内申点は高校入試の合否を左右する大きな要素です。高い内申点をとるには、よい成績を修めることに加えて、授業態度や学校生活でもポイントを押さえなくてはいけません。
本記事では内申点や内申書の基本から、内申点を上げるために使える知識をご紹介します。
闇雲にがんばるよりもずっと効率のよい方法がありますので、ぜひ参考にしてください。
内申書と内申点とは
内申書とは、高校受験の合否を判定する資料になる書類(調査書)です。
内申書に記載されている成績が内申点(調査書点・調査書素点)で、高いほど受験に有利になります。
通知表や各学年の評定とは違うものですが、無関係ではありません。正しく内申点を計算するために、それぞれの違いを知っておきましょう。
内申書と通知表との違い
内申点や内申書とよく勘違いされるのが通知表(通信簿)です。
通知表は学期ごとの学業成績を中心に通知するもので、目的は「生徒や両親が成績を把握すること」です。
内申書は、学業成績と学校生活を含めて評価したもので、受験する高校に提出します。
後述する内申点や、学校行事・委員会での活動実績、出席日数など、さまざまな学校生活の評価が記載されるものです。
受験の合否は内申書だけで判断されるものではありません。しかし、受験結果に大きく影響する重要な資料です。
内申点と評定との違い
評定とは、通知表に記載されている教科ごとの5段階評価の数値です。
内申点は評定を元に「素内申」と「換算内申」に分かれています。
素内申 | 9教科分(国語・英語・社会・数学・理科・音楽・美術・保健体育・技術家庭)の評定を合算した、45点満点の数値。 |
換算内申 | 都道府県ごとに異なる計算方法で算出する内申点。 |
単純に内申点と呼ぶ場合は、素内申を指すことが多いです。
評定がわかれば簡単に求められますので、早めにお子様の内申点を把握して受験に備えましょう。
内申点は高校入試を左右する
高校入試の合否判定は、内申点だけで行われるものではありません。
また、高校によって内申点の取り扱いが異なるため、必ずしも「内申点が低い=不合格」ではないのです。
ですが、間違いなく内申点は受験の結果に大きく影響します。
- 入試の結果に内申点をそのまま加点する
- 入試の結果に内申点を2倍にして加点する
- 学力検査がない実技強化のみ2倍で加点する
など、入試の点数を覆す可能性もあるほど、内申点は重要なものです。
保健体育や音楽、美術などの実技は「入試科目じゃないから」と軽視することが多いですが、内申点ではしっかりと評価されています。
このことをしっかりとお子様も理解することが高校入試成功の鍵です。
内申点はどうやって決められる?
内申点は、評定を元に計算される評価だけで決まるものではありません。何が影響するのかをしっかりと把握しましょう。
内申点の決め方は2021年に変わった
内申点の決め方は、2021年から始まった「新学習指導要領」で変化しました。
【文部科学省】学習指導要領
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/
情報化・グローバル化が進む社会の中で、より有用な資質や能力が見直されたため、内申点の評価基準も変化したのです。
具体的には以下のような変化がありました。
見直し前の評価基準 | |||
関心・意欲・態度 | 思考・判断・表現 | 技能 | 知識・理解 |
↓
新学習指導要領 | ||
学ぶ力・人間性 | 知識・技能 | 思考・判断・表現 |
子どもに必要な力が3本の柱に整理され、より「生徒本人の学ぶ意欲」「将来に繋がる学習」が重視されています。
ポイントとなるのは「学ぶ力・人間性」で、これによって内申点の決め方が変わり、点数にも変化が現れました。
内申点が決まる要素
内申点は、各教科の「観点別学習状況」の評価を合計した数値で決まります。
かつては科目毎に評価項目が決まっており、教科ごとに評価の基準も異なりました。
しかし、新学習指導要領になってからは統一されており、前述した3つの柱で評価されます。
このうちの知識・技能と思考・判断・表現は、従来と同じ評価基準です。
具体的には以下のような項目がチェックされ、内申点がつけられます。
- 各教科の定期テストの成績
- 小テストの成績
- 表現する力
- 習得している技能
学ぶ力・人間性は従来の評価基準ではあいまいでした。
学ぶ力とは「主体的に学習に取り組む姿勢」のことです。そのため、この項目での評価基準は、以下などが挙げられます。
