現代は、スマートフォンやタブレット端末、ゲーム機などの普及により、子どもの睡眠時刻が遅くなっている傾向があります。しかし、子どもの頃の睡眠時間は成長に大きな影響を与えます。
特に小学生は頭も体も大きく成長する成長期にあたります。今回は、小学生の理想の就寝時刻と、睡眠が学力や体に与える影響について解説していきます。
小学生の理想の就寝時刻は?
厚生労働省からの補助金を受けて研究している愛媛大学医学部付属病院睡眠医療センターによると、小学生は8〜10時間のまとまった睡眠が必要と発表されています。
朝起きる時間から、夜寝る時間を逆算して就寝時刻を決めましょう。
【朝7:30に起きる場合】
睡眠時間 | 就寝時刻 |
8時間 | 23:30 |
9時間 | 22:30 |
10時間 | 21:30 |
【朝7:00に起きる場合】
睡眠時間 | 就寝時刻 |
8時間 | 23:00 |
9時間 | 22:00 |
10時間 | 21:00 |
【朝6:30に起きる場合】
睡眠時間 | 就寝時刻 |
8時間 | 22:30 |
9時間 | 21:30 |
10時間 | 20:30 |
【朝6:00に起きる場合】
睡眠時間 | 就寝時刻 |
8時間 | 22:00 |
9時間 | 21:00 |
10時間 | 20:00 |
今現在の睡眠時間が8時間未満の人は、上の表を見ながら、まずは8時間睡眠時間が確保できるように睡眠時刻を調整しましょう。今起きている時刻や寝ている時刻と離れすぎていると、なかなか習慣になりません。近い時刻から挑戦するようにしましょう。
早く寝ることのメリットは?
早く寝ることは、子どもの心身の成長に大きな影響を与えます。具体的には、以下の4つが考えられます。
- 学力が上がる。
- 体の成長を促進させる。
- 体力が上がる。
- 心の健康を保つ。
それでは、この4つについて、詳しく解説していきます。
①学力が上がる。
早く寝ることで、朝すっきり目覚めることができます。すると、午前中の授業から、集中して勉強することができます。
睡眠時間が短いと、集中力や思考力が低下して作業の能率が悪くなってしまいます。脳の機能が低下すると、注意力が散漫になり、ひとつのことに集中できなくなります。すると、学習時に簡単な計算もミスをしたり、文章を読み間違えたりするなどのケアレスミスが増え、学習効率が下がります。
仕事や勉強、スポーツなどで使うのは、「思考」「創造性」「記憶」をつかさどる脳の「大脳皮質」と呼ばれる部分です。十分な睡眠をとり、脳に休息を与えないと、疲労が蓄積し、正常に機能しなくなります。
論理的な思考力を使い、判断や計画、分析するときには、脳の「大脳皮質」の中の「前頭連合野(ぜんとうれんごうや)」という部分が機能します。睡眠時間が不足すると、「前頭連合野」が十分に休息できなくなり、機能が低下します。すると、思考のスピードが落ちて柔軟に物事を判断できなくなり、学習効率が悪くなります。
また、睡眠不足の子どもは集中力がなく、落ち着いて話が聞けないので学力の低下にも繋がります。
このように、睡眠時間が短いと、勉強に集中できないというだけでなく、思考力や記憶力といった学習に必要な力が低下するため、早く寝ることが学力が向上につながります。
②体の成長を促進する。
体を成長させる「成長ホルモン」の約3分の2は、睡眠中に分泌されると言われており、特に「深い眠り」のときにたくさん分泌されます。私たちは眠っているときに、寝入った直後にもっとも深い眠りにつき、その後、浅い眠りと深い眠りを約90分周期で繰り返します。
そのため、早く寝ることで成長ホルモンがたくさん分泌され、体がしっかり成長します。
反対に、睡眠時間が短かったり、熟睡できていなかったりすると、成長ホルモンの分泌量が減ってしまいます。
また、一説では夜10時~2時までが最も成長ホルモンが分泌されるゴールデンタイムとされています。
そのため、睡眠時間が短かったり、寝るのが遅かったりすると、身長が伸びなかったり、筋肉がつきにくくなったりします。
③体力が上がる。
先程もお話ししましたが、成長ホルモンが正常に分泌されることで、体力や筋肉がつきやすい体に成長していくため、体力が向上します。
反対に、睡眠時間が短く、成長ホルモンの分泌が少ないと、体力や筋力がつきません。すると、運動に対する意欲も低下し、運動不足につながってしまいます。
運動不足の低下は、子どものころから肥満気味になるリスクをもたらします。子どもの肥満は糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を発症する可能性があるため、注意が必要です。
④心の健康を保つ。
睡眠不足の状態になると、次第に物事をネガティブに考えるようになります。
これは、脳の奥に位置する人間の感情や記憶をつかさどる「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる部分が正常に機能しなくなり、感情をコントロールできなくなるためです。
その結果、状況の変化に柔軟に対応できなくなったり、物事を誤ってとらえたりしてしまうため、イライラやゆううつ感を引き起こします。
同時に、自分の力量や仕事に自信がなくなったり、自己批判をしたりしてしまいます。体内リズムが狂って、心身の健康を損ない、うつ病を発症することもあるので注意が必要です。
このように、睡眠は心の健康にも大きく影響を与えるのです。
質の良い睡眠をとる方法は?
