今回は、入試の難易度が非常に高い医学部についてご紹介し、説明いたします。
現在、日本国内に医学部を置く大学は82校です。国立大学医学部が42校、公立大学医学部8校、省庁管轄大学校(準大学)が1校、私立大学医学部が31校です。
医学部・医学科を置く大学
医学部はどれくらい難しい?医学部の偏差値は?
では、偏差値の表で大学の医学部がどれくらい難しいか見てみましょう。
<大学医学部の難易度>
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以上の表を見てわかるように、全体に医学部は偏差値が高く、他の学部では比べる対象がないくらいの難易度です。
国立では、東京大学が最も偏差値が高く、次いで京都大学、大阪大学が続きます。医学部だけでなく、国立大学では「東の東京大学、西の京都大学」が昔から最高峰です。全般に旧帝国大学と神戸大学、千葉大学など他の学部のレベルも高い大都市の大学が上位にいます。
医学部の大学としては東京医科歯科大学が難しく、国公立大学中でも頭一つ抜き出た位置にいます。
公立では旧大阪府立大学と旧大阪市立大学が合併した大阪公立大学がNo.1にいます。それとほぼ互角で横浜市立大学と奈良県立大学、さらに名古屋市立大学と京都府立大学も僅差で続き、公立大学も非常にハイレベルです。
なお、防衛省の防衛医科大学も難易度が高く、大変な難関です。
私立では、慶應義塾大学がダントツです。慈恵会医科大学も別格の存在で、順天堂大学と日本医科大学がトップ4です。大阪医科大学は大阪薬科大学と合併し、さらに総合的に学べるようになり、人気も上がりそうです。
また、自治医科大学と産業医科大学も難関として知られています。
ただし、特に私立は偏差値の序列に従って難しいかどうかはなかなか判別できません。偏差値が上の大学に合格している人が、そこより低い大学に不合格ということが珍しくありません。テスト問題との相性や得意不得意で受かる、受からないの違いも出てきます。
また、入試日程が早い大学は、試し受けで受験する人も多く、一方で2月上旬あたりの受験シーズン中盤の日程では同日に入試のある大学はどちらかしか受験できないため受験生は分散します。このようなこともあり、必ずしも偏差値通りになっていないところがあります。
これらを考慮して、実力相応校とチャレンジ校、滑り止め校など、レベルや日程、試験地など諸々の条件を検討して受験の準備に入りましょう。
医学部入試の特徴は?
国公立大学医学部の特徴
国立大学と公立大学の医学部入試の特徴は、まず「大学入学共通テスト」を受けることです。医学部でしかも国公立大学ともなれば、他の理系学部で言うとほぼ東京大学や京都大学に合格するのと同じくらいの学力が必要と思っておくぐらいで丁度いい、と言われています。
国公立大学の医学部は、共通テストで85%以上、難関の大学では90%以上を得点しなければならないとされています。昔から国公立大学向けの試験として一斉に試験を実施する「共通一次試験」「センター試験」があり、それが「共通テスト」に名称を変えても同じです。今までと同様の得点率が求められます。
一次試験となる大学入学共通テストでは5~7科目が課されます。その後に行われる二次試験では筆記試験に加えて小論文や面接が必要な大学が多くあります。
したがって、幅広く受験対策をする必要があります。大学入学共通テストの結果によって第一次選抜(足切り)が実施されることがあり、基準となる点数を下回れば二次試験に進めません。合格するためには広範囲の科目で学力をつけておくことが重要です。
なお、弘前大学は二次試験が英語メインの総合問題に変わったため、偏差値を判定することが実質的にはできません。今回は共通テストやその前年度までのセンター試験の状況をみて便宜的に63に位置しています。
私立大学医学部の特徴
私立大学では独自の個別試験を実施している大学が多く、筆記試験は外国語と数学、理科が必須科目になっている大学がほとんどです。それぞれ出題形式や過去問の傾向などに異なる所があり、配点も違います。
したがって、国公立大学の共通テストのようなまとまった試験対策をするのが難しいと言われています。そこで、行きたい大学の数を絞り、それぞれ別個に対策を立てるのが本来の希望進路に適った対策と言えます。または、どこの大学かに拘らず、可能な対策を立てやすい大学、似た出題傾向や出題形式の近い大学を揃えて狙っていくという方法もあります。
