今回は、「合格祈願」についてご紹介します。
受験生が「どうか合格できますように!」と神社で神頼みするのは、冬の例年の風景です。
赤ちゃんが生まれて始めて神社に行くお宮参りから、七五三や成人式のお祝いなど人生の節目の儀礼として神社へ行く人々は多数います。また厄除けや安産のお願いなど、普段は神社に出向かない人でも「今回ばかりは何とかしてください!」とお参りしに行くのが日本の文化として溶け込んできました。
「合格祈願」は人生儀礼ではありませんが、誰しもが通る関門、と見ればほぼ人生儀礼のようなものだと思えるかも知れません。ここに紹介する神社などの崇高な場所で、ぜひ受験の合格に向けてパワーを貯め込みましょう!
全国の受験生はどこへお参りに行く!?
では、受験生は、実際に合格祈願でどこへ行くのでしょうか。一般的には、新年の初詣と兼ねて近場の神社で合格祈願をする人が多いようです。
もし、これから紹介する神社などが日中で行ける範囲にあるなら、日頃の受験勉強の気晴らしや運動不足解消で出かけるのもアリですね。あるいは、受験勉強が本格化する前年に「学業成就」のお願いも兼ねた旅行もオススメです。
<太宰府天満宮>
KDDI の「合格祈願に関する調査」によると、全国的には、福岡県の「太宰府天満宮」が最多の来場者を誇ります。年間で約1000万人の参拝者が訪れるとのことで、さすがに受験の神様として名高い菅原道真公を祀る(まつる)本家本元の面目躍如というところでしょうか。
この「太宰府天満宮」は、正式に神社として国が命じて建立されたのが919年です。菅原道真公のお墓の上に社殿が建造され、まさに菅原道真公そのものにお参りすることになります。
また、境内には九州で最古のお稲荷さんとされる「天開稲荷大明神」もあります。商売繁盛や五穀豊穣などのご利益が多数あることから、「太宰府天満宮」と「展開稲荷大明神」をセットで訪れる観光客も大勢います。
一大パワースポットとして九州でも有数の人気があるため、コロナ禍においても大変な混雑です。衛生面には十分に気をつけて出かけましょう。
- 住所 太宰府市宰府4丁目7番1号
- アクセス 西鉄太宰府線太宰府駅
- tel:092-922-8225
「太宰府天満宮」の「天満宮」または「〇〇天神」という名称は、菅原道真公を主祭神として祀る神社に付けられています。全国の「〇〇天満宮」「〇〇天神」は、ほぼ全てが「太宰府天満宮」または「京都北野天満宮」、そして最も古いとされる山口県の「防府天満宮」から分霊した神社です。
全国で「〇〇天満宮」「〇〇天神」は約12000社あります。
<北野天満宮>
菅原道真公の生まれ故郷である京都に建立された天満宮が「北野天満宮」で、959年に社殿が造営されています。
特に関西圏には有名な私立大学や規模の大きな国公立大学が多数あり、「北野天満宮」には関西地方を中心に「合格祈願」で非常に多くの受験生を集めています。また、「合格祈願」「学業成就」はモチロンのこと、摂社や末社と呼ばれる「神社の中に造られた神社」が50社もあり、様々なご利益が得られるとのことです。
よく「太宰府天満宮」と「北野天満宮」とではどちらが格上か、どっちが偉いか、という質問があるようですが、どちらも同様の扱いと思って相違ありません。先に創建されたのは「太宰府天満宮」ですが、全国の天満宮の総本宮は、ここで紹介している「北野天満宮」です。
- 住所 京都市上京区馬喰町北野天満宮
- アクセス 京都市営地下鉄「北野天満宮前」下車
- tel:075-461-0005
京都は菅原道真公の故郷ですが、それだけに京都近辺には出生地とされる烏丸の「菅原院天満宮神社」、詩歌や管弦に秀でて在原業平らと共に親しんだ縁ある地の「長岡天満宮」、最古の天満宮とも言われる隣県の「奈良・菅原天満宮」など幾つもの天満宮があります。
京都と奈良だけでも天満宮が沢山あり、できるだけ沢山お参りしたい人たちのために天満宮だけを次々と巡るツアーもあるくらい大きな存在感を示しています。
<湯島天神>
関東圏で「合格祈願」といえば「湯島天神」が先ず挙がります。
初詣は明治神宮、厄除け払いは川崎大師、など他にも有名な神社仏閣はありますが、首都圏・関東圏でも菅原道真公の「湯島天神」は絶大な人気があります。正式名は「湯島天満宮」ですが、通称の「湯島天神」のほうがわかる、という人が多いようです。
