職場において、出身大学は出世に影響があるのでしょうか。
もし、大人になって就職し、どこかの会社で働いている自分を思い浮かべる時、自分はどんな仕事に就いているだろうかと考えたことはありませんか。そして、十年後、二十年後にどこかの会社で働いているなら、どんな役職になっていると想像しますか。
そこから現実に戻ると、「そうだ、自分もいつかは働くんだ。それなら、就職先のことも考えて大学受験しないといけないな」という話になります。
では、実際に志望校を決めようと言われても、「どうしようかな、どこを受けたらいいのかな」と考えてしまう高校生が多数います。むしろ高校入学の時点で自分が受験する大学を決めている人のほうが少ないかも知れません。
そこで、志望校、受験校を選ぶ目安の一つとして「いい会社に就職できるか、そしてその後も出世できるか」ということが挙がってきます。いくら就職できたとしても、出身校が影響して伸び悩み、なかなか上手く行かないと知っていたら、わざわざその大学に行きたいとは思わなくなるかも知れません。
それでは「出身大学は出世にどこまで影響するのか」について考えてみます。
出身大学は出世にどこまで影響するのか?
「出身大学は出世に影響するのか?」と聞かれたら「はい、影響します」と答える人が一定数います。実は、そう答える人たちの中に人事関係者や新人採用担当者が多く含まれています。
確かに、就職活動で出身校を重視する会社は多数あると言われていますが、出世できるかということになると、あまり確証はなさそうに見える人も多数いるのではないでしょうか。
ところが、平社員から主任、係長、課長補佐、課長、次長、部長、本部長、常務、専務、副社長、社長、会長・・・と出世していく人たちを見ると、どこか出身校に偏りが感じられる会社があり、しかも偶然にそうなっているのではない、ということがわかってきます。
現実として、ある一定の水準を満たす大学の出身者ばかりが上の役職になればなるほど多くなる、という結果になっています。つまり、出身大学と出世は関係があり、影響しているということです。
出身大学と出世はなぜ関係するか
では、出身大学と出世という一見すると直結していないものが、なぜ関係してくるのでしょうか。
重要な「学閥」の絆
多数の大手企業で伝統的に高学歴の出身者が多い、国家公務員でも高学歴の人が上位の役職を独占している、という事例は明らかに偶然ではないと言えます。これは、戦後の第一次ベビーブームである団塊の世代(現在で70歳代前半くらい)が活躍している頃から顕著に見られます。
中には役職者は東京大学卒業が大多数だったり、慶應義塾大学の出身者が多く並んでいる、など特定の優秀な大学に集中する大手企業やお役所があります。
その特定の世代で特定の優秀な大学の人たちが定年で去っても、それは一時的な現象ではなく、今度はその子どもたちの世代である団塊の世代ジュニアと呼ばれる50歳くらいの世代の東京大学卒業や慶應義塾大学出身の人たちが大手企業やお役所の重要な地位に就任し始めています。
これは、自営業の人が親子で後を継ぐ形とは違います。親類であるかどうかとは別の基準なり条件なりで高学歴の人たちが出世しているワケです。その基準や条件が「難関の大学の出身者」になっているのです。この場合、その役職に就いている人の所属している「学閥」つまり「同じ大学の出身者」が優遇される可能性が高いと言えます。
なぜなら、「同窓生」というだけでも先輩と後輩の関係で強い絆となりやすいからです。そうなると、コミュニケーションを取りやすく、連絡なども円滑に進められます。
また、上司と部下の関係だけでなく心情的に助けよう、協力しようという気持ちがあるので多少の無理を聞いてもらいやすいという思惑が働く傾向もあります。
学習能力は仕事の能力の一部
この高学歴の人たちは、「頭がいいから仕事もよくできる」という点では理解できます。
また、勉強して難関の大学に合格したのは、ただ地頭がよいだけではなく、決めた学習計画をサボらずに実行する能力がある、間違えないよう注意力が高く確認点検する癖がついているから失敗の確率が少ない、など幾つもの点で学習能力と仕事の能力で共通する部分があります。
このように、学校で勉強することと仕事を覚えることは、似た所があります。つまり「難易度の高い学歴を持つ人は、仕事ができるから出世もできる」ということになります。
この他に、コミュニケーション能力が高く、目の前の相手がどう考えているか、何を望んでいるかを察知する能力にも秀でている所が挙げられます。いずれも、相手のことを「よく考える」ということができる人で、それをできるのは思考力や洞察力、判断力が高いということにつながります。
もしも学歴が高いといえない場合、上記のような能力を穴埋めする何らかの評価軸でもない限りは、簡単には出世しにくいことになります。
まず一定の学力水準の人を上の地位に抜擢しておくのが安全で賢明な起用法である、と考えている大手企業や国家公務員の中では、学歴の高いとはいえない人は仕事の能力を高めるしかありません。
「実力社会」ではないの!?
近年は、「実力社会」と言われています。しかしながら、その意味は、仕事の実力が上記のような難易度の高い大学出身の人よりも、さらに上回るくらいの仕事の能力があるなら役職者に登用してみてもよい、という意味であることが多いです。
例えば、上記の「学閥」のような強い絆の先輩後輩コンビの間に、違う出身大学の自分が中に割って入って、同じくらいの強力な人間関係を構築するくらいの高いコミュニケーション能力や高い信頼度を持っていれば、実力を評価されて出世できるかも知れません。
あるいは、高学歴の人たちにも負けない様々な業務能力が非常に高い場合も出世は有り得なくはないと言えます。高学歴な人たちと同じように事前に十分な準備や段取りをして、よく考えて失敗しないよう業務を遂行し、さらに確実に点検などチェックを怠らないなどの実行能力や思考力、判断力、集中力を発揮できる人なら出世の可能性もなくはありません。
ただ、学校の勉強とは違う面もあります。それは、学校で問題を解いたり覚えたりする以外の、結果が予測しにくい状況下でも何らかの成果を出すような技量が求められます。社会人や企業人として、正解が見えない未知数の場で最良の着地点を見出していける知力や分析力、創造力などを身につけることが必要です。
これらは高学歴の人にも、そうでない人にも、磨き上げるチャンスはあります。もし高学歴ではない人でも全社員の中で最大の努力と工夫をすれば、総合的な評価において高学歴の人たちを逆転できるチャンスがあることも否定はできなくなるかも知れません。
まとめ
今回は「出身大学は出世にどこまで影響するのか」について考えてみました。そして、「出身大学は大企業や国家公務員などの職場で出世にも影響する」ことがわかりました。
難易度の高い大学を出ている人は、単に就職に有利というだけではなく、「学閥」など同窓生が多く先輩後輩の協力関係が良好であることや、難関大学を突破するだけの勤勉な姿勢を持っているため出世しやすいのが実状です。
同時に、そういう難関大学を出身校としていない人でも、割と新しい企業であれば大変な努力と相当な工夫をし続けることで決して追いつけないこともない、ということも言えます。
これらを考えれば、自分がこれから受験校や進路を考え始める段階で、「出身大学は出世にも影響する」ということは知っておくべき情報です。自分のためにもこの実状を知ったなら受験勉強を開始しましょう。