今回は、大学受験生に言ってはいけない言葉について、紹介します。
「NGワード」や「禁句」と呼ばれる言葉は、言う側は良かれと思って言ったことでも、言われる受験生にとってはプレッシャーになったり傷ついたりするなど、思っていたのと違う受け止め方になることもあります。
やはり避けたほうがいい言葉があるなら、言わないに越したことはありません。
相手を見下す言葉4選
では、大学受験をする人に言ってはいけないNGワードや禁句を紹介していきます。まず、相手を下に見るような、見下した言葉、けなすような言葉を見てみましょう。
①けなして叱る言葉
まず、叱るにしても傷つくような言い方は全てNGと思っておきましょう。
よく、成績のいい人や大人の人、あるいは先生たちは、簡単な問題だから解けて当たり前と思っているところから、つい言ってしまうのが、
「これくらい、できて当たり前だよ」
という類の言葉です。
出題の前にこの言葉そのものを言うのはマイナスとは言い切れませんが、それができなかった生徒に向かって、つい
「どうしてこんな簡単なのができないの?」
という小バカにするような感じの表現が後についてくることはよくあります。
もちろん、「どうしてこんな簡単なのができないの?」は言ってはいけません。しかしそれ以前に、そこにつながるような言葉を前に置かないことが大切です。「どうしてこんな簡単なのができないの?」という言葉が口に出てくるのは、その前に「これくらい、できて当たり前だよ」と思っているからです。
理解力、思考力、記憶力など学習に関する能力には個人差があり、人によっては簡単な問題でも解けないことがあります。仮に、それくらいの容易な基本問題を解けないようでは大学なんて受かるハズはない、と思っても、それを受験生に言ってしまうとヤル気を失って受験を諦めてしまうかも知れません。
②不安を煽る言葉
続いて、受験勉強が遅れていたり模擬試験の結果が悪かったりしても、
「このまま行くと受からないよ」
という類の言葉も避けましょう。
受験生自身も今のままでは合格ができないだろう、と自分で知っています。精神的にも苦しい状況です。
焦りや不安の気持ちを抱えずに、危機に陥っているのを全く自覚していない人ならともかく、このまま行けば不合格とわかっている人に改めて再確認するような「このまま行くと受からないよ」は言わないようにしましょう。
③受からなかった時を想定する話
これに加え、励ましたり安心させようとの意図から、
「もし受からなくても〇〇があるよ」
のように、落ちる想定や受からない前提の話をするのも控えましょう。不合格の確率が小さいのか大きいのかは不明ですが、いずれにしても「受からない」ことを頭に思い浮かばせること自体を無くすようにしましょう。
受からないことを想定する話題になっただけで、大学受験生としては落胆してしまうかも知れません。
④落ちると決めつけている言い方
さらに、禁句としては、
「もし受かったらスゴイね」
も同様です。
本人が最初から記念受験のチャレンジ校だから受かろうなんて思ってない、と周囲に言っているなら話は別ですが、第一志望校を指して「もし受かったらスゴイね」は受かるハズがないでしょ、と言っているようなものです。
得点が届いていなくても、受験生本人が目標としている学校があるなら、そこへ向かって少しでも努力しているかを見てあげましょう。仮に受かったら奇跡だと思っていても、受からない前提で話を進めず、何よりも受かろうとして前に進んでいる姿勢を褒めるのが大事です。
努力を認めない言葉4選
受験生は、誰かから言われなくとも勉強しなければいけないことくらい、十分にわかっています。それでもなかなか進まないのが勉強です。
ここでは、大学受験生として自分なりに何とか頑張っている、少しは努力している、それなのに全く認めてもらえず頭ごなしに悪く言われて嫌になってしまうこともあります。そんな言葉を見ていきましょう。
①勉強を強要する言葉
自分が大学受験生であり、勉強を進めなくてはいけないことは十分に承知しています。当然に、自分の勉強の進み具合も自分自身で気にはなっているハズです。
それを、実は本人も気にしていることをわざわざ言葉に出して、
「勉強しろ」「勉強しなさい」「もっと勉強したら?」「最近、がんばってるのか?」
と言ってしまうことがあります。
よくあるケースで、「さて、そろそろ勉強でもしようかな」と思っている矢先に「いい加減、そろそろ勉強したらどうなの?」と親から言われて、「今からやるところだったのに、まるで全然ヤル気がないみたいな言い方をされてムカついた。これでもうヤル気なくした!」となってしまうケースです。