1355年に菅原道真公を合祀(ごうし=他の神様の神社に招き入れること)し、「湯島神社」から「湯島天満宮」に名前を変えました。近隣には儒教の孔子を祀る「湯島聖堂」や東京では馴染み深い「神田明神」、大学などの教育機関も集まり、文教地区を形成しています。
「湯島天神」は「亀戸天神社」「谷保天満宮」と合わせて東京の三大天満宮と言われています。
- 住所 東京都文京区湯島3丁目30-1
- アクセス 最も近いのは東京メトロ(営団地下鉄)千代田線の湯島駅、その他に銀座線の上野広小路駅、都営地下鉄大江戸線の上野御徒町駅、JR山手線・京浜東北線の御徒町駅など
- tel:03-3836-0753
元々は1500年以上も前の古墳〜飛鳥時代に創建され、天之手力雄命(あめのたぢからおのみこと)を祀る神社で「湯島神社」の名称で始った大変に古い神社です。つまり、菅原道真公を祀るために建てられた神社ではなく、別の神様を祀ったのが始まりなのです。
天之手力雄命は現代の日本の神社の最高神であり太陽神とされる天照大神を救い出した武運と力の神で、開運の他に、仕事運からスポーツ運、くじ運まで勝負の成功を願う人々にご利益がある神社としても知られています。このため、いつも混雑しています。コロナ禍なので気をつけて出かけましょう。
<熱田神宮・上知我麻神社>
愛知県の「熱田神宮」は大きな神社で、この中に幾つもの摂社・末社があります。
その一つが「上知我麻神社」(かみちかま神社)で、知恵の文殊(もんじゅ)神として乎止與命(おとよのみこと)が祀られています。乎止與命は日本武尊命(やまとたけるのみこと)の義理の父です。文殊といえば、仏教で言う文殊菩薩も有名ですが、この「上知我麻神社」には文殊菩薩ではなく文殊の神様がいます。
一般に、受験の「合格祈願」としては学問の神様の菅原道真公が絶対的な存在ですが、こちら「上知我麻神社」の文殊の神様もまたご利益があると言われています。
- 住所 名古屋市熱田区神宮1丁目1−1
- アクセス 名鉄名古屋本線「神宮前駅」下車
- tel: 052-671-4151
熱田神宮の創建は、日本の「三種の神器」の一つである草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)のご鎮座に始まります。日本武尊(やまとたけるのみこと)はこの神剣を用いて大和王朝を築く上で大きく寄与しました。この神剣を愛知県の熱田に祀り、熱田神宮となりました。
やはり「日本の三種の神器」というと別格感が漂います。ちなみに、「三種の神器」はこの「熱田神宮」にある草薙の剣と、伊勢の「神宮」にある八咫(やた)の鏡、そして皇居にある勾玉(まがたま)です。
皇居や「お伊勢さん」で知られる伊勢の神宮とともに「三種の神器」を分け合っているというだけでも大変なご利益がありそうです。
なお、愛知県のある中部地方全体では長野の「善光寺」が新年の初詣も含めた「合格祈願」のお参りで例年1位です。ご存知のように善光寺は仏教の寺院ですが、以外にも受験生の「合格祈願」には伝統的に善光寺へ足を運ぶ人が多数いるようです。「善光寺」にも合格のお守りが用意されています。
<荏柄天神社>
関東の古都・鎌倉の「荏原天神社」は、受験の「合格祈願」でも大きなご利益があると言われ、京都の「北野天満宮」や福岡の「太宰府天満宮」と並んで「合格祈願の三大天満宮」と呼ぶことも多々あります。
鎌倉幕府を開いた源頼朝は、1180年に荏柄天神社を鬼門の守護神と仰ぎ社殿を整備しました。その後も北条家、足利家、豊臣家、徳川家など歴代の将軍家や有力大名が保護してきた由緒ある神社です。
東京都には「湯島天神」「亀岡天神」「谷保天満宮」がありますが、神奈川県にはこの「荏柄天神社」があります。来場者数では東京の神社には及ばないかも知れませんが、「北野天満宮」「太宰府天満宮」に加えて三大天満宮はどれかいう話題になると、必ずこの「荏柄天神社」の名が挙がるくらい格式の高い神社です。
- 住所 鎌倉市二階堂74
- アクセス JR鎌倉駅より京急バス5番乗り場「鎌倉20 大塔宮」行 「天神前」下車
