大学には経済学部、理工学部、医学部、文学部、法学部、などよく知られている学部があります。それら有名な学部と違い、あまり知られていないマイナーな学部や面白い名称の学部・学科もあります。今回は、そのような「そんな学部、学科があったの⁉」と思ってしまう学部・学科を紹介していきます。
あまり知られていない学部・学科にはどんなものがあるの⁉
- ①観光学部
- ②不動産学部
- ③現代ライフ学部
- ④モチベーション行動科学部
- ⑤応用生物学部 応用化学科
- ⑥マンガ学部
- ⑦危機管理部
- ⑧生活プロデュース学科
学部・学科の内容と特色は?
① <観光学部>
「観光学部」は、立教大学が1998年に設立したことに始まりますが、その後に「観光学部」や「観光◯◯学部」「□□観光学部」と名のつく学部が増えていき、現在その数は20大学を超えています。その点ではもう珍しくないかも知れません。政府主導で観光立国を目指したいという考えに賛同する大学が次々と観光に関係のある学部を設置しており、今後も増えると予想されます。
例えば千葉県東金市にある城西国際大学には、「観光学部ウェルネスツーリズム学科」があります。この学部では観光ビジネスと観光まちづくりの2つの分野に分かれて勉強します。
また、観光学に関する学部・学科には、愛知大学豊橋キャンパスの「地域政策学部」の中に「まちづくりコース」があります。このコースは「まちづくりコース」と「地域文化コース」を統合して新たに設置されました。GIS(地理情報システム)やワークショップなどの手法を学び、まちづくりや地域文化を研究します。将来、地方公共団体やNPO職員として働きたい学生のためのカリキュラムが用意されています。
道内には札幌市清田区の札幌国際大学に「観光学部・国際観光学科」があります。
観光学部に進んだら、旅行業やホテル業はもちろんですが、観光都市での様々な事業と連動して仕事をする企業や地方自治体に就職できる可能性もあります。また、外国語をどれくらい習得するかで進路も異なります。
② <不動産学部>
「不動産学部」は、不動産関連のことを専門的に学べる学部です。千葉県浦安市の明海大学に不動産学部があり、非常に珍しい存在です。
この学部では、不動産の経営、不動産の制度や理論について学べるコース、不動産の開発や取引に必要な鑑定・金融を学ぶコース、建築デザインなどについて学ぶコースに分かれており、4年間一貫の少人数ゼミも特色の一つです。宅建建物取引士の資格も習得できるので、不動産や建築物に関わる仕事に就きたい人には役立つ学部です。また、不動産メインの企業だけではなく、土地の売買や貸し借り、融資に関わる金融機関などへの就職も期待できます。
③ <現代ライフ学部>
「現代ライフ学部」は、帝京平成大学の中野キャンパス(東京都中野区)に設置されている学部です。生活、保育、福祉、観光、経営など多方面での知識と技術を身につけ、ビジネスに活かすよう統合していく勉強をします。例えば乳幼児教育と情報システムを合わせて子供向けの施設の運営を学ぶ、など様々な結び付けが考えられます。
日本国内では、1990年前後から「学際領域」と呼ばれる複数の学部や学科に股がる広い範囲を勉強したり、どの学部や学科の中にも限定しにくいような分野が急速に増えていきました。この「現代ライフ学部」もその中のひとつです。様々な学問を組み合わせることで複眼的な視野を持てます。その代わり、幾つもの分野をある程度まで理解するためには当然ながら勉強量が増えます。ここで勉強すれば多彩な方向性が考えられるため、将来の就職先もまさに人それぞれになります。
④ <モチベーション行動科学部>
東京都足立区にある東京未来大学には「モチベーション行動科学部」があります。
以前から多くの大学に心理、教育系の学問として「行動科学」はありましたが、そこに行動の意欲や動機、やる気などの意味を持つ「モチベーション」が加わって「モチベーション行動科学科」が誕生しました。
行動科学は人の行動について科学的・実証的に研究し、行動に関わる要因や影響、予測などの法則やデータの確立をしていく学問です。これを経営、教育、心理・コミュニケーションの切り口から学び、モチベーションについての理解を深めます。
これにより、リーダーシップをもって社会で活躍できる人材を育てることを目指しています。対話式講義やグループディスカッションの授業が多く、また大学のイベントや企業とコラボしたプロジェクトでのリーダー経験を積むこともできます。モチベーション行動科学を学ぶことで、将来は人々の先頭に立って仕事をしていきたいと考えている人に向いている学部です。心理・教育関連が中心にはなりますが、業界を問わず色々な方面へ就職することも可能です。
⑤ <応用生物学部 醸造科学科>
「応用生物学部 醸造科学科」は東京農業大学の世田谷キャンパス(東京都世田谷区)にあります。「醸造科学」と聞くとお酒のイメージをもつ人が多いかもしれませんが、必ずしもお酒の研究がメインとなるわけではありません。
微生物を研究して醸造の技術や手法を学び、味噌や醤油や酢などの発酵食品や酒類を開発する勉強をします。その中にお酒の研究も含まれます。
微生物の持つ機能を遺伝子レベルから学び、日本の伝統的な食品から最先端の環境やエネルギーに関わるバイオテクノロジーまで幅広く研究できます。
国内でも珍しい「醸造」の名をもつ専門教育機関であるため、就職も発酵食品や酒類の研究開発に携わる企業には非常に有利です。もちろん生物全般の基礎は勉強しますが、発酵食品と酒類、それを活用した環境やエネルギーに関わるバイオテクノロジーの分野で活躍したいという意思がない人には不向きです。