いずれにしても、自分の受験する大学の入試問題の傾向や形式は早めに知り、対策を立てないと合格は難しくなります。最も偏差値が低いとされている川崎医科大学でさえ、他の理系学部で言えば慶應義塾大学や早稲田大学に合格するのと同じくらいの難しさがあると言われ、決して簡単ではありません。
私立大学にも国公立大学の大学入学共通テストを利用する学校もあります。しかし国公立大学のように5教科7科目とは決まっていません。大抵は外国語と数学、理科で実施されます。大学入学共通テストを使う入試では個別試験で小論文と面接だけを実施する学校が多く、個別に筆記試験を実施しない代わりに、共通テストで高い得点を取らなければなりません。
なお、共通テストで国語や社会を受験科目に入れる学校もあります。私立大学は1校ずつ丹念にホームページで確認しましょう。
国公立大学と私立大学に共通する特徴
近年の入試では、大学入試は医学部も含めて理系、文系の学部を問わず総合問題・複合問題・融合問題の試験を課すことが増えています。もっと言えば、高校入試でもそういう傾向にあります。
理由は、例えば環境問題なら、資源の確保や安全で新しいエネルギーの開発という理系の範囲と思われる課題について、それを政治や経済や文化などの文系的な側面から実施可能かどうかを検討しなければならず、そうなると文系と理系の双方から多角的に見ていく必要が生じるからです。
これと同様に、医療についても医学という理系の知識や技術だけではなく、例えばコロナ禍において生活を営む人間の行動や感情、社会状況を理解し、ワクチン接種を迅速に行うために行政と連結し、チーム医療で生身の人間と接する医師やコメディカルスタッフ(医師以外の医療スタッフ全般)との意思の疎通を図る、など文系の要素と考えられる面が医療の業務にも多々付随しているのが現状です。
このような観点から、2021年に始まった大学入学共通テストでも、従来のセンター試験に比べて思考力や判断力、表現力などが求められる問題を出題するようになっています。私立大学の医学部試験についても、今後はその傾向を踏まえた試験問題が増えることが予想できます。
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国公立大学医学部の入試準備は?
共通テストが終わると、すぐに志望校の二次試験対策に進みます。
試験の内容を調べて受験の準備に入ろう!
上述の通りで共通テストとは違い、それぞれの大学で独自の二次試験を用意し、それぞれに出題形式や出題傾向の特徴があります。
そうなると、どこにでも万遍なく対応できるような対策をとるのが難しくなり、自分の志望校に合わせた過去問演習に時間を割くことになります。共通テストの結果によっては志望校を変更することもあり得ます 。
志望校を変更する場合は、共通テストが終わってから初めて過去問に触れることも考えられます。共通テストに確かな得点を前もって見込んでおくのが可能な人は別ですが、そうならずに志望校を変更するとなれば、そこで私立大学の併願校の受験日程を多く入れてしまうと第一志望校の受験対策に十分な時間を取れないかも知れません。
この私立大学受験から国立大学受験までの期間は、思っているほど時間がなく、ハードな入試の日程が続きます。疲れも溜まり体調を崩してしまう危惧もあります。
併願校の選び方にも注意する
国公立大学を目指す程度の学力があれば私立の併願校は上位校を狙ってももいいと考えられますが、本命の第一志望校の対策に時間を割きたいために私立大学はただ受験するだけという人もいます。受ける以上は合格する前提で、確実に合格しておきたい人は中堅層かそれ以下の大学を入試日程に組む込むのも一つの方法です。
これまでの受験生の動向を見ると、私立大学は私立大学でまた違う出題になることから、併願するにしても相応の対策が少しは必要と思う人が一定数います。そこを考慮すれば私立大学の併願校は3〜4校、多くても5〜6校くらいで収めるのをオススメします。
気力と体力に自信があり、「出願可能なところなら連日でも受け続ける」という猛者もいることはいます。そこまで集中力を持続させつつ、多様な私立大学の試験対策も並行して移動や宿泊を伴う受験を繰り返すのはあまりオススメできません。
一次試験の科目について
なお、大学入学共通テストは、国語と社会は1科目で受験でき、外国語は通常なら英語で受験します。
