今回は、高校卒業後の進学先についてお話を進めます。
もし進学するなら、大学か、短大か、専門学校か、どこに進もうか迷っている人は毎年少なからずいます。そこで、大学と短大と専門学校との3種の学校は、どのように違うのかをご説明します。
「大学」とはどんな学校?
大学は、学術的・理論的な学問を学びながら、幅広い分野の知識と教養を身につけるための学校です。
自分の選んだ学部の専門分野を中心に、様々な一般教養科目も学びます。教授や准教授などの先生と数名の学生で構成される「ゼミ」があり、テーマに基づいて詳しく勉強します。
また、大学にはサークル活動などの楽しい学生生活を満喫することも可能です。大学が正式に部室と経費、顧問の先生などの支援をしてくれ る体育会などに代表される部活動や、予算の一部がもらえたり部室を借りることができる公認サークル、それ以外の任意サークルなど色々なサークルライフが楽しめます。
大学の4年間または6年間の学生生活は、自分で時間割を組み、主体的に取り組むことが求められます。学費は高いため、長い夏休みと春休みにはアルバイトをする人もいれば研究活動に没頭する人もいます。基本的には自分の意思でどのようにもできるのが大学です。
「短大」とはどんな学校?
短大は、「短期大学」で、短期間で一般教養だけでなく、実用的な仕事や生活面で役立つ授業を履修(りしゅう)し、2年間で卒業する大学を指します。看護学科など3年制の短期大学もあります。
短大は基本的には大学の履修期間を縮小した学校のため、自分で時間割を作ることになっているものの、実際には必修科目など決められた講義を受けることが多くなります。その点で大学よりは時間割の制約があります。
大学の半分の期間で多くのことを学んで卒業するため、大学に比べて遊んでいる時間はありません。大学より実習も多く、より実用的なことを修得することを目指すのが短大です。短大卒業後は就職して即戦力として働くことが見込まれる代わりに、かなり忙しい学生生活になります。
「専門学校」とはどんな学校?
専門学校は、「専修学校」の中で高等教育機関に相当する「専修学校専門課程」のことです。
大学が学問研究を中心に幅広い知識と教養をを身につけるのに対して、専門学校では、職業に必要な能力の育成を目指します。専門学校の授業の多くは実習を中心に構成され、実習を通じて技術や知識を身につけることが重要視されています。
専門学校は「工業」「商業実務」「医療」「衛生」「文化・教養」「教育・社会福祉」「服飾・家政」「農業」の8つの系統に分類され、それらの専門的な職業教育が大半になります。その分、短大よりも実習が多くなります。実習が多いため、専門学校は遅刻や欠席をしてしまうと、ついていくのが大変になります。
進路選択のポイントを考えよう!
大学、短大、専門学校の違いを見ていく際のよくあるポイント整理として、メリットとデメリットがあります。それぞれのメリットとデメリットを見れば比較するときにわかりやすいです。その一方で、大学も短大も専門学校も様々なメリットとデメリットがあり、一概にはどこがいいとは言えません。
学費は安いに越したことはありませんが、例えば修業年数については長い年数がいいと思うか短い年数がいいと思うかは人や家庭の価値観、着眼点などで全く違うものになります。
じっくり勉強して将来の遠い先まで見越した昇進や出世を考える人なら4年制や6年制の大学に通うことがメリットになります。その逆に、職人気質で自分の腕ひとつで勝負したい人や、早く就職してお金を貯めて親の世話にならずに自力で後から大学の夜間部や通信教育で勉強しようという強い意志を持つ人にとっては、いま大学で4年間も費やすのはデメリットに感じることもあります。
なりたい職業が具体的に決まっていない人は、4年制の大学へ進むのが賢明です。長い学生生活を通して進路をよく考える余裕があります。ただし、遊んでばかりいては何も身につかないこと、4年間の通学で相当な学費もかかっていることを承知しておくのが肝要です。
また、短大は基本的に2年で就職するため、じっくり考える時間がありません。1年目で短大の生活に慣れた、と思ったら2年目でもう就職活動に入ります。
特に、専門学校に関しては、本気で人生をかけてその仕事に就きたい、という強い決意が必要です。なんとなく、というハッキリしない理由で決めてしまうと、後々に進路変更するのが難しくなります。
大学、短大、専門学校の違いを一覧表で比較
では、大学、短大、専門学校の特徴をまとめた一覧表をご覧ください。
大学、短大、専門学校の違い
