中学1年生の社会の地理では、「ヨーロッパ」という単元を学習します。
そこでこの記事では、この単元が苦手という中学生やそして中学生に勉強を教える親御さんのために抑えておくべき重要なポイントをわかりやすくまとめたので参考にしてください。
ヨーロッパの地形と気候
ヨーロッパの位置は、ユーラシア大陸の西の端で、西は大西洋、南は地中海に面しています。
ヨーロッパの中央部にはアルプス山脈があり、このアルプス山脈を境にして、南と北で自然環境が大きく変わります。
自然
アルプス山脈の北側は、北ドイツ平原や東ヨーロッパ平原やなだらかな丘陵が広がり、国境を超えるライン川、ドナウ川などの国際河川が流れています。流れがゆるやかで水運に利用されてきました。
北側のそのさらに北側には、スカンディナビア半島があり、フィヨルドという氷河からできた複雑な地形もみられます。
アルプス山脈の南側は、北側よりも山が多く火山もあり、イタリアやギリシャなどでは地震もしばしば発生しています。
気候
ヨーロッパも大部分は日本より高緯度にありますが、気候は比較的温暖のようです。 暖流の北大西洋海流と偏西風が寒さをやわらげてくれるからこのような気候になっています。
特に大西洋や北海に面した地域は、冬の寒さがあまり厳しくない西岸海洋性気候となっています。
一方、アルプスの南側にある、ギリシャやイタリア、フランス、スペインなどの地中海沿岸の地域は、夏は晴天が続いて乾燥する地中海性気候となっており、夏は、北側の人々のリゾート地にもなっています。
北側のさらに北側のスカンディナビア半島や、東ヨーロッパ、ロシアは、亜寒帯(冷帯)気候になるため、冬の寒さは厳しく夏は短くなっています。
ヨーロッパの民族と宗教
ヨーロッパでは多くの宗教と民族が混ざって生活をしています。
どのような宗教の違いがあり、どんな民族がいるのかをしっかりチェックしておきましょう。
宗教
ヨーロッパはキリスト教が多くの地域で信仰されています。
キリスト教の中でも大きく三つの宗派が存在します。
①プロテスタント…主にゲルマン系の民族が信仰。イギリス・ドイツなどに多い。
②カトリック…主にラテン系の民族が信仰。スペインやフランス、イタリアなどに多い。
③正教会…主にスラブ系の民族が信仰。ロシアや東ヨーロッパなどに多い。
他にも、旧植民地のアフリカやトルコなどからの移民を中心に信仰されているイスラム教もあります。
言語・民族
ヨーロッパの言語は、さまざまですが、大きく以下の三つの系統に分けられます。
①ゲルマン系言語…ヨーロッパの北西部に多く、英語やドイツ語やノルウェー語など。
②ラテン系言語…ヨーロッパの南部に多く、フランス語やイタリア語やスペイン語など。
③スラブ系言語…ヨーロッパの東部に多く、ロシア語やポーランド語やブルガリア語など。
同じ系統の言語は、同系統の民族の言葉が長い時間をかけて変化してきたものなので、文法や発音が似ているといった共通の特徴がみられます。
現在のヨーロッパでは、アジア、アフリカ、トルコなどから移り住んできた人などが増え、多様な民族が共生する社会を形成しています。
ヨーロッパの農業
ヨーロッパでは農業が古くから行われており、気候区分と同じくアルプス山脈を境にして地域によって異なる農業と食文化が見られます。
混合農業
アルプス山脈の北側では混合農業が行われています。
これは、小麦やライ麦などの穀物栽培と、豚・牛などの家畜の飼育を組み合わせた農業のことを言います。
栽培する穀物を食料用のほかに、家畜のエサにする飼料用作物(とうもろこし、テンサイなど)も一緒に作れるというメリットがあります。
ドイツでは、ライ麦やじゃがいも、種類が豊富なソーセージ作りが盛んです。
地中海式農業
アルプス山脈の南側では地中海式農業が行われています。
イタリアやフランスなど地中海沿岸で行われている農業で、夏の乾燥に強いオレンジやオリーブなどの果樹や、冬の雨を生かした小麦などを栽培しています。
イタリアのオリーブオイルをたっぷり使ったパスタやピザ、魚介料理なんてホントおいしいですよね。
酪農
ドイツより北側のデンマークやオランダなどの冷涼な地域やアルプス地方では、乳牛を飼いバターやチーズなどの乳製品を生産する酪農が盛んになっています。
EUでは、域内の食料自給率をあげるように農家や地域に補助金」を出す対策(共通農業政策)をとってきましたが、農業国が多い東ヨーロッパの国々がEUに加わったこともあり、補助金の増加がEUの財政を圧迫するようになってきたので、その見直しが進められています。
一方で、農薬の使用をおさえた観光重視の農業への補助金を増やすなど、新しい農業のあり方を目指す取り組みも始まっています。
ヨーロッパの工業
工業は、西ヨーロッパに位置するイギリス・フランス・ドイツを中心に、鉄鋼業や機械工業など近代工業が発展しました。
20世紀以降はアメリカが発展し、ヨーロッパの地位が低下しましたが、EUによる国を超えた統合をめざすように変化しました。
現在は、医薬品や航空機などの先端技術産業、自動車工業などが成長していて、産業の中心地もロンドンやパリ、ミュンヘンなどの大都市近郊に移動しています。
EU統合と課題
ヨーロッパ州の共同体であるヨーロッパ連合(EU)では、国境のない単一市場をつくることを目的とし、商品取引の自由化のほか労働力取引の自由化に取り組んでいます。
EUは、“European Union”の略称で、第二次大戦後、アメリカなどの大国への対抗とヨーロッパで戦争を起こさないという考えにより、ヨーロッパを統合しようとする動きが起きたことから発足します。
1967年にヨーロッパ共同体(EC)発足し、フランス・ドイツ(当時は西ドイツ)・イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルクの6カ国が加盟します。
ECは、“European Communities”の略称です。
マーストリヒト条約により、1993年にヨーロッパ共同体が発展してヨーロッパ連合へと変わります。
1990年代から2000年代にかけては、西ヨーロッパだけでなく東ヨーロッパへも加盟国が拡大しています。
そして2020年1月31日イギリスがヨーロッパ連合(EU)を離脱します。この出来事はブレグジット(Brexit)と言われています。
2021年現在では、EU加盟国は27カ国となっています。
EUの問題点
EUの統合による成功例も多数ありますが、2004年以降、EU加盟国が東ヨーロッパまで広がった事により、西ヨーロッパと東ヨーロッパの経済格差の問題が生じました。
一般的には、西ユーロッパは所得が高く、東ヨーロッパは所得が低い傾向が見られます。
そのため、労働者はより高い所得を求め、東から西へ、工場はより安い労働力を求め西から東へ移転する動きが見られました。
結果として、西側のドイツやフランスでは失業者が増えるといった問題が発生しています。