数学は、数学1に「数学Ⅰ」と「数学Ⅰ・数学A」の2科目、数学2に「数学Ⅱ」と「数学Ⅱ・数学B」「簿記・会計」「情報関係基礎」の4科目の中から2科目を選択します。
理科は、理科1に「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の4科目、理科2に「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目があります。医学部では合計8科目の中で理科 、理科2の中の2科目が選択必須科目となっているのが一般的です。
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二次試験の日程と科目について
そして、共通テストを通過した後はすぐ二次試験の対策に入りますが、試験は前期と後期の日程に分かれて行われます。
前期日程の筆記試験では、英語と数学に加えて理科から1科目または2科目を選択する方式が大多数です。ただし、大学入学共通テストと二次試験の配点が大学によって大きく異なります。
それに対し後期日程は、共通テストの結果に加え、小論文と面接のみで選抜を行う大学があります。大体において、後期日程は前期日程より募集人数が少ないです。山梨大学のように後期日程のみのため関東圏の受験者だけでも相当数に上る大学もあります。
このように、後期日程は試験の内容が難しいという以前に倍率が高く、実力伯仲の受験生同士で少ない椅子を奪い合うことになります。
また、九州大学や佐賀大学は最初から理科を「物理基礎・物理」と「化学基礎・化学」の2科目を必須科目に設定しているところもあります。ほかにも山形大学では国語(近代以降の文章)が前期日程の試験科目に含まれているところがあるなど、詳細は各大学へ確認が必要です。
小論文を課される大学では、やはり医療分野に関する題材が多いですが、それ以外の他の題材が出されないとは限りません。自然科学系から社会科学系、人文科学系まで幅広い視野を持っているかも試されます。自分の好き嫌いの枠を捨てて様々なテーマに興味関心を持ち、かつ志望校の出題傾向をよく見て自分の考えをまとめておくのが大切です。
小論文は一種の実技科目のような面もあり、制限時間内にテーマを読み、考えをまとめ、相手にわかりやすく伝わっているか注意を払って書き上げる、という一連の作業を行います。そこに慣れている人と慣れていない人とでは随分な差が出ます。
また、医学部の二次試験では面接が実施されます。ここでは医師になる人として適切な、コミュニケーション能力と責任感、やり抜く強い意志があるかなど人間性を見ます。
それに伴い、小論文と同様に幅広く社会常識のような類を質問されることもあります。試験科目以外のことは全く知りません、では通用しません。医療関連も含めた新聞や情報誌などを見て準備し、口頭で言えるようにする必要があります。
私立大学医学部の入試準備は?
続いて、私立大学医学部の入試対策ですが、国公立大学よりさらに個性的な出題が多いのが特徴で、別個に対策を立てるのが必須条件です。
早めに志望校を絞って対策を始めよう!
私立大学も、大抵は一次試験と二次試験に分けて実施します。二次試験で小論文と面接を実施している大学がほとんどです。
それとは別に、関東圏の日本医科大学、杏林大学、埼玉医科大学、関東圏の大阪医科薬科大学、近畿大学、関西医科大学は後期日程があり、受験できるチャンスが2回あります。ただし、募集の定員が少ないため、大きな期待はできません。
小論文は日程を逆算した対策が必要
小論文の出題もまちまちで、小論文のない大学、小論文の中で英語も含めた問題が出題される大学、一次試験で小論文を実施する大学など、様々です。
一次試験で小論文を出題する大学の場合、試験そのものは一次試験で実施されるものの、二次試験へ進んだ時の得点に加算されるため一次試験での採点には影響しません。 そうなると、たとえ小論文が二次試験での採点になるとはいっても一次試験の受験日までに小論文の演習などの対策に力を入れておく必要が出てきます。
二次試験の面接は時間を要することから、あらかじめ小論文を書いておいてもらう意図もあります。あるいは、大学によっては面接時にその小論文の文章を見ながら質問をしてくる可能性もあります。そのような理由で一次試験に小論文を用意している可能性が考えられます。
出題傾向の変化は?
