「国立大学や公立大学は、優秀な学生が行くところ」と昔から言われています。
現代でも国公立大学には優秀な学生ばかりがいるのでしょうか。あるいは、優秀な学生はみんな国公立大学へと進学するのでしょうか。
今回は、そんな国公立大学は全国的に見て、また社会一般から見て、いまだに大学として上流階級にいるのか、をテーマに考えていきます。
はたして国公立大学のヒエラルキーとはどんなものでしょうか? マナビバが調査し、解説します!
千葉大学
国公立大学の歴史とヒエラルキー
<国立大学の創立>
日本では、1886年(明治19年)に現在の東京大学である東京帝国大学が設立されました。
その後は19世紀終盤から20世紀前半までの53年あまりで当時の日本に帝国大学の名のつく学校が9校設立され、現在はその中の7校が「旧帝国大学」として残っています。
さらに、1949年(昭和24年)の国立学校設置法により、旧帝国大学、旧制大学、高等師範学校、旧制高等学校、旧制専門学校、師範学校などを統合し、新たに国立大学が設置されました。
振り返ると日本の国公立大学は、明治維新から日本の近代化に欠かせぬ組織として国が主導して設立していき、帝国大学を筆頭にエリートを養成してきました。
また第二次大戦後の戦後社会では、日本の高度成長や先進工業国への仲間入りを目指す上で非常に重要な存在となり、国が各都道府県に1校以上を基準に設立したのが国公立大学です。
このような観点から、国公立大学は国の発展とともにあった、という見方ができます。国のエリート養成機関と考えれば、学校という大きなピラミッドの最上位に位置しているのが国公立大学、という説明も大袈裟ではありません。
<国公立大学って偉いの!?>
単刀直入に、国公立大学は、エライのでしょうか?
実際に世の中には国公立大学卒業の人に対して、「国公立大学に行ったなんて、あなた、エライねぇ」という言葉をかけることも少なくありません。
なぜ、国公立大学はそのような見方をされるのでしょうか。
これには、大きく三つの理由があります。
- 国家主導の組織や団体は格が高い
- 入試問題が難しい学校が多い
- 学費が格安で、進学すれば親孝行になる
以上の三点です。では、順に見ていきましょう。
まず、「国家主導の組織や団体は格が高い 」という理由ですが、これには理由らしき理由はないのが本当のところです。
明治以来ずっと官製のもの(国が造ったもの)はエライ、という考えがあり、それが現代にも続いている、ということです。
その一方で、民間のものは、国のものよりも大したことはない、というおよそ根拠に乏しい見方が依然と存在しています。
これは、大学だけでなく就職でも言えます。国家公務員などはエリートと見られ、「お役人さま」という時代劇のような呼び方まで残っています。
民間の銀行なども堅い感じはしますが、公務員への就職よりはそれほど評価されない面があります。
実際に本当のところはどちらが上かという問題ではなく、社会通年の範囲として公務員や国の機関は格上、という感覚といえます。
続いて、「入試問題が難しい学校が多い」という理由ですが、これは国立大学そのものが長らく難関大学であり、私立大学は往々にして易しめの傾向が明治以来続いてきたことが要因です。
かつては旧帝国大学と東京工業大学、一橋大学、東京外国語大学などは慶應義塾大学や早稲田大学