- 授業を聞く姿勢
- 授業への積極的な参加(挙手・議論・発言など)
- 提出物
- 出席日数
美術や音楽などの技能科目では、上手い下手だけでなく、一生懸命取り組む姿や、上達のために努力する姿勢が評価されます。
勉強に対して「どんな姿勢で向き合っているか」がよりしっかりと評価されるようになったわけです。
部活動と内申点の関係
前述したように、2021年からの内申点は、積極的な学習姿勢が評価基準に入りました。
そうすると部活動に一生懸命に取り組む姿も評価されるように思えます。
しかし、部活動と内申点は直接関係しません。
美術部や理科天文部、陸上部などは内申点の計算基準になる9科目と関連が深く感じますが、これらの部活も同様です。
ただし、内申点に影響はしなくても、内申書には部活動の成果が記載されます。面接の際にも部活動の話になることも多く、部活動がプラスに働く可能性は高いです。
「内申点に関係ないから」という理由で辞めさせてしまうのはもったいないので、お子様の意志を尊重しましょう。
内申書に記載される内申点の違い
内申書の中心となる内申点は、学期の分け方や都道府県によって記載内容が変わります。
3学期制のケース
1学期・2学期・3学期で1年が構成されている3学期制のケースでは、1年生~2年生は年度末(3月)の成績表が記載されます。
受験がある3年生は、入試時点で確定している情報で評定が決まります。3月まで待ってしまうと受験よりも後になってしまうからです。
学年 | 内申点 | ||
---|---|---|---|
1年生 | 1学期末の成績 | 2学期末の成績 | 3学期末の成績 |
2年生 | 1学期末の成績 | 2学期末の成績 | 3学期末の成績 |
3年生 | 1学期末の成績 | 2学期末の成績 | 入試時点の評定 |
一覧にするとこのようになります。
中間テストが記載されない点と、3年生3学期の評定が早めに出されることに注意しておきましょう。
2学期制のケース
1年間の課程を前期と後期に分ける2学期制の場合も、3学期制と大きな違いはありません。それぞれの学期末の成績が記載されます。
学年 | 内申点 | |
---|---|---|
1年生 | 前期の成績 | 後期の成績 |
2年生 | 前期の成績 | 後期の成績 |
3年生 | 前期の成績 | 後期中間テストの成績 |
2学期制でも、3年生の場合は受験の前までの成績が記載されます。
後期中間テストの結果が、そのまま内申点に繋がるのがその他の学年との大きな違いです。
都道府県による違い
ここまで解説してきた学年ごとの内申点ですが、都道府県によって記載学年に違いがあります。首都圏でも大きな違いがありますので、その一例を知っておきましょう。
都道府県名 | 内申点の記載学年 |
---|---|
東京都 | 中学3年生の成績のみ |
千葉県 | 中学1年生~3年生すべての成績 |
神奈川県 | 中学2年生・中学3年生の成績 |
埼玉県 | 中学1年生~3年生すべての成績 |
このように、都道府県によって大きな違いがあります。
学校がある都道府県がどのような記載をするのか、知っておくことはとても重要です。
しかし、東京都のように中学3年生の成績のみが記載されるケースでも、1年生・2年生の成績や授業態度が完全に無視されるわけではありません。
また、記載されるのは学期末の成績ですが、評価されるのは学年全体の成績です。3年生だけや、3学期だけがんばっても、内申点は思うように上がりません。コツコツと積み重ねて、安定してよい成績を修めることが重要です。
内申書の評価が低いデメリット
内申書の評価が低いと、高校受験が不利になります。具体的にはどのようなデメリットがあるのか、知っておきましょう。お子様ともぜひ共有してください。
志望校の選択肢が減る
内申書の評価は志望校の幅に大きく影響します。
後述するさまざまなデメリットによって、選択肢そのものが限られてしまうからです。
もちろん志望するのは自由ですが、合格する可能性は限りなく低くなってしまうでしょう。
「行きたい高校が見つかったけど、内申点が低くて諦めるしかない……」
内申書の評価が低いと、そんなことが発生しかねないのです。
推薦入試ができない
推薦入試では、公立・私立どちらの場合も内申書の評価が大きく影響します。
推薦枠は各学校で決まっているため、人気校や公立校は倍率が非常に高くなり、内申書の評価が低い場合はその枠に入るのはまず無理でしょう。
