「文系にはどんな学部があるのか?」「この学部ってホントに文系なの?」 という質問、ギモンにマナビバがお答えします。
今回は、文系の主な学部をご紹介し、説明していきます。
文系には2つの領域がある!
まず、文系は「人文科学」と「社会科学」という2つの領域に大きく分けられます。
本来は学問を〇〇領域(または〇〇分野、あるいは〇〇系統)というくくり方で分けた場合、「人文科学」「社会科学」「自然科学」の3領域に分けられています。その3領域を文系・理系の2領域に分け直すと、文系には人文科学と社会科学が該当し、理系には自然科学が該当する、ということになります。
<人文科学の主な学部>
- 文学部
- 教育学部
- 心理学部
- 教養学部 など
人文科学では、言語や歴史、哲学などを主体とする学問の領域です。また、人間の成長と教育、人と人との関わり合いなどについての勉強は広い範囲の学問ですが、特に人文科学の範囲でよく勉強します。
<社会科学の主な学部>
- 法学部
- 経済学部
- 経営学部
- 社会学部 など
社会科学では、多くの人々が共同で生きていくための仕組みについて考える学問の領域です。人文科学に入る人間関係学部と社会科学の中の社会学部は似ている所が多数あります。大学によっては両者が入れ替わっているような編成の学校もあります。
<人文科学と社会科学の中間の学部>
- 国際関係学部 など
国際関係学部などは世界との結びつきを考える学問です。高校までの社会科と似ていますが、実際に外国の文献や資料を見たり、世界の人々とのコミュニケーションを経験する目的もあるため、語学力が必要になります。そういう国際関係学の性質から見ると、人文科学と社会科学の両方に股がっているといえます。
以上の学部が文系の範囲に入ります。
では、各学部ごとに見ていきましょう。
まず、人文科学の領域を中心とする学部・学科をご紹介します。
文学部とはどんな学部?
<文学部の主な学科>
- 日本文学科(国文学科)
- 外国語学科
- 歴史学科
- 言語文化学科
- 哲学科
- 社会学科
- 教育学科
- 心理学科
- 宗教学科 など
以上が文学部の主な学科です。
気をつけたいのは「文」の「学部」ということです。「文学」の部ではないので、文芸作品の鑑賞や研究を専門とする学部だけではなく、歴史などの文化や語学、教育、心理、社会などに関わる広い範囲を学びます。
その中に日本や外国の文芸作品の鑑賞や研究をメインとする日本 文学科や英文学科、などがあります。
大学によっては「人文学部」や「文化学部」といった名称が付けられている場合もあります。
また、以下の多数の人文科学の学科は、近年は文学部の中から独立して新たな学部になったものが沢山あります。
・日本文学科(国文学科)
「日本文学科」は日本の古典文学や近代文学、あるいは現代文学を学びます。高校までの国語をさらに深掘りするようなものと思っておけばイメージしやすいです。
書物の読書量が多いイメージを持たれやすい日本文学科ですが、具体的には文学作品そのものよりも、その作品を詳細に研究する目的で歴史背景などの考察に関わる文献を大量に読んで調べることが多くなりがちです。書物が大好きな人に向いている学科です。
・外国語学科
「外国語学科」は、外国語を覚え、外国人との会話の習得や外国語の文献・資料を調べます。大学によりますが、文学部の中に外国語学科や英米文学科などを設置している学校が主流でしたが、近年は文学部の中から外国語学部を独立させて設置した学校も多くあります。
全般的には英語が中心ですが、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語などの学科を持つ大学もあります。
この他、日本語と外国語をひっくるめて「言語学科」として言語の構造や世界の言語の比較などを学ぶ学科や、主に小説や戯曲をの作品を研究する「文芸学科」などがあります。
外国語学部の学生は実践的な言語力を身につけられるため、語学力を活かせる職種への就職が人気です。通訳、翻訳家、アナウンサー、ホテル・旅行業界、英語講師などが人気があります。
グローバル化が進む現代では、社内公用語に英語を用いる企業の増加、外国人旅行者と関わるインバウンド需要の増加などにより、上記に挙げた以外にもさまざまな企業・業種で活躍の場が広がっています。
・宗教学科
「宗教学科」は世界の様々な宗教について学びます。そこから、古代や中世の建築物や美術作品などの研究も含まれます。「歴史文化学科」などの名称を持つ大学もあります。
それとは別に、単独の宗教に関する学科も多数あります。
例えば「神学科」はキリスト教について学びます。大学によってカトリックかプロテスタント、その他の宗派に分かれます。大学によっては文学部から独立して神学部を持つ学校もあります。
日本の宗教では「神道学科」や「仏教学科」があります。
「神道学科」は日本神道を中心に、神道と日本の歴史との関連を学びます。大学によっては文学部から独立して神道学部を持つ学校もあります。また、「仏教学科」は仏教について学びます。大学によって宗派が異なります。大学によっては文学部から独立して仏教学部を持つ学校もあります。