- tel:0467-25-1772
鎌倉といえば有名なのは「鶴岡八幡宮」ですが、その「鶴岡八幡宮」から徒歩10分程度の所に「荏柄天神社」があるため、二つの神社を一緒に回るのも定番のコースになっています。
菅原道真公が愛してやまなかった梅の花の綺麗な名所としても知られています。
<難波八坂神社>
大阪には、通天閣や万博の太陽の塔だけでなく、かに道楽、グリコ、くいだおれ人形、ふぐちょうちんなど多数の大阪を感じさせる名物のシンボルがありますが、「合格祈願」でも大阪ならではの迫力のある「難波八阪神社」を紹介します。
この「難波八阪神社」は勝負の神と言われる牛頭天王(ごずてんのう)を祀っています。その他にも牛頭天王と深い関わりのある素盞嗚命(すさのおのみこと)などが祀られています。受験という勝負に勝つ!というパワーをいただきたい時は、この「難波八阪神社」がオススメです。
大きく開いた口は勝利を呼び込み、さらに邪気を飲み込むと言われています。勝運を招く巨大な獅子頭は、まさに大坂商人らしく勝運=商運とも受け止めて、非常に人気があります。
- 住所 大阪市浪速区元町2-9-19
- アクセス 大阪メトロ 御堂筋線、四つ橋線「なんば駅」または「大国町駅」下車
- tel:06-6641-1149
どの神社も、鳥居から社殿までの間に大抵は二頭の狛犬(こまいぬ)が左右にいます。狛犬は、神様の前にいて邪気を払う役目を担っています。
「難波八坂神社」の獅子頭は狛犬が巨大化したようなものと思えば、邪気や迷いを飛ばし、勝ち運やツキを呼び込む大きな強い味方と思えてきます。学問の神様のいる天満宮や天神社に「合格祈願」に行くことと、難波に限らず八坂神社や氷川神社に「勝負に勝ちたい」というお願いに行くことは、内容としては別物かも知れませんが、受験の結果は合格という点では一緒ですね。
難波八坂神社の狛犬
落ちない、滑らない、置くとパス、文殊の知恵!様々なご利益
次は、大きな神社ではありませんが、受験で「落ちない」「滑らない」「置くとパス」という縁起のいい神社を紹介します。
<釣石神社>
宮城県の石巻市にある「釣石神社」は、家内安全、身体健康、夫婦円満などの御利益がある神社ですが、特に「合格祈願」で有名です。
社名の由来となった巨石は、幾多の災害でもビクともしないことから「落ちそうで落ちない受験の神」として知られ、多くの受験者が「釣石神社」へ参拝に訪れています。
- 住所 石巻市北上町十三浜字菖蒲田305番地
- アクセス 三陸自動車道河北ICから25分(北上川左岸、国道398号線から見える釣石橋の「赤色の欄干」が目印です)
- tel:0225-25-6345
東北には日本の国ができる以前から巨石や巨木を神として崇拝する自然信仰の風習があり、その一つが「釣石神社」です。元々から大きな石を祀っていますが、主祭神は天児屋根命(あめのこやねのみこと)という占いの神です。
青森県に猛烈な台風が通過した時、それでも木から落ちなかったリンゴが「落ちないリンゴ」として有名になったことがあります。やはり、受験生にとっては「落ちない」ものの奇跡やエネルギーを分けてもらって、自分も落ちずに合格したい、という気持ちがあるのは理解できます。
<胡桃火神社>
1964年、石川県と富山県の県境の胡桃(くるみ)地区で大きな地滑りが発生しました。しかし、幸運にも大きな土砂は「胡桃火神社」(くるみのひ神社)だけは避けるように流れていき、神社は無事でした。
この地滑りの被害に遭わなかったため、富山県氷見(ひみ)市の「胡桃火神社」は「滑らない」にあやかり、受験生がお参りするようになりました。
- 住所 富山県氷見市胡桃1107
- アクセス 周辺にバス停などがありません。
- 電話 現在、電話番号は不明
現在、この胡桃地区は山奥のため、住民が6人しかいないとのことで、お守りも現在は置いていません。以前は住民が総出で滑らないお守りを製作してくださっていたそうです。
「それでも、ぜひお参りだけでも!」という人は、一度は行ってみる価値があるかも知れません。
<入谷八幡神社>
宮城県には「釣石神社」だけでなく、縁起物のタコを置くと試験にパスする、という面白い「オクトパス君」がいる「入谷八幡神社」も見逃せません。