推薦入試は内申点が高くても落ちることが多い狭き門です。内申点が低い場合は、推薦入試という選択肢は捨てて、一般入試で勝負するしかないと覚悟を決める必要があります。
入試でハンデを背負う
公立の高校を一般入試で狙う場合も、内申点が低いと大きなハンデになります。
公立高校の一般入試の結果は、テストの点数だけでなく、内申点が加算されるからです。
テストでどんなによい点数を取っていても、内申点がよい生徒に抜かされて不合格になってしまう可能性があります。
もちろんテストの結果がよければ合格できる可能性はありますが、大きなハンデを背負うことに変わりありません。
面接で不利になる
内申書の評価は、いわばその生徒の中学校生活の総評です。
どれくらい学業に励み、真面目に生活してきたか、高校が判断するには内申書の評価に頼るしかありません。
そのため、面接の際に内申書の評価が低いと「この子はどこかに問題があるのでは」「真面目に勉強しないのでは」という目で最初からみられる可能性があります。
面接で不利になってしまうのは大きな痛手です。
対面することで挽回できるケースもありますが「中学校のお墨付き」をもらえていないわけですから、面接でもハンデを抱えることを覚えておきましょう。
内申点を下げてしまう行動
内申点を下げてしまう行動をシーン別に解説します。うっかりやりがちなことも多いので、要注意です。
授業中のNG行為
「積極的に勉強に取り組む姿勢」が評価基準になっているため、授業中はとくに重要です。以下の行為に気を付けましょう。
- 授業開始時に席から離れている
- 授業の道具(教科書・筆記具・ノートなど)が足りない
- よそ見、あくび、居眠りをしている
- 悪い姿勢(猫背・頬杖など)で授業を受けている
- スマホや授業とは関係のないものを見る
- 飲食をする
- おしゃべりや手紙交換をする
これらは言うまでもなく内申点を下げる行為です。
しかし、ほかにも意外な行為が内申点に影響することがあります。
- 先生の話を遮って質問をする
- 授業中に友達に勉強を教える
- 課題が終わった後に勝手に別のことをする
- 友達に何かを貸す、または借りる
先生の話を遮る行為は、配慮や周りを見る力に欠けていると判断されることがあります。質問をすること自体はよいことですので、タイミングを誤らないようにしましょう。
友達に勉強を教えたり、課題が早く終わった後に別の課題に取り組んだりする行為は、正当性があったとしても勘違いによって内申点が下がる可能性があります。
授業中に先生の指示にないことをする場合は、必ず確認をとりましょう。
課題提出のNG行為
提出する課題も内申点に影響します。とくにテストのない副教科では提出物が重要です。
- 課題の提出期限を守らない
- 未完了のまま提出する
- 文字を雑に書いている
- 答えしか書いていない
課題を完了させ、提出期限を守ることが何よりも重要です。
しかし、「終わっていればいい」というわけではなく、丁寧に仕上げる必要があります。
数学なら途中式や筆算を残し、国語や英語は解答が配られているなら赤ペンで丸付けをしておくとよいです。もちろん先生から指示があればそれを守ってください。
そして、文字は読みやすくわかりやすいように書きましょう。
自由時間のNG行為
休み時間や放課後など、授業外の時間にも内申点を下げる行為が隠れています。
- 必要以上に先生と仲良くなろうとする
- 大声で話す
- 適切でない言葉遣いをする
- 先生を呼び捨てやあだ名で呼ぶ
- 注意された時に無理のある言い訳をする
肩の力が抜けやすい自由時間ですが、よくない行動が偶然先生の目に入ってしまうことがあります。
一度の言動で内申点を下げてしまわないように、あまりにも目立つ行為はしない方がよいでしょう。
また、先生と仲良くする姿勢はよいのですが、度が過ぎると媚びを売っていると思われてしまう可能性があります。
「内申点のためにやっている」と受け取られると印象が悪いので、先生とは適切な距離を保つことが重要です。
内申点を上げる7つの方法
内申点は成績や学校での生活の積み重ねが評価された結果です。そのため、急上昇させることは難しいですが、努力をすれば改善できます。
すぐにできる7つの内申点を上げる方法を解説しますので、明日からでもはじめましょう。
1. 授業態度を改善する
もしも授業を真面目に受けていなかったのなら、授業態度を改善しましょう。