項目 | 大学 | 短大 | 専門学校 |
---|---|---|---|
管轄省庁 | ・主に文部科学省(※) | ・主に文部科学省 | ・厚生労働省、経済産業省、国土交通省、文部科学省など |
授業 | ・理論を重視した学問 ・幅広い知識と教養 | ・大学よりも実践的な技能 | ・実習を伴う職業教育 |
入試 | ・一般入試が中心 ・推薦入試もある | ・推薦入試が中心 ・一般入試もある | ・書類審査と面接 ・推薦入試や一般入試もある |
難易度 | ・難関からボーダーフリーまで | ・大体は易しい | ・大体は易しい ・倍率の高い学校もある |
修業年数 | ・4年 ・医・歯・薬学部は6年 | ・2年 ・医療系は3年制が多い | ・1年〜4年 |
単位 | ・128単位以上 ・6年制は180単位以上 | ・62単位以上 ・3年制は93単位以上 | ・800時間以上 ・夜間部は450時間以上 |
学費 | ・国公立大学は250万円くらい ・私立大学は文系が400万円くらい、理系は540万円くらい | ・平均は200万円くらい ・公立は100万円くらい | ・平均は220万円くらい ・製菓は320万円くらいなど高い学校もある |
サークル活動 | ・様々なサークルが多数ある ・本格的な部活もある | ・学内サークルはある ・4大との合同サークルもある(学校による) | ・学内サークルはある (学校による) |
主なメリット | ・幅広い知識と教養が身につく ・就職の選択肢が多い ・自主的に活動できる ・4年以上かけて取り組める | ・早く就職できて収入を得られる ・少人数で学校の面倒見がいい ・学校によっては大学と同様の施設を使える | ・職業に直結する技能を習得できる ・大学より早く就職して収入を得られる ・同じ業界の友人、知人を作れる |
主なデメリット | ・実務や技能を学べない ・ダラダラ過ごすと何も身につかない ・学費が高い | ・職場の待遇が4大卒より不利な面がある ・遊ぶ余裕があまりない ・大手企業には採用されにくい | ・後から他の分野へ転職しにくくなる ・遊ぶ余裕があまりない ・専門卒では入れない企業がある |
進学 | ・大学院 ・学内の他 学部や他大学の2年生か3年生に学士編入が可能 | 大学へ編入も可能 | 大学への編入も可能 |
就職 | ・様々な分野へ就職が可能 ・4大卒が採用条件の企業もある | ・即戦力として採用されやすい | ・専門的な技能を活かす仕事に就ける |
初任給 | ・約21万円 | ・約18万4千円 | ・約18万4千円 |
・https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/index.html
厚生労働省・賃金構造基本統計調査
・https://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000944.html
文部科学省・学校教育法
(※)「大学」と「大学校」は別です。防衛大学校は防衛省。海上保安大学校、航空保安大学校、気象大学校などは国土交通省。自治大学校、消防大学校は総務省、など。
「とりあえず何処かに入学して、就職はその後で考えよう」では自分の首を締めることになりかねません。上記の一覧を参考にして、学費や年数も家族と相談して進路を選びましょう。
まだ進路が決まっていない人は、よく自己分析することが必要です。自分の得意、不得意な分野だけでなく、人との協調性や社交性、同じ作業に対する飽きっぽさ、学校以外でも勉強する熱心さがあるか、などの内面や性格に関わるところまでをいま一度、振り返って見ましょう。
また、「就職」は数十年の長い年数を過ごす場所になるかも知れません。好き嫌いはもちろんですが、生活する上での待遇面や勤務形態、転勤も含めて続けられそうかなども考えられれば自ずと選択するべき道が絞られていきます。
まとめ
今回は「大学」「短大」「専門学校」の違いについて説明しました。学校選びは、自分の進路がかかっている局面です。自分の生き方、やってみたい仕事、人とのコミュニケーション能力、など色々な観点で考えてから決めることが必要です。
家族や中学高校の先生、先輩などと相談することも大切です。また就職や進学について知識のある人がいるなら、積極的に意見を聞きましょう。ただネットで見ただけではわからない所が多数あるのが人間社会です。
今後の自分の生活スタイルや働き方にも大きく関わるため、長期的な視野で見て、悔いのない選択をしていきましょう。