金データは平成25年就労条件総合調査から推定図4 女性の学歴別生涯賃金。賃金データは厚生労働省・平成28年賃金構造基本統計調査から、退職金データは平成25年就労条件総合調査から推定