共働きや専業主婦、一人っ子や母子家庭など、家庭環境というのは多種多様なものがあり、家族の数だけ異なる家庭環境があるといえます。
一人っ子はマイペース、末っ子は甘えたがりなどという言葉を聞いたことがある人も多いかと思います。
これらは、一人っ子は他に兄弟がいないので比較される相手がいないから、末っ子は親や兄弟に可愛がられるから、というように家庭環境に紐付けてこういう性格であると語っています。
ですが、本当にそんなふうに家庭環境が性格に影響することはあるのでしょうか。
家庭環境が子供に影響することはあるの?
家庭環境は子供に影響します。
行動遺伝学の知見によると、子供の性格は約50%、学力は約70%が遺伝要因とされており、性格の50%と学力の30%は環境要因といわれています。
この環境要因というのは、家庭環境だけでなく、家庭以外の友人関係なども含まれ、専門用語で家庭環境などを共有環境、それ以外の友人関係などを非共有環境などと呼びます。
大人期になると、家庭環境はあまり性格などに影響を及ぼさないとされていますが、子供期、中でも特に3歳〜10歳くらいまでの人格形成期は、家庭環境が大きく影響します。
人間というのはある日いきなり大人になるものではありませんから、子供の頃から形成されてきた性格や学力によって身を置く非共有環境は変わりますし、成長すれば家庭環境は関係ないということはできません。
ですから、家庭環境は子供に影響すると考えるべきなのです。
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どんな家庭環境が子供に影響するの?
それでは、どんな家庭環境が子供に影響するのでしょうか。
子は親の鏡という言葉もあるように、子供というのは親を見て成長するものです。
ですから、親として相応しい姿を子供に見せてあげることが最も大切だといえます。
それを踏まえて、次は子供に影響する家庭環境について見ていきましょう。
子供と一緒に過ごす時間の多さ
子どもは親との会話や接触によって、自分の居場所を見つけ、安心感やそれから生まれる自己肯定感を獲得できるのです。
自己肯定感が低いと、自分に自信が持てず、物事を否定的に捉えがちになり、否定的な考えが先行してしまうため始める前からすぐに簡単に諦めてしまう傾向があります。
また、親にかまって欲しくてわがままを言う場合もありますが、ここで普段かまってあげられていないからと甘やかすとわがままな性格になるでしょうし。だからといって、頭ごなしに否定すると、ただでさえかまってもらえないのに怒られた、と余計に子供に嫌なイメージを植え付けるだけで終わってしまいます。
ですから、共働き世帯のように普段子供と一緒に過ごす時間を作りづらい家庭は、意識して休日に子供と接する時間を作る必要があります。
夫婦仲のよさ
両親がお互いを思いやり、笑い合って良い関係を作っていくというお手本をいつも見ていると、子供も思いやるということを学ぶことができます。
しかし、夫婦喧嘩が絶えないような環境では、子供は恐怖を覚えるようになります。家の中で繰り返されると、子供には逃げるところがありません。次第に、子供は常に不安になり、日頃から何かと怯えるようになります。
子供は自責的思考が強く、結果として、子供は夫婦喧嘩が起こるのは自分のせいだと考えるようになります。
この「自分が悪い」という考え方は、自己肯定感の低さにつながってしまい、上述したような否定的な考えや諦め癖がつきやすくなってしまうのです。
そのため、夫婦喧嘩はできるだけしない、もしするとしても子供の見えるとこではしないというのが重要です。
子供への過干渉・放置
しっかりした大人に育ってほしいから、色々なことを学んでほしいからという理由でつい子供にあれこれ口出ししてしまう親は多いことでしょう。
しかし、子供への過ぎた干渉は、子供にそうしなければならないという重圧を与えることにもつながり、いつも誰かに監視されているような錯覚を感じ、誰かの目を気にして行動してしまうようになります。
