多くの高校では、高校2年生から文系か理系かを選択し、クラスや授業が別れることになります。そのため、遅くても高校1年生の終わりまでには、文理選択をしなくてはなりません。
文理選択は進学先や就職先に影響する重要なものです。そのため、将来の夢をきちんと決めて、それを叶えるために文理選択をするべきです。
しかし、そうはいってもなかなか将来の夢が決まらない、考えていなかったという人もいるでしょう。
今回はそういった人のために、将来の夢がない時の文理選択のポイントを、マナビバが調査していきます。
将来の夢がないとき、文理選択はどちらを選べばいいの?
将来の夢がないとき、基本的には大学で学びたい内容で文理選択をしますが、それもない時は基本的に理系を選択するべきです。
その理由は、大学を卒業して就職する時、理系は文系の学生と同じ仕事に就くことができるけど、文系は理系の仕事につくことはできないからです。
理系の技術職や研究職は高度な専門性が必要で、基本的にはその会社が指定した学部学科以外の学生は採用されません。しかし、文系は総合職という何でも屋として採用され、その後ジョブローテーションなどを経て、仕事をしながら専門性を身につけていくので、学部学科は問わないのです。
その結果、文系は文系の仕事にしかつけないけど、理系はどちらも選べるという状況が生まれます。
また、理系から文系の大学を志望することを文転、文系から理系の大学を志望することを理転といいますが、国公立大学を受験する場合でも、文転は数学Ⅲや理科の勉強をやめて社会1科目の独学をすればいいだけなのに対し、理転は社会1科目の勉強をやめて数学Ⅲと理科2科目を独学必要があります。
社会は独学しやすい科目ですが、数学や理科を独学するのは難しく、勉強量としても文転の方が少なく、理転は多いので非常に困難です。もっとも、文転も理系の人はそもそも暗記が苦手だったり、国語が不得意だったりすることが多く、容易な道ではありません。あくまで、理転よりはしやすいと覚えておいてください。
とはいえ、高校の数学や理科などの理系科目は、それまで勉強してきたことと比べたら驚くほど計算が複雑で、考え方も難しくなるので、理系科目が全然できない人まで、とりあえず理系にすればいいというものではありません。
そのため、基本的には理系を選択しつつ、理系にいけない理由がある時には文系を選ぶのが良いでしょう。
文理選択前に、将来の夢は決めておくべきなのか
今回は将来の夢がない時の文理選択のポイントを調査していきますが、やはり文理選択の前には将来の夢は決めておくべきなのでしょうか。
これについては、決められるのなら絶対に決めておくべきです。
なぜなら、将来の夢が決まれば、次は何をすればいいのかという目標が明確になるからです。
医者になりたいと思っても、文系に行っていればかなりの困難が待ち受けていますし、理系で弁護士になりたいと思ったら、必死に数学や理科を勉強していた時間が本当は必要なかったなんてこともあります。
文理選択のポイントとは?
文理選択のポイントは、基本的には将来の夢を決めてやりたいこと、学びたいことから逆算して選択するのが一番です。
しかし、将来の夢がないときは、その他の条件で文理選択をしていくしかありません。
ここでは、文理選択のポイント3つを紹介するので、確認していきましょう。
大学や仕事のことをしっかり調べておく
将来の夢や学びたいことがないのは、仕事や学問に詳しくないからかもしれません。
将来の夢を決めるには世の中にどんな仕事があって、どれくらい稼げるのかを知る必要がありますし、学びたいことを決めるには大学でどんなことを学ぶのかを知る必要があります。
今、将来の夢がないのなら、まずは仕事や大学のことを調べてみましょう。
それでやりたいことが見つかればいいですし、やりたいことは見つからなくても、やりたくないことは見つかるかもしれません。
極端に苦手な科目は避ける
本来は、得意科目・苦手科目で文理選択をするべきではありません。
これは、将来的に文系であっても調査のために統計学の知識を必要としたり、理系でも論文を書くのに国語力を要したりするので、結局は逃げられないことも多いからです。
そのため、多少の得意不得意ならば逃げの選択をせず、就職の幅が広く潰しも効く理系を選ぶべきですが、高校1年生の段階で数学が全くできないという場合は文系に進むのも一つの選択です。
しかし、就職試験や公務員試験でも数学的な力は要求される場合が多いので、安易な気持ちでなんとなく文系というのはやめましょう。
将来の年収を調べておく
文系の仕事と理系の仕事では、平均年収に差があります。理系の平均年収が593万円、文系の平均年収が558万円といわれ、年間で約40万円の違いがあります。
このような差がつく理由は主に2つあります。1つは国内の大手企業の大半がモノを製造するメーカーであること、もう1つは専門職での採用が多いことです。
モノを製造するには、モノの性質を熟知している必要があり、それに必要なのが理系的な知識になります。
また、医者や弁護士が代表的ですが、専門性が高く他の人では代替できない希少性の高い仕事であればあるほど、収入というのは高くなります。同じ理系でも、バイオテクノロジーの専門家の代わりに建築の専門家を雇っても意味はなく、専門性が求められる専門職での採用というのが理系では多くなるのです。
結果として、理系は高い年収を得やすくなるのです。
しかし、40歳以降は文系出身者と年収が逆転するともいわれています。これは、文系出身者は経験を積んで出世することで、40歳あたりから管理職になり、高い報酬を得ることができるからです。
もっとも、終身雇用制度が崩壊しているといわれる昨今、会社に残って出世できるのはごく一部になります。これから大人になる高校生なら、年齢を重ねれば自然と年収が増えるなんてことは考えず、スキルを成長させて稼ぐ力を身につけることを考えましょう。
文系と理系の違いとは?