まとまった睡眠をとるためには、質の良い睡眠が必要です。いくら早く寝ても、睡眠の質が悪ければ、途中で起きてしまうこともありますし、浅い眠りになってしまいます。浅い眠りでは、成長ホルモンが分泌されません。質の良い睡眠をとることは、早く寝ることと同じくらい重要です。
質の良い睡眠をとるためには、以下の4つのことに取り組みましょう。
- 寝る環境を整える。
- 不安を取り除く。
- 寝る前にスマホ、テレビを見るのを避ける。
- 運動をする。
それぞれの効果について、詳しく解説していきます。
寝る環境を整える。
まずは、清潔な寝具を用意することが必要です。夜、寝る時は電気を消して暗くして眠らせましょう。朝は、カーテンを開けて日光を浴びさせると目が覚めます。
不安を取り除く。
心配事や不安なことがあると、人間はしっかり眠れません。お子さんが帰宅した後は、お家の人が話を聞いてあげる時間を設けましょう。その日の出来事を共有し、心配事や不安を軽くすることができます。
気になることをメモ帳にアウトプットし、心のモヤモヤを吐き出すだけでも良いです。書く内容はできるだけシンプルに、「勉強」「〇〇さん」などの単語だけでもよいでしょう。
寝る前にスマホ、テレビは避ける
テレビやスマートフォンのディスプレイから発せられる青い光の「ブルーライト」を浴びると、太陽の紫外線を浴びている状態と似ていている状態となり、目が冴えて脳が覚醒状態になります。
すると、体が活動状態になり、眠ろうとしてもなかなか眠れなくなります。
ですから、テレビやスマートフォン、パソコン、ゲーム機などは、就寝の1時間前から見ないようにしましょう。
大人よりも子どもの方が、光への感受性が強いとされています。親は平気でも、子どもにとっては睡眠への大きな悪影響となりますので注意しましょう。
このような機器を寝室には持ち込ませない、寝る前から翌朝までは親が管理する等ルールを作ると良いでしょう。
運動をする。
運動する習慣がある人は「深く安定した睡眠を得ている」、「寝つきが良い」、「途中で起きることがない」など質の高い睡眠を得れている傾向にあります。ある研究では継続して運動することで深い眠りの時間が長くなり、全体的に睡眠時間が長くなることが分かっています。
また、運動にはストレスを低減する効果があります。
特に、小学生のうちは、体力が有り余っていることが多いです。日中にたくさん運動することで夜は疲れてぐっすり眠ることができます。体力が余っていると、夜も元気なため、なかなか眠りにつくことができません。
まとめ
このように、小学生では、学習の観点からも成長の観点からも睡眠時間や就寝時刻についてより気を遣う必要があります。必要な睡眠時間が意外と多いことに驚いた人もいるでしょう。
また、時間だけでなく、睡眠の質にも気を付けなければなりません。小学生の頃の成長は、とても大きなものですから、多少強引でも必ず取り組むようにしたいですね。
なぜそうしなければいけないのか、根拠をもって説明したらお子さんは理解してくれるはずです。睡眠時間を軸にした生活スケジュールを考えてみましょう。
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