さらに、自分の行動がまた親に怒られてしまうかもしれないと恐怖を覚え、怒られるくらいなら何もしない方がいいと無気力になってしまうこともあります。
いずれにせよ、しっかりした人間になってほしいという親の思いに反する性格になる可能性が高くなります。
過干渉がダメなら放っておこうというのも、行きすぎれば当然よくありません。
一番大切なことは、子供の意思や行動を受け入れてあげようとすることです。もちろん、悪いことをしたらなぜ悪いことをしたのか、何を考えていたのかを聞いて受け入れてあげた上で、しっかり注意する必要はあります。
とはいえ、それ以外であれば基本的に子供の自主性に任せるというのは良いことなのです。
しかし、子供が親から大切にされていないと感じるほどに放置すれば、子供はストレスを溜めやすくなってしまいますし、社会の常識や最低限のマナーすら教えないまま放置していると、子供は社会に適応できなくなってしまうこともあります。
良い家庭環境を作る方法
ここまで、親が作る家庭環境の子供への影響について見てきましたが、これらを踏まえて親はどんなことをすれば良い家庭環境を作ることができるのでしょうか。
子供に愛情を持って接する
一番は親が子供に対して愛情を持って接することです。
これは先述したように子供は親の愛情を感じることで、安心感や自己肯定感を得られるからです。
しかし、親がどれだけ子供に愛情を持って接しているつもりでも、子供が愛されていると感じられなければ意味がありません。
子供が愛されていると感じるには、子供の意思や行動を受け入れてあげようとする態度と、親と一緒に過ごす時間が必要です。
これらを子供が感じるには、
- スキンシップをとる
- 愛情を言葉にする
- 子供の話を聞く時間を作る
ことが有効です。
特に子供の話を聞く時間を作ることは、共働き家庭だと帰宅後は晩御飯や家事に追われて、なかなか難しいかもしれません。
そういう時は、朝食は一緒に食べる、休日は意識的に子供と過ごす時間を作ると良いでしょう。
夫婦同士、親戚で仲良くする
夫婦仲が良いことも家庭環境を良くするには重要です。
夫婦仲を良くするには、言わなくても伝わると相手に甘えるのではなく、きちんと日頃の感謝を言葉にして伝えることです。
自分のしたことに対して、相手から感謝の気持ちを言葉で伝えられると、嬉しくなるものです。そして、相手にも良い印象を抱きます。そうすると、今度は相手がしてくれたことに対して、自分から感謝の気持ちを伝えようという気持ちになれます。
最近ちゃんと言葉にしていないと思った方は、ぜひ言葉にして伝えて見てください。
また、ごはんを作ってくれたらおいしい、オシャレをしていたらカッコいいとか綺麗だと褒めるのも、夫婦仲を良好なものにするには有効です。
夫婦仲以外でも、両親と親戚の仲が悪いと子供は不安を抱くものです。できれば、夫婦仲同様に親戚とも仲良くしている姿を見せてあげましょう。
両親ともに育児に参加する
仕事の都合などで、子育ての負担がどちらかに偏ることがあるのは仕方ない面もありますが、できる限り両親ともに育児に参加すると、家族の一体感が生まれ、家庭環境が良くなります。
理想は夫婦で同じくらい育児に参加することですが、仕事の関係で子供の起きている時間に帰ってこれないという方も多いはずです。
そういう時は、休みの日に意識して子供との時間を作ったり、一緒に家事をしてみると良いでしょう。
まとめ
家庭環境の子供への影響と、どうすれば良い家庭環境が作れるのかについて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
子供というのは大きくなるにつれて、家庭の外で様々な影響を受けて育っていくものです。
しかし、幼少期のように環境の中で家庭の比重が大きい時期の人格形成には家庭環境というのは大きな意味を持ちますし、その時期に育まれた人格というのは学校のような外部での生活にも影響していきます。
まずは、子供にとって暮らしやすい家庭環境を作り、大きくなってきたら子供の成長を後ろからしっかりと見守ることを意識していきましょう。