・史学科
「史学科」は歴史について詳しく学びます。高校までは日本史と世界史に分けられていましたが、考古学、近代のアジア、中世のヨーロッパなど、歴史の広い範囲から、より詳しく専門的に研究する「専攻」を決めて学んでいきます。
「史学科」から独立して遺跡の発掘や古代の物資の調査などを専門的に行う「考古学科」もあります。
・哲学科
「哲学科」は、古代から近代、現代までの哲学者の書物や研究文献などを読み、人間の生き方やあるべき姿について考えていく学問です。必ずしも古い時代の書物を読むとは限らず、現代思想について研究することも可能です。
読書が好きで文学部に入った学生に人気が高いのは出版業界や新聞業界です。書物や新聞という紙媒体は電子媒体に変わってきていますが、文章を作成して編集する仕事という点では変わりません。現代でも文学部の学生には出版業界と新聞業界は人気の業界です。
その他では、専門分野の知識が生かせる教員や学芸員などの公務員も人気です。
「文学部は就職が不利になる」とよく言われますが、難関校であればそこまで悪いという訳ではなく、むしろ出版社や新聞社などのマスコミには強いと言えるでしょう。また、金融・保険業界や公務員などへ就職する人も多数います。
広く学ぶ「教養学部」とは?
「教養学部」は人間社会、文化・文明と科学技術との関わり、現代社会の問題など幅広い教養を身につけ、総合的なものの見方と考え方、柔軟な理解力と思考力を養います。
日本では、多くの大学で1年生と2年生を主に「一般教養課程」とし、3年生と4年制を「専門課程」とする学校が主流です。この教養学部は、1年生から4年生までの4年間を、一般教養課程をそのまま専門課程にまで延長するような形でさらに幅広く、加えてさらに専門的に突き詰めて研究していきます。
例えば放送大学などは様々な人が広く学問を学ぼうとしていることを前提としているため、教養学部・教養学科の1学部・1学科のみで大学が編成されています。
特定の学問の枠にとらわれないことを活かし、業界や職種にとらわれず将来に活かせるというメリットもあります。
これに外国語の能力や知識を合わせた「国際教養学部」や「国際教養学科」も近年は増えています。グローバルな視野で物事を考え、国際的な活躍を期待できる点に魅力があります。入試の倍率も高い傾向にあり、現代の花形になりつつあります。
また、「教養」の名を外した「国際学部・国際学科」「国際関係学部・国際関係学科」も近年は増えています。
国際的な問題を学ぶという点では社会科学の領域に入りますが、前提として英語などの外国語のマスターが必須となるため実質上、人文科学の色彩がが強いと言えます。留学生の数も他学部に比べると多いです。
国際教養学部や国際学部、国際関係学部の卒業生は、やはり外資系企業や海外の企業、NPO・NGO団体など英語力を活かした仕事に就く人が多くいます。
学校とつながりのある「教育学部」
教育学部とは、その名の通り、教育学を学ぶ学部です。子供から大人への発達の過程や教育についての研究をします。心理学も学習します。
子供たち一人ひとりの成長のためには、どのような教育が適切なのか、教育についてさまざまな観点から探究していきます。
また、学校教育の他にも、親のしつけなど家庭教育、文部科学省の教育に関わる政策、企業や社会における人材教育など広く学びます。
教育学や心理学を中心に、社会学、文学、教育の歴史、教育現場の実情など、教育にまつわるさまざまな分野について学んでいきます。
発達途上の子どもたちに接しながら様々なことを教えるため、担当外のことであっても、人文科学、社会科学に自然科学の分野まである程度はわからなければなりません。
具体的な免許としては、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭、高等学校教諭になるための勉強をします。
人間の心のメカニズムを研究する「心理学部」
「心理学部」では、人間の心について実験や調査などを通じて科学的に研究していきます。大学の学部・学科の編成上は文系学部として分類されていますが、心理学は精神医学と同様の医療系と考えれば理系色が強い学部といえます。
特に、大学院まで進んで臨床心理士の資格を取得するなら、実験や統計字は絶対に落とせません。理系の数式や実験などが苦手な人にとっては厳しいと感じる可能性があります。
卒業後は心理カウンセラー以外にも、福祉・医療現場の職員や一般企業の人事としても専門性が活かせます。ちなみに、臨床心理士の資格は国家資格ではなく民間資格ですが、臨床心理士を取得するには大学院への進学が必須です。
以上のように、人文科学の領域は、例えば文学部から日本文学科・言語文化学科・史学科などの細かい「学科」に分けられて編成されています。主に3年生と4年生は「専攻」という詳しく研究する学問を決めて2年余りを費やして勉強するため、希望する大学の学部にどんな学科があるのかを具体的に知ることが大切です。それによって、受験する大学も変わってきます。
続いて、社会科学の領域を中心とする学部・学科をご紹介します。
社会科学の学部にはどんな学部がある?