文系と理系の違いは、主に次の3つがあります。
高校で習う科目の違い
文系でも理系でも、国語・英語・数学ⅡBまでは共通で学ぶことになります。違いがあるのは、社会と理科の科目数、そして数学Ⅲの有無です。
しかし、2025年度入試からは、文系でも入試で数学Cを必要とするので、2022年現在の高校1年生からは、文系でも数学Cを学習しなければならないのに注意してください。
文系
文系の高校生が学ばなければならない科目は、基本的に以下の科目です。
- 国語
- 英語
- 数学ⅠA・ⅡB・C
- 社会…必修科目:歴史総合・地理総合・公共、選択科目:地歴(世界史探究・日本史探究・地理探究)から1、公民(政治経済・倫理)から1科目
- 理科…物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎から3科目
理系
理系の高校生が学ばなければならない科目は、基本的に以下の科目です。
- 国語
- 英語
- 数学ⅠA・ⅡB・ⅢC
- 社会…必修科目:歴史総合・地理総合・公共、選択科目:地歴公民(世界史探究・日本史探究・地理探究・政治経済・倫理)から1科目
- 理科…必修科目:物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎から3科目、選択科目…物理・化学・生物・地学から2科目
大学で学ぶ内容の違い
文系と理系では、大学で学ぶ内容にどんな違いがあるのでしょうか。
大学で学ぶ学問というのは、基本的には科学と呼ばれるモノです。
科学は、様々な出来事を観察・実験などによって実証する体系的かつ法則的な知識です。
このうち、観察・実験する対象が人間や文化であるものを人文科学、人間が生み出した社会現象であるものを社会科学、自然に属するものであるものを自然科学といいます。
基本的には人文科学と社会科学が文系、自然科学が理系にあたります。
以下、代表的な学部についていくつか取り上げるので確認してみましょう。
文系
<人文科学>
- 文学部
- 教養学部
- 外国語学部
- 教育学部
<社会科学>
- 法学部
- 経済学部
- 経営学部
- 社会学部
- 国際関係学部
理系
<自然科学>
- 理学部
- 工学部
- 理工学部
- 医学部
- 看護学部
- 歯学部
- 薬学部
- 獣医学部
- 農学部
- 情報学部
仕事内容の違い
文系と理系では、大学卒業後の仕事内容にどのような違いがあるのでしょうか。
上述したように、理系の仕事には専門性が高い研究職と技術職があります。そして、文系の仕事は事務職や営業職、経理職や人事職など仕事の中身によって区分けされることが多いです。
以下、代表的なものをいくつか取り上げるので確認してみましょう。
文系
- 事務職…いわゆる一般職として、一般事務や経理事務、さらには貿易事務などを行います
- 営業職…自社のサービスや商品を、顧客の要望を叶えたり課題解決することを訴えかけて、購入や契約に繋げる仕事です
- 記者・編集職…記者職は情報収集や取材、執筆などを主とする仕事で、編集職は本や雑誌などの制作をする仕事です。
理系
- 研究職…実験と検証と評価などを通じ、そこから得られた技術やノウハウに基づいて新たな製品を考える仕事です
- 技術職…主に製品の製造の実践を主導し、アフターフォローもしていく仕事です。
- システムエンジニア・プログラマー…システムエンジニアは、ソフトウェアやアプリなど、コンピュータシステムを作る土台となる設計部分に関わる仕事で、プログラマーはシステムエンジニアから提示を受けて実際にプログラミングして製作をしていく仕事です。
まとめ
今回は将来の夢がないときの文理選択のポイントについて見ていきましたが、いかがだったでしょうか。
基本は理系を選択した方がよいですが、何らかの理系に行くのが難しい理由があるときは、文系を選ぶのも決して悪い選択というわけではありません。
しかし、文系と理系では選択肢の幅が違うので、事前に何を学べるのか、どんな仕事ができるのかを調べて、悔いのない選択をできるようにしてください。