今回は、「国公立」で「理系」の大学について、受験に必要な科目とオススメの大学、学部をご紹介します。
国立大学理系の入試科目と注目点は?
国立大学と公立大学を受験する場合、必ず課されるのが「大学入学共通テスト」(略称は共通テスト)です。科目は2023年時点では基本的に5教科7科目の大学が大多数ですが、2025年から「情報」が試験科目に追加されて6教科8科目となります。
前回のコラムで文系の国公立大学の受験について「【国立大学文系】必要な科目とオススメの大学と学部をマナビバが紹介します!」のテーマでお話していますが、今回は、特に点数の差がつく数学に触れておきます。
数学の解答用紙は他の科目と同じくマークシート式ですが、5択ではなく、計算した答えの数字をマークシートに記入する方式です。
例えば、計算した答えが「29」なら、解答欄の1段目に「2」を塗りつぶしてマークし、2段めに「9」をマークする、という具合です。この点が他の科目と大きく違うため、余裕をもって練習しておくのが重要です。
2025年以降は新課程で数学Cが復活するため、数学は出題科目に変化があります。最も大きい変化は、選択解答する項目数が現行の2から3へと増加する、ということです。
数学は、「数学A」が「図形の性質」と「場合の数と確率」の両方を解答します。現行では「場合の数と確率」「整数の性質」「図形の性質」から 2 項目を選択して解答することになっていますが、ここが改正されます。
また、「数学 Ⅰ、数学A」の他は「数学Ⅱ、数学 B、数学 C」のみとなります。単独科目としての「数学Ⅱ」や「簿記・会計」「情報関係基礎」は選択できなくなります。
なお、「数学 B」からは「数列」と「統計的な推測」、「数学 C」からは「ベクトル」と「平面上の曲線と複素数平面」が出題され、このうち3項目を選択解答していきます。
以上をまとめると、選択解答する項目数が現行の2から3へと増加する、ということです。試験時間は10分増えて70分に変更されます。
理系で国公立大学に行くメリットは?
①学費のお得感は文系以上
理系は、文系と比べるとそもそも学費が高額です。特に私立大学で理系になると更に学費がかかります。
その点で、理系で国立大学に行く第一番目のメリットは、「学費が安い」が挙がります。
<理系の大学でかかる学費>
大学 | 平均的な学費 |
---|---|
国立大学・理系 | 約243円 |
公立大学・理系 | 約237万円〜約254万円 |
私立大学・理系 | 約543万円 |
国立大学大学院・理系 | 約136万円 |
私立大学大学院・理系 | 約220万円〜約250万円 |
上の表を見て、国公立大学は学費が安いことがわかります。
②研究施設が充実している
国立大学で理系と言えば、東京工業大学や電気通信大学、東京農工大学、東京海洋大学、名古屋工業大学、京都工芸繊維大学、などがあります。私立では東京理科大学が有名ですが、学費に対する研究施設の充実度では、どうしても国公立大学に分があります。
この他に、文系も理系もどちらも優秀と言われている国立大学は東京大学、京都大学、東北大学などで、これらの大学も研究施設が充実しています。
以上のような大学を卒業すると、大体が大学院へ進みます。そして、また充実した研究施設で学び、有名企業へ就職したり、教授になったり、官僚になったり、自分で起業するなどし、高い知識や技術を活かす道へ向かえます。
オススメ!!理系の国公立大学と学部
国公立大学の理系では、どのような大学と学部がオススメか、社会的な評価や将来性、人気が出ている、などの観点でご紹介します。
文系でも言えることですが、自分で「やってみたい、ぜひ取り組んでみたい」という研究分野があるなら、社会的な評価や時代の流行に迷わされずに向かっていく姿勢も大事です。
まず、各大学のホームページを自分でよく見て、自分に合っているか考えてみましょう。
①<3教科以内で受験可能な大学>
- 九州大学・理学部(後期日程)