単にお酒が好きで面白そうだからという理由だけで受験せず、むしろこれ以外の勉強はなく、就職もその関連のみと思って進学する前提で受験しましょう。
⑥ <マンガ学部>
「マンガ学部」は京都府京都市の京都清華大学にあります。部活のマンガ部ではなく学部としてのマンガ学部なので本格的に勉強します。
第一線で活躍するプロの漫画家、アニメーション監督、イラストレーターなどが直接指導してくれるのが特徴で、自分自身もプロを目指したい人には大変ありがたい学部です。
このマンガ学部では全コースに共通した「マンガ学部共通専門科目」を設置しており、パソコンを使ったグラフィック技術やシナリオ製作の勉強もできます。
スマートフォンに対応したゲーム製作や液晶タブレットなどを使ったスキルも習得でき、マンガやアニメーションに関わることを専門的に学びます。
本当に一生をかけて取り組む決心と覚悟を持つことが大事で、卒業後もここで学んだ知識と技術を活かしつつ、その後も続々と出てくる新しい技術や知識に向き合って行けるかどうかも考えて進学しましょう。
⑦ <危機管理学部>
千葉県銚子市にある千葉科学大学には「危機管理学部」が2004年に設置されています。2011年の東日本大震災をきっかけに、安全対策が問われるようになりましたが、それ以前にも阪神淡路大震災や関東大震災、近年では北海道の胆振東部地震など、日本は地震による被害が大きいことは誰もが知っています。
そこで、危機管理について専門的に学ぶ必要に迫られて設置された学部が危機管理学部です。
「危機管理」について学ぶことは、自然災害に関する知識だけでなく、地球環境を幅広く学ぶことにつながります。また自然災害の他にも犯罪、医療、工学技術や航空、ヒトと動物など様々なな視点から研究します。
卒業後は国家・地方公務員の災害対策の仕事や、消防士、警察官、介護や医療の分野の専門職など人を守る仕事を目指す人に向いています。何かの災害や大規模な混乱を招く事態はいつ起こるかわからず、その時に率先して人を守る役割が求められます。また普段から市民に危機対策を周知するよう講じる役目も必要なため、ますますその人員の増加が期待されています。
2016年には日本大学に、2017年には倉敷芸術科学大学にも危機管理学部が設置されました。今後も増加の可能性があります。
⑧ <生活プロデュース学科>
神奈川県厚木市の湘北短期大学には、「生活プロデュース学科」があります。その中にファッションコース、フードコース、子供サービスコース、医療事務・情報コースなどがあります。これらの学科を通して、衣食住のプロフェッショナルを養成します。湘北短期大学には男女共学の総合ビジネス・情報学科と保育学科がありますが、この生活プロデュース学科は女子のみの受け入れになっているため男子は入学できません。
例えばフードコースでは、洋菓子などの専門ショップ、食商品の開発スタッフ、クッキングスタッフなど様々な職種を目指せるので、人々の食と健康に携わりたいという人や、栄養学を学んでスポーツジムなど食と身体の健康を管理するためのインストラクターとして働きたい人に向いています。
この生活プロデュース学科は2年制のため、入学してから卒業までの短い年月で即戦力を育成するためのインターン制度(企業研修)が充実しているのも特徴です。
希少な学部・学科を選ぶときの注意点は?
まず、熱しやすく冷めやすいタイプの人は、もの珍しいという付加価値に引きづられないよう気をつける必要があります。「自分が目指したい進路に行くためにはその学部・学科に行かないと目標に近づけない」という適切な観点で考えましょう。自分の大好きなことに打ち込みたい気持ちは理解できますが、本当にそれを一生の職業として長年やっていけるのかも自問自答し、家族や先生にもよく相談することをオススメします。
最もメジャーな学部・学科は?
あまり知られていないマイナーな学部・学科に対して、日本国内で最も多い学部・学科は何でしょうか。それは、「経営学・経営情報学・商学・会計学」に関する学部・学科です。
経営学に関わる学部や学科が多いのは、まず全国のあらゆる企業で会計処理が必要であり、業界や分野の人気、不人気に関わらず企業には会計に携わる業務が不可欠であるからです。
つまり、都心の大学でも地方の大学でも、どこに経営学部や経営学科を設置してもほぼ成り立つということです。どの学部や学科でもパソコン必須の時代において経営関係も当然にパソコンは必要ですが、それ以外にはほとんど大学側の費用の負担が少ないことも大学が経営系の学部・学科を持つ理由のひとつに挙げられます。
このような学部・学科を選ぶ人に関しては堅実で就職にも強いと思われる傾向があります。
ただし、就職に有利という理由だけで計算やパソコンが不得意なのに「長いものには巻かれておこう」との気持ちから経営学に関する分野に進むのはあまり賛成できません。経済や経営、会計などの分野は元来は理系のもので、これらを文系と思っているのは日本を含めた数カ国だけです。
まとめ
今回は、あまり知られていないマイナーな学部・学科や面白い名称の学部・学科をご紹介しました。興味関心を持った人は、自分でも調べてみましょう。しかしながら、よくある有名な学部・学科と共通して言えることは、「自分の適性」をいま一度よく考え、一時的な興味や友達からの情報だけで決めてしまわずに家族や先生や進路に精通した信頼できる人物に相談したほうがいい、ということです。これからも新しい学部や学科は出てくると思われますが、人生の大切な進路なので上記のことを参考にして見て行ってください。