自分できちんと勉強してきた人がこんなやり取りを見れば、「何を甘えたことを言っているんだ!?」「お前は中学生か?それとも小学生か?」とでも思ってしまいそうなところですが、実際にはこのようなやり取りは多くの家庭で起きていることであり、単なる甘えの話では片付けられない所です。
勉強を強要しても、学力は簡単には上がりません。本人の「やるぞ」という意志が必要です。
②勉強していないものと決めつける言い方
入試本番か否かに関わらず、普段からテストの結果を見て
「だから勉強しておけと言ったのに」
と言ってしまうのも有りがちです。
受験生は、言われなくとも十分にわかっているので、そこへ敢えてトドメの一言を伝えたら、その後の受験勉強へのモチベーションすら失くしてしまう事態も考えられます。
誰でも、少しは勉強した、または勉強していなかったことを後悔して反省しているところに、そこへ、
「だから言ったのに」は本人の努力や反省を見ていないことになります。
③昔の自分の自慢話を聞かせる
「オレの入試の時は〜」
と自分の受験の苦労話をして辛さを分かち合うつもりが、ただの自分の自慢話になってしまうこともあります。結果的に、話を聞かされている側としては、「オマエはオレより大変ではない。もっともっと頑張れ」という意味合いに聞こえてきます。
人の自慢話を聞いても勉強しようという気は起こらないものです。いま大学受験をしようとしている人にとって、それがプラスになるかを考えて話しましょう。
④他人と比べての勉強不足を指摘する
また、「〇〇さんは毎日8時間くらいは勉強しているんだってさ」
のように人と比べる形であなたの勉強時間は少ない、と伝えるのも避けたいところです。結局は目の前の大学受験生の勉強不足を批判していることになります。
言われなくても勉強しなければいけないことは、当人がよくわかっています。先ずは少しでも勉強しているなら、そこを認めてあげる言葉から伝えましょう。
例えば浪人生といっても、短時間で集中して勉強して休憩を取りながら再び机に向かうタイプの人もいます。その休憩のタイミングで、もっと勉強するべきだという類の言葉を言われると、勉強のペースや気分も崩れてしまいます。
マイナス思考を助長する言葉は避ける!
ここまで、大学受験生には言わないほうがいい言葉を紹介してきました。
誰でも、自分の評価が低いと気分が落ち込みます。模擬試験の成績や、定期テストの得点、学期ごとの通知表など、自分を数値で評価するものが幾つもあります。そういう環境に身をおくため、自分への評価には敏感になりがちです。
そこへ、さらに言葉で追い打ちをかけてマイナス方向に目が向いてしまう言葉は禁句と思っておきましょう。
これらの言葉には、ある共通点があります。それは、受験生本人や周囲の人たちも含めて、そのような言葉をしょっちゅう繰り返して使ううちに、「本当にそうだ」と思ってしまう【暗示にかかりやすい言葉】なのです。
毎日のように、当たり前のように、あまり深く考えずに口走ってしまう言葉でも、いつも聞いているうちに「本当にそうだ」と思い、そのうち自分からその言葉を信じるようになります。
このような【暗示にかかりやすい言葉】が聞いてマイナス方向へ考えてしまうような言葉なら使うことは禁物です。
「キミは英語で点が取れない」
「本番に臨む勇気が持てず、自信が出ない」
「私は暗記モノに弱くてダメだ」
などは慎むよう心がけるのが大事です。弱気で後ろ向きな言葉を口に出して言ってしまうことは自他ともに止めましょう。
こういう言葉は、心理学でも暗示がかかって本当にそういう考え方や発想が植え付けられ、実際に価値観や性格までもが変化してしまう、と言われています(これをラベリング効果と呼びます)。
勉強して点が取れるものでも取れなくなったり、本番で不必要に緊張して頭が真っ白になったり、暗記しても覚えられないという思い込みが関与して覚えられない状態が続く、などの要らない能力低下を招きます。
努力すればできることでも最初からできないと決めつけたり、少ししか取り組んでいないのにダメだと思い込んでしまうなどの、自分で自分を低く評価することにつながる先入観は捨てるのが得策です。
当然ですが、周囲の人たちも受験生の意欲を低下させるような、能力の限界を意味したり努力しても無駄である意味合いの言葉を投げかけてはいけません。仮にこの科目が苦手だ、と自他ともに認める科目があっても、それをもっと苦手にしてしまうような
「あなたは英単語が覚えられない」
「物理の勉強なんていくらやっても伸びないでしょ」
のような言葉は、合格することから遠ざけるだけです。
大学受験生にかけていい言葉は?