- 広島大学・理学部、工学部(後期日程)
- 東京海洋大学・海洋生命科学部(後期日程)
- 京都府立大学・生命環境学部・農学生命科学科(後期日程)
- 長崎大学・歯学部、薬学部、環境科学部、情報データ科学部(後期日程)
- 三重大学・生命環境学部・農学生命科学科(後期日程)
- 北九州市立大学・国際環境工学部(後期日程)
- 愛知県立大学・情報科学部・情報科学科(後期日程)
- 静岡県立大学・食品栄養科学部・食品栄養科学科(後期日程)
- 富山大学・理学部(後期日程)
- 鹿児島大学・工学部(後期日程)
- 前橋工科大学・工学部・建築学科(後期日程)
- 石川県立大学・生物資源環境学部・生物資源環境学科(後期日程)
- 公立小松大学・生産システム科学部・生産システム科学科(中期日程)
- 高知工科大学・環境理工学類、システム工学類、情報学類(後期日程)
- 琉球大学・農学部(後期日程)
ご覧のように、これらの大学は公立小松大学の「中期日程」以外は「後期日程」ばかりです。
3教科受験という受けやすさがある一方で、倍率は高くなります。受けやすい、という点でオススメですが、決して合格しやすいという意味ではありません。
また、公立大学が多いことも特徴です。国立大学と比べると、地元を除いて知名度はあまり高くないという点では国立の有名な大学よりは受験者数が少ない可能性があるかも知れません。
②<難関の割には知名度がやや低い国公立大学>
- 電気通信大学
- 東京農工大学
- 東京海洋大学
- 名古屋工業大学
- 京都工芸繊維大学
特に、東京海洋大学には後期日程で海洋生命科学部があり、3教科受験が可能です。難関大学なのに3教科受験ができ、なおかつ前期日程で合格手続きしたライバルは受験できないため、上記の難関大学の中では受験科目やライバルが減ったなどの好条件が揃い、もっと着目してよさそうなところです。
理系で国立大学を受けるときの注意点
共通テストは理系の人も社会科を1科目だけ受験することになります。社会科は、主に「地理歴史」「公民」と呼んでいますが、正確には10科目あります。ここをよく確かめましょう。
具体的には、「世界史A」「世界史B」「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」「現代社会」「倫理」「政治経済」「倫理・政治経済」で10科目です。
AとBがある科目は、高校での単位数と学習内容がやや異なります。文部科学省の規定ではBの方が単位数が多く、学習内容も多いです。
当然に社会が不得意な人が比較的多い理系では、可能ならAの科目で受験したいところです。しかし、多数の国立大学がBの科目を指定しているため、Aの科目を選ぶと受験できる大学の幅がかなり狭まってしまいます。
この点を踏まえると、共通テストの社会科は基本的にB科目から選択することになります。
また公民についても同様で、国立大学の多くがは「倫理」のみや「政治経済」のみでは受験できないようになっています。
したがって、選べる科目は「世界史B」「日本史B」「地理B」「現代社会」「倫理・政治経済」の5科目になります。
さらに、現代社会で受験できる国公立大学も限られています。例えば東京大学、京都大学、大阪大学、名古屋大学、東北大学、北海道大学などは「現代社会」で受験できません。難易度の高い大学ほどこの傾向が強いようです。
これらの科目選択の事情を早い段階で知り、共通テスト対策を進めましょう。
まとめ
今回は、「国公立」で「理系」の大学について、受験に必要な科目とオススメの大学、学部をご紹介しました。
実際には、地方の国立大学や公立大学の難易度は、首都圏の有名私立大学より易しいところもあります。しかしながら、特に理系は費用の面を考えると地元の国公立大学に目指す傾向が強いのは現代でも変わりません。
受験校と進学先は、家族や学校の先生、塾の先生などと大学や学部のキャンパスの場所、学費、社会的な評価、そして自分が研究したい分野であるかなど、よく考えた上で決めていきましょう。