2021年から大学入学共通テストが開始され、以前のような知識や技術を問う学力をみる試験から、思考力や判断力、表現力をみる試験へと変わってきました。また小論文や面接においても、人間性や社会性、倫理観などが重視されるようになってきました。
私立大学は独自の試験内容が多いですが、その内容も上記の傾向を反映させた試験が増えていくと予想されます。
日程と場所も重要
本命の入りたい志望校を目指して勉強するのは当然ですが、医学部に行くためには好き嫌いや諸条件の枠を超えてでも数校は実際に受験することになる人が大半です。受験校を選ぶる際には、偏差値だけではなく、日程と場所も重要な条件になってきます 。
私立大学医学部の一般入学試験は日程が過密です。1月後半から最初の2周間程度で6割くらいの大学で入試が実施されます。そのため、同日に複数校で入試があります。出願する大学の組み合わせによっては、数日間にわたり連続して複数の大学を受験する可能性もあります。
非常にタフな日程をこなすかどうかを考え、受験校の組み合わせを上手く作るのが肝要です。無理にアードな日々を組んで強行すると、休息を取れずに疲労した状態で受験することになりかねません。このような点を考慮して受験校を選択することが合否を左右します。
試験会場は、大学によって一次試験と二次試験で会場が異なります。一般入学試験の一次試験の会場は大学本学だけではなく全国各地に設けられる大学が多数です。つまり地方で受験することも可能です。しかし二次試験の会場は、ほぼ本学のみで行われます。ただし、岩手医科大学は本学の他に例年、東京会場の受験ができます。
このことから、一次試験の受験校の組み合わせを受験会場の場所で考えていく方法もあります。例えば、地元に近い大学を受験するにしても、試験の日程の前後の状況を見て、受験する会場を東京に集中させ、 地元に近い大学も東京で受験する、などの方法をとります。
その点では気をつけないといけない所もあり、例えば関東圏の獨協医科大学は栃木でしか受験できず、関西圏の川崎医科大学は岡山でしか受験できません。
今後もコロナ禍の影響を合わせて考えると試験の日程や場所が例年通りとは限りません。受験の願書を出願する前に日程と試験の場所、そこまでの移動の距離と時間などをよく確認しましょう。
数パターンを想定して変更の可能性も考える
これらを見ると、受験での移動距離は必要最小限に抑え、体力面や精神面で体調を維持できるように試験の日程と出願先を数パターン作成し、比較して検討するのが大切です。
一例として、昭和大学の一次試験の翌日が東北医科薬科大学の二次試験で、さらにその翌日が埼玉医科大学という日程がありました。このように実施期間が別々の大学で連日になることもあります。
東北薬科大学の一次試験を東京の会場で受けて合格し、二次試験を受けに仙台まで行く前日に東京で昭和大学の一次試験を受験し、その日の夕方にすぐ仙台に移動し、翌日に東北医科薬科大学の二次試験を受験し、その日のうちに東京方面に戻り、その翌日に埼玉医科大学の一次試験を受験する、という大変にハードな日程になります。
受験の日程は、上手く組み合わせたとしても少々の重複はやむを得ないところもあります。最低限の対策として出願前に二次試験の日程と受験会場を確認し、受かった場合に他の受験校の二次試験の会場までの移動がスムーズにできるか、あるいはチャレンジ校に志願変更する場合に間に合うか、などを検討しましょう。幾つかのパターンの想定表を作って比較検討することで、少しでも受けやすい受験日程にしていけます。
まとめ
今回は、全国の医学部・偏差値ランキングを公開し、入試の特徴や受験に向けた準備についてのお話をしました。平均的な国公立大学だとしても、その医学部はほぼ東京大学や京都大学に近いくらいの高い学力水準が求められます。また、私立大学の医学部は慶應義塾大学や早稲田大学の他の学部に合格するくらいのレベルにあり、医学部自体が大変に難しいと言えます。
もし医学部への進学を考えているなら、相応の見識と指導力を持つ先生に従い、本気で勉強する決意と他の全てを捨ててでも医学部受験に懸けたいという覚悟が必要です。