では、言ってはいけない言葉とは違い、言ったほうがいい言葉というものはあるのでしょうか!?
その答えは、上記のような言ってはいけないNGワードの逆の意味合いを持つ言葉です。
気分よくヤル気が出て、前向きに「やるぞ」と思えるような言葉を考えてみましょう。
よく、英語で、”I can do it!” (私はできる!)という言葉を耳にします。
またクラス全員で一致団結して”We can do it!”(私たちはできる!)と唱えるのも同様です。
プラス思考の声かけでヤル気が込み上げ、自己暗示がかかって本当に実力がつき、高いハードルでもクリアしてしまうことがあります。このような聞いてプラスに感じるならどんどん使っていい言葉もあります。
では、上述のNGワードや禁句を、上手く変えてみましょう。
NGワードを逆用してみる
<けなして叱る言葉>について
「どうしてこんな簡単なのができないの?」ではなく、
「どこがわからなかったか」「ここを覚えれば次は得点できる」
のような、次へつながる言葉に言い換えましょう。
また、「このまま行くと受からないよ」ではなく、
「今すぐにこのページをやり切ろう」「この間違えた所を解き直せば合格へ近づける!」
のような、まだまだ諦めるには早い、という考えを呼び起こすような声かけが大切です。
<本人もよく承知している言葉>について
例えば母親なら「私は今日中に今週の家計簿を書き終わらないと」「シャンプーが無くなる前に補充しに買いにいこうかな。その前に洗い物をやらなければ!」の自分もやることに追われている旨を伝えてから、続いて
「あんたもそろそろ臨戦態勢かい!? 部屋をちゃんと温めてからやりなさいよ」「風引かないようにもう1枚着てから机に向かいなさい」
のように、自分はやるべきことをやっている、あなたもやるべきことをやってるようだね、という感じで机に向かうのが自然で当たり前の日常のように演出してみるのも効果的です。
<勉強していないものと決めつける言い方>について
また、「だから勉強しておけと言ったのに」ではなく、
「同じ間違いを減らしていけば、少なくとも間違いの量は減らせる。これから実行しよう」
のように、勉強してこなかったダメ出しをするよりも明日のプラス1点に目を向けましょう。
<マイナス思考を助長する言葉>について
受験生本人が「私は暗記モノに弱くてダメだ」と言ったなら、
「いや、そんなことはない。自分でそう思い込んでいるだけだよ」「簡単なところでもいいから、まず覚えられたという実感を持てるものから始めてみよう」
のような、やればできる、案ずるより産むが易し、という前向きのプラス思考の暗示を次々と浴びせ続けます。
気持ちの理解が大切
大学受験生が自分でマイナス思考に陥っていたり自信を失くしていたりしても、そこに同調してはいけません。むしろ、果敢にチャレンジするあなたは立派だ、とほんの少しでも可能性を感じられるものを想起させるよう仕向けることが重要です。
受験生本人は、大学受験が怖い、受からなかったらどうしよう、と内心は大学受験に対して自信を持てず、恐怖や不安を抱えています。本気を出して勉強しても受からないかも知れない自分を想像してしまい、それで自分の限界を知ってしまうのが嫌で、前へ進む一歩が踏み出せないでいるのです。
そこを親や兄、姉、先輩たちは配慮し、「自分の受験の時も正直に言えば落ちるのが怖かったし、現実から目を背けたこともあった。でも、そこからは何も生まれず、何も得られなかった。結果を怖れずにチャレンジすることに意味があるんだよ」というような言葉をかけてあげましょう。
先に受験をした経験者として、気持ちはよくわかっているよ、という理解の姿勢を示すことで、何らかの前向きな変化を期待できるかも知れません。
まとめ
大学受験生は、人生の岐路に立たされています。イライラしたり、ネガティブな感情に支配されたりするのも無理はありません。そこに、家族や友人、親類、先輩、仲間など周囲の人々が追い打ちをかけたりプレッシャーを与えたりしてはいけません。数少ない味方として、NGワードや禁句を避けるよう気をつけましょう。
根本的な意識として、大学受験生に対してかける言葉は思いやりや励ましの気持ちが伴っているか自問してみることです。味方になってくれているという想いは、大学受験生にも伝わるハズです。