社会科学の学部には、法学部、経済学部、経営学部・商学部、社会学部、福祉学部(または社会学部福祉学科 )、国際関係学部などがあります。
六法や国際法を学ぶ「法学部」
法学部は、その名の通り法律について学ぶ学部です。具体的には、憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法・商法の「六法」を中心に、行政法・租税法・国際法・社会保障法などを学びます。
法律の条文を丸暗記することを目的とするわけではなく、人が社会で暮らしていくうえで、どんなルールが必要なのか、実際にどのような使われ方をしているのかなどを研究します。
卒業後は専門的な知識を活かして、官公庁や警察官などの公務員を目指す学生が多くなっています。
また公務員だけでなく民間企業でも、法学部は他の学部よりも歓迎される傾向にあります。
専門職そのものという点では弁護士、司法書士、検事、裁判官、社会保険労務士などの法律関係の仕事に就くと社会的な信用度が高く、収入も高いため人気があります。
市場や金融の仕組みと動きを学ぶ「経済学部」
経済学部は、経済学を中心とする教育や研究を行う学部です。日本経済の動きの基礎となっている経済学の理論「マクロ経済」と「ミクロ経済」を中心に学びます。経済の基礎となる理論を学ぶことで、社会における経済事象を理解できるようになります。
経済学部の卒業生は、商社、流通、メーカー、銀行、証券、金融業界など幅広く活躍できています。またIT関連企業や卸・小売業など多方面の業種に就職しています。
その他、資格を取得して公認会計士や税理士、中小企業診断士などを目指す人も少なくありません。公務員にも例年志望者が多数います。
企業経営を学ぶ「経営学部」と「商学部」
「経営学部」は、企業の経営や組織のマネジメントについて学ぶ学部です。また、実際の企業と連携した実践的な勉強が多いのも経営学部の特徴です。
経営学は、会社に就職しても自ら会社を起業しても、どちらにしてもビジネスをする上で非常に役立つ学問だと言えます。
「商学部」も経営学部と似たようなことを学ぶ学部です。
商学部の場合はモノやサービスを効果的に売るための仕組みづくりについて専門的に学ぶことが多いです。実際に新商品を企画したり、マーケティングを考えるなどの授業が多いのも商学部の特徴です。
経営学部や商学部の卒業生は、モノやサービスを売る企業に就く人が多く、また起業する人も少なくありません。マーケティング職や商品企画職などで強みを発揮できます。
世の中を学問とする「社会学部」
「社会学部」は、個人と集団との関わり合いを研究するのがメインの学部です。社会の実態や動向についてインタビューなどの調査やマスメディアの研究などもしていきます。
フィールドワークなど社会調査実習の授業や新聞を含むインターネットの情報収集がなど充実し、現代社会を学んでいることを実感できるのが社会学部の特徴です。
また人の行動や心理なども学ぶため、統計学の専門知識もほぼ必須になります。
法学部や経済学部のように一定の見地からではなく、労働・医療・生活文化・ジェンダー・福祉・サブカルチャー・家族・地域社会など、多方面の観点から幅広く世の中について研究します。
社会について興味があるが、幅広いので何らかの取っ掛かりをもって勉強してみたい、という人は社会学部に向いています。卒業後の就職先も多方面にわたっています。
社会学部から派生した「福祉学科」
社会学部は上記の通り非常に幅広いため、医療系も一部分が含まれます。そこで、「社会学部・福祉学科」の名称で福祉を勉強する学科を持つ大学が多数あります。単独で福祉学部を新設する大学も増えています。
「福祉学科」は、人間一人ひとりがどうすれば自分らしく幸せに生きられるかを探求するための学部です。座学だけでなく、福祉や介護の現場で実習することも数多くあります。
最初から福祉学科を目指している受験生はそれほど多くありませんが、少子高齢化が進む日本では、福祉の教育に力を入れている大学も多くあり、そこから福祉に関する仕事に就く人も必然的に多くなります。
福祉学科の卒業生は、社会福祉士や介護福祉士、精神保健福祉士などの資格を取得して福祉・介護・医療などの仕事に就く人が多く、今後も社会的な要請が高い学科です。
その他では一般企業に就職する人も多数います。
旅行ビジネスに強い「観光学部」
観光学部では、産業、地域振興、文化など多角的な面から観光を考えていきます。観光学部には、「観光学科」や「観光経営学科」「国際観光学科」などの学科があり、特に近年この観光に関わる学部・学科が増えています。
