今回は、「武道」について触れます。スポーツとはどこか少し違い、格闘技とも全く同義語とも言えないような、日本文化の一形態である武道は、どのように理解すればいいのでしょうか。特に、身体を鍛える目的や学校の部活動として取り組む場合には、事前に多少の理解が必要です。
武道とはなに!?
「武道」は日本や中国などにある古来からの伝統的な文化、武芸全般のうち、特に日本で独自の発展を遂げて後々に競技化された武術に相当するものを現代では「武道」と呼んでいます。
茶道や華道、書道のように「道」のつくものは、日本人の精神形成に大きな影響を与えています。武道もその一つです。その点で、単にスポーツとは違う側面もあります。野球にも「野球道」という表現があるくらい、「◯◯道」というと特別な意味合いが出てきます。
外国からは日本を代表する伝統的な精神文化として見られる面もあり、人気が高まっています。一方では西洋の他の格闘技やスポーツ競技と何が違うのか見分けがつかない、と思われている部分もあります。
「武道」が広まったそもそもは、武術や兵法が昔から必要で、生き延びるためや国を守るために欠かせないもの、という所で広まりました。それが武具を使用するものとして剣道、弓道、薙刀(なぎなた)などに発展し、武具を使用しないものとして柔道、空手道、合気道、などに発展していきました。また神前の競技で相撲が発展しました。
スポーツや格闘技とは違うの?
決められたルールのもとで身体を動かして技術を競うという点で、「武道」はスポーツとよく似ています。しかし、礼儀や礼節、道徳など精神性を重んじる点でスポーツと違っています。
例えば、サッカーやボクシングなどの試合では、相手から得点を奪ったり試合に勝った際には素直に声を出して喜びます。飛び跳ねたりガッツポーズをしたりする光景も見られますあります。これが武道において違う点です。これを武道の場で行うことは非常に稀です。大抵は、怒られてしまいます。
元々は目の前の相手を倒したとしてもまだ終わりではなく、いつどこから他の者に攻撃されてもすぐに対応できるように、構えを崩さないことを徹底するために喜んでいる場合ではない、という事情がありました。常に死と隣り合わせの戦国時代や侍というものを想像すれば理解できます。
このような侍や武士の精神として、相手を倒すことはあの時代においては事実上、人を殺すことであり、命を奪って喜ぶのは良くないこととされてきました。
これを現代風にいえば、相手に敬意を払わないのは武道のマナーに反するということです。そのような武道の精神に魅力を感じる外国人が多数いる、というのは日本のいい所を見直す好機と考えられます。
武道をやるメリット6選!!
- 礼儀が身につく
- 集中力と精神力を養う
- 体力がつく
- 柔軟性や代謝向上など健康に良い
- 年齢や性別を問わない
- いざという時に身を守れる
以上の6点を説明します。
礼儀が身につく
「武道」は「礼に始まり礼に終わる」のが基本です。武道を習うときは礼儀、礼節が重要です。
稽古でも試合でも、まず「挨拶」や「礼」が重んじられます。学校の部活で武道を始めた子どもたちは、「人と挨拶ができるようになった」「年上や目上の方に対する言葉遣いが変わった」「上下関係を学んだ」などの武道の良い点を身につけられます。
現代でも、「あざーす」(ありがとうございます)や「おなしゃす」(おねがいします)などの軽いノリの挨拶をすると怒られることもしばしばあります。
礼儀、礼節が身につくと、日常生活での挨拶や言葉遣い、相手に敬意を払うなど、人としの品格が出てきます。武道を通じて相手への思いやりも身につきます。
集中力と精神力を養う
武道では、練習でも試合でも、心構えとして「残心」という精神を重んじます。
目の前の相手を倒したとしてもまだ終わりではなく、いつどこから他の者に攻撃されてもすぐに対応できるように、構えを崩さないことを徹底しますが、これが「残心」の心構えです。常にに相手からの攻撃に対応できる構えが大事であり、そこに注意を払います。スポーツとして楽しむより、気を抜かない意識と呼吸により集中力が養われます。
また、武道に取り組むことで、雑念を払う精神の保持が行われ、落ち着いて安定した精神を養うこともできます。さらに、黙々と練習を積む日々が継続すれることで忍耐力も身につきます。
このような武道の修練で、「自分は武道を続けている」という自信も生まれます。
体力がつく
武道は、基本的に全身運動なので体力がつきます。
競技によりますが、それぞれ瞬発力、最大筋力、筋持久力などを高めることが必要です。また、体幹で全身を支える動きも多数あります。
学校の部活動などでは、これに筋力トレーニングやランニングなどもよく行われるため、さらに体力がつきます。この点に関しては、他の運動部と同様であると思って差し支えありません。
柔軟性や代謝向上など健康に良い