「多幸」にかけてタコをキャラクターとして採用し、タコのおみくじや置き物などがこの「入谷八幡神社」にあります。受験勉強の机にタコ(多幸)を「置くと受験でパス」からオクトパス君が注目されましたが、このキャラクターそのものがカワイイので受験と関係なしにお土産で買っていく参拝者も多数いるようです。
- 住所 宮城県本吉郡南三陸町入谷字水口沢243番地
- アクセス 三滝堂IC降りて志津川方面約10分、または志津川IC降りて登米方面約6分
- tel:022-646-5347
この「入谷八幡神社」宮城県の南三陸付近にあります。宮城県へ旅行に行く際は、先ほど紹介しました「釣石神社」と「入谷八幡神社」の両方へお参りに行ければ、さらにいいですね。
<日本三大文殊>
続いて、熱田神社でもご紹介した「上知我麻神社」のように、文殊の知恵を授かることができる所をご紹介します。こちらは、神社ではなく寺院ですので、少し違います。文殊の神様ではなく、「文殊菩薩」の仏様です。
「三人よれば文殊の知恵」ということわざがあります。三人に限らずとも、数名が集まって考えればいいアイディアも浮かぶ、という意味ですが、この「文殊」は「文殊菩薩」のことです。
時代劇などにも寺社奉行というお役人が登場しますが、日本では飛鳥〜奈良時代に仏教が入り、平安時代には神社仏閣が混在して神仏習合という神道と仏教をあまり区別しない考え方が広まりました。
「お寺にもお守りがあるの!?」と思うかも知れませんが、この「文殊菩薩」がいる大きな寺院では、神社と同様に「合格のお守り」があります。
京都の「知恩寺」、奈良の「安倍文殊院」、山形の「大聖寺」の三つの寺院が「文殊菩薩のお寺」として特に有名で、この三つの寺院を「日本三大文殊」と言います。ちなみに、修学旅行などで訪れる京都の「知恩院」は、ここで紹介している「知恩寺」とは別の寺院です。
合格祈願の参拝の作法を紹介!
それでは、「合格祈願」の作法を簡単に紹介します。
全国の神社の全てが同じ作法ではありませんが、大事なことは神様に無礼な振る舞いをしないことです。当然に、神職の方に怒られるような行為は厳禁です。
一般的には、以下のような手順を踏みます。
- ①鳥居を通る前に、左端または右端で止まり、軽く一礼をします。
- ②鳥居から社殿までの通路を参道といいますが、中央を歩かずに左端または右端を歩きます。
- ③手水舎(ちょうずや・てみずや)の水で手と口を洗って身と心を清めます。(現在はコロナ禍のためこの儀礼は省略されています。)
- ④社殿の前に立ち、軽く一礼します。
- ⑤お賽銭を入れて、鈴を鳴らします。(コロナ禍のため鈴を鳴らせない場合もあります。)
- ⑥二礼してから二拍手します。
- ⑦手を合わせて神様にお願いします。
- ⑧手を下ろし、一礼します。
以上の作法が一般的です。出雲大社系の神社は二礼、四拍、一礼など違う手順の神社もありますので、心配な場合は自分の行く神社に問い合わせれば親切に教えていただけるので心配は要りません。
心を込めて祈願すれば、近場の神社で十分に願いは通じます。あとは自分の気持に従い、御守りや絵馬などを社務所で授かりましょう。
- 住所 札幌市中央区宮ケ丘474
- アクセス 札幌市営地下鉄東西線円山公園駅またはJR北海道バス「円14」「円15」路線で「神宮前」下車。
- tel:011-611-0261
まとめ
今回は、合格祈願の御守りと御利益がある神社について、全国的に有名な神社(善光寺の寺院なども含む)を紹介しました。
ちなみに、最も「合格祈願」に行く受験生の割合が高いのが徳島県で約69%です。次いで広島県が約65%、福岡県が約64%です。逆に最も行かないのは沖縄県で約46%でした。それでも半数近くは「合格祈願」へ訪れるので、だいたい半数から3分の2くらいの受験生は神様にお願いしているということになります。
大切なのは、ただお願いするだけでなく、日頃の何気ない生活が非常に恵まれていることに感謝することです。たとえ嫌いな受験勉強だとしても、飢餓や戦争に苦しむ国ではなく平和な日本で進学の機会を与えられていることに感謝し、あとは「人事を尽くして天命を待つ」の心境でベストを尽くしましょう。