フィールドワークも交えて国内外の観光を研究するため、旅行業の実務も学べます。その他、観光を地域の活性化につなげるための政策研究などを行います。
観光学部の就職先は、旅行業を中心に観光に携わる仕事が人気です。観光関連のサービス業としてホテル業も挙げられます。大学で勉強したことが直接仕事に活かせるため、観光業での就職を希望する人が多くいます。
実践的な問題解決を考える「総合政策学部」
「総合政策学部」は、環境問題・民族対立・少子高齢化・所得格差・いじめ問題といった現代社会の様々な問題を解決・改善に導く具体的な政策を考えていきます。様々な問題や状態を見ることにおいて、社会学部がどのような現象が生じているかの調査を中心とするのに対し、総合政策学部では行政や法制度などの具体的な解決方法を勉強します。
基礎的な学習内容は社会学部と似ているため、座学ばかりでなくフィールドワークなどの課外授業が比較的多いのも総合政策学部の特徴です。
法学部の中に「政治学科」として編成されている大学もありますが、政策や行政について考えるという点では共通しています。
総合政策学部の卒業生は、一般企業だけでなく、学生時代に身に付けた社会科学に関する実践的知識と高い問題解決能力を活かして、NPO・NGOの職員や公務員、起業家などとして活躍する人もいます。
文系の学部に行く時の注意点
文系の学部に行く時の注意点ですが、文系でも理系の要素を持つ学問が幾つかあることを知っておきましょう。
例えば、古典文学と経営学と心理学は全て日本では同じ文系の中に入ります。
経済学や経営学は理系の要素あり
高校生が文系に進むか理系に進むかを選択する際に、「文学とか歴史とかにはあまり興味がないけど、数学が苦手だから文系に行こう!」と、とりあえず文系を選択したとします。そして、「文学や歴史には興味がないから、文系の中の経済学部にでも行こうかな」と思って安易に経済学部に進んだ人がいたとします。
そうすると、いざ大学に入学したら「市場の計算のやり方がわからない」「費用の関数の見方を覚えられない」などの事態になります。なぜなら、経済学や経営学は数式に基づく計算が多く、世界的には理系に含まれている領域だからです。
心理学はデータ重視の医療系
同様に、「人の心の動きを探るのは面白そうだから、心理学部または心理学科に入りたい」という気持ちで心理学を専攻する人がいたとします。
そして入学してみたら、「こんなに統計学をやるなんて、思っていたよりずっと理系っぽくないか⁉」という事態になります。なぜなら、心理学の基礎は、人間の心理から発する行動の結果について詳しくデータを集めて分析することが大事な学問だからです。世界的には心理学は理系の領域に入る学問なのです。
このように、日本では文系でも実質的には文系と言い切れない学部があるということです。
文学部以外も語学は必須
その一方で、語学については文学部のみのものではないことを知っておきましょう。
たとえ自然科学の領域の理系に進んでも、研究の過程で外国の文献や資料を調べたり、留学生とコミュニケーションをとったり、自分自身が留学したりする可能性があります。文系の中で、人文科学ではない社会科学の領域でも同様のことが言えます。また理系は大学院に進学する人も多く、大学院に入る試験に英語などの外国語が課されることが多々あります。
つまり、どの学問領域のどの学部に進んでも語学はほぼ必須なのです。その点で、英語などの語学は文学部だけのものではない、ということです。「語学は嫌いだから理系に行っておけばいいかも」という想定はすぐに崩れます。人文科学は当然として、社会科学も自然科学も全て語学が必要と理解しておきましょう。
文系の学部に進む注意点としては、以上の点がとても重要です。単に「文系」と一口に言っても、元々は人文科学と社会科学という2領域のものを1領域にまとめてしまっているため、全く違うように見えるものが一緒のような扱いになっているのです。
とりわけ、社会科学はデータを見たり計算をしたりなどの数学的な要素を含んでいることを忘れずに、学部選びを考えていくことが大切です。
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
「学校基本調査」
まとめ
今回は「文系の学部」についてご紹介し、説明しました。大学の学部選びは、就職にも関わるため、「4年間くらいの短い期間だから深く考えることもないか」などという安易な選択は避けましょう。自分の高校までの得意科目や不得意科目はあるかも知れませんが、大人になって数十年にわたって関わる可能性のある就職という点も意識しましょう。大学で学んだことを下地にしてずっと付き合っていけるかを考えながら、取り組んでみたい学部を見つけていきましょう。