大人になると、デスクワークなどの座ったままが中心で運動する習慣がなくなり、日常生活での動作が限定される人が増えます。特に肩甲骨や股関節の二大関節は、日頃から使わないと柔軟さを失い、凝り固まってしまい、血行不良や疲労の蓄積、怪我のリスクなどが心配されます。
柔道や剣道、弓道、合気道、空手道などの武道の動きには、この肩甲骨や股関節の二大関節を充分に使う動きが伴います。そのため、武道で柔軟性が増し、怪我をしづらい身体を造っていくことができます。
この柔軟性に加え、血行が良くなることで代謝向上につながります。身体の稼働部分が広がると、日常生活でも代謝が良くなります。当然に一日の消費カロリーが増えるため、将来の生活習慣病の予防や肥満防止も期待できます。
年齢や性別を問わない
武道の道場の中には、幅広い年齢層の人々と出会い、一緒に稽古をできる所もあります。
普段はなかなか接しないような人と礼儀、礼節をもって接する機会を得て、新たな世界観を身につけるのにも広げるのにも有効です。若い世代を中心に、子どもから定年を過ぎた年配の人まで、大抵の道場は入門ができます。
武道の経験がない初心者でも、怪我をしないよう安全面に配慮して教えてくれる道場がほとんどです。そういう点で、少しずつ稽古を重ねていけるなど、年齢や性別、身体能力に応じて取り組むことが可能な所が武道の良い所です。
いざという時に身を守れる
日本は治安のいい国というのが定説ですが、必ずしも女性や子どもが一人で出歩いていても安全が保障されるとは限りません。場合によっては武力を行使しなければいけないことがあるかも知れません。
護身術を身につけるという点でも武道は非常に有効です。礼儀、礼節をわかっている人が武道の威力を悪用することは基本的にはない前提で、若い男性はもちろん、多くの女性や子どもやお年寄りが武道を身につけるメリットは大きいといえます。
特に、柔道の「受け身」は、何かで転んだり 押し倒されたりすることがあった時に、怪我を防ぎ、身体へのダメージを軽減することができます。
武道をやるデメリット2選は?
- 怪我のリスクがある
- チームプレーを学べない
以上の2点について説明します。
怪我のリスクがある
武道は怪我の危険を伴います。これがなんと言ってもデメリットの第一番目に挙がります。練習で無理をし過ぎて怪我をする可能性については他のスポーツと同様ですが、それとは別に、格闘技という側面もあるため、練習中の怪我も想定されます。
もし稽古中に悪ふざけをしている子がいれば、指導者は、厳しく叱ります。相手や自分が怪我をする危険があることを教え、また悪用しないよう注意をします。
怪我をしないよう万全の注意を払って取り組めば、このデメリットも低下しますが、絶対に大丈夫とは言い切れません。
チームプレーを学べない
武道のメリットには老若男女を問わず段階に応じて取り組める、という点がありますが、それは個人競技ならではのメリットです。そうなると、個人競技としてのデメリットも個人競技の特性から出てくるところはあります。チーム競技ではないため、チームプレーは学べません。
サッカーやバレーボール、バスケットボールのような多人数の競技はもちろん、シングルが基本であるバドミントンや卓球、テニスのダブルスのような二人でのチームプレーも学べません。
学校生活では、そういう所を考え、何でも独断で決めずにクラスメイトと相談したり複数名で取り組む作業に積極的に参加するなどで補うことが求められます。
部活の武道のオススメを紹介!!
学校の部活動でも武道は盛んに行われています。
学校によりますが、女子の相撲部など珍しい部もあります。また男子のいる薙刀(長刀)部は、全国で男子の部員数が少ないため、初心者でも練習と才能によっては全国大会にまで出場できるなど、挑戦してみる価値があります。
武道の競技名 | 武具、道着の使用 | 部活の認知度 | 男女の参加 |
---|---|---|---|
柔道 | 武具無し、道着あり | ◎ | 男女とも有り |
空手 | 武具無し、道着あり | ◎ | 男女とも有り |
合気道 | 武具無し、道着あり | △ | 男女とも有り |
少林寺拳法 | 部活では原則無し、道着あり | △ | 男女とも有り |
相撲 | 無し、道着(まわし)あり | △ | 男子の部が多いが女子も有り |
剣道 | 武具あり、道着あり | ◎ | 男女とも有り |
薙刀 | 武具あり、道着あり | △ | 女子の部が多いが男子も有り |
弓道 | 武具あり、道着あり | ◯ | 男女とも有り |
まとめ
今回は、「武道」の成り立ちや特徴、メリットとデメリットをご紹介しました。
精神性を重んじ、運動能力よりも礼儀、礼節を大切にする武道は、他のスポーツと違う点が幾つもあることがわかりました。
ここで取り上げた武道のメリットを活かし、デメリットはできる限り少なくすることで武道が人生に素晴らしいものを与えてくれます。