先生の話をしっかりと聞いてノートをとり、よそ見や居眠りは絶対にしないようにしてください。
授業で使う教科書や筆記用具の忘れ物もNGです。副教材や道具類もきっちりと揃えましょう。
授業態度が改善すれば、先生が持つ印象もよくなり、評価が上がりやすくなります。
特に副教科は授業態度に先生の主観が入りやすいので、一生懸命に取り組む姿勢を見せましょう。
2. 積極的に学ぶ姿勢を見せる
授業は生徒が聞き手に回るものですが、積極的に参加して学ぶ姿勢を見せると内申点が上がりやすいです。
先生の話が終わったタイミングや休み時間を使って質問する、挙手して解答するなど、自主的に動けるとよいでしょう。
副教科も同様です。苦手なものがあれば先生に質問や相談をし、前向きに取り組む姿勢を見せてください。
得意な科目があれば、率先してお手本やリーダーに立候補することもプラスになります。
3. 課題をしっかりとこなす
各科目で出される課題は、必ず期日を守って完了することが重要です。
急ぐあまり文字や解答が雑になってはいけません。
読みやすい文字で、解答に至るまでの経緯や答え合わせの結果を残しておき、真面目に取り組んだことが伝わるようにしましょう。
先に解答が配られている場合は特に注意が必要です。
答えしか書いていないと書き写したと勘違いされやすく、自己採点をしていないと「ただ解いただけ」と思われてしまうからです。
解答がある場合は必ず採点をし、間違っていた場所を再度解いておきましょう。
4. 定期テスト・小テストの点数を上げる
内申点に定期テストは大きく影響します。現時点であまり成績が奮っていないのであれば、勉強方法や通う塾を変えて成績アップを目指しましょう。
小テストも軽視してはいけません。小テストは授業の理解度や復習の出来を確認する目的で行われるため、成績が悪いと「授業についていけていない」と思われてしまうからです。
5. 副教科も全力で取り組む
副教科には得手不得手があります。
歌が苦手、絵が苦手、運動が苦手、といった個人の特性は、すぐに変えられるものではありません。
そんな副教科は、実際の成績だけでなく一生懸命取り組む姿も大きく評価されます。
明確な採点基準がないため、先生の主観で内申点が決まる面も強いです。苦手だとしても全力で取り組むようにしましょう。
6. 課外活動に参加する
授業態度やテストの成績ほどではありませんが、課外活動も内申点に影響します。
英検・漢検をはじめとした資格の取得や、生徒会・委員会への参加、部活動など、実際に点数にならなくても、内申書に記載されれば好印象です。
7. 先生とコミュニケーションをとる
授業の質問や相談だけでなく、進路や受験のこと、自分の成績のことなどを先生に相談し、コミュニケーションをとることもおすすめです。
自分では気づいていない発見があるかもしれませんし、先生から見た印象を知るチャンスがあるかもしれません。
ただし、先生の都合を考えずに時間をとらせてしまうと、マイナスになることもあります。必ず「今よろしいですか?」と確認してからコミュニケーションをとりましょう。
内申点を上げるなら、早めの行動が何より大切!
内申点は成績・授業態度・学校生活など、さまざまな要素が絡んで決まります。
そのため、内申点を上げるには少しでも早く足りていない部分を見つけ、長所を伸ばすことが重要です。
とくに定期テストの結果は内申点、そして入試の合否に直結するものです。
- 勉強しているのに成績が上がらない
- 苦手科目が克服できない
- 志望校に向けてできることをやりたい
そんな悩みを持っていたら、すぐに行動しましょう!
定期テストの成績アップや、苦手科目の克服には学習塾の利用もおすすめです。お子様に合う教室を見つければ、高いモチベーションで勉強に取り組めるようになります。
【まとめ】内申点を上げるには学習塾で定期テスト対策をするのがおすすめ!
少しでも気になった人は今すぐチェック!
内申点を確実にあげるには、定期テストでよい点数を取り、成績アップを狙うのがおすすめです。
自主学習でもできることは多いですが、より上を目指すなら学習塾も検討してみてください。
マンツーマンや個別指導なら苦手科目も克服しやすく、足を引っ張っている教科の成績を改善できるかもしれません。
マナビバではプロの格子が小中高の一貫指導で学習を徹底的にサポートしています。内申点対策に早すぎることはありませんので、より有利な高校受験に向けて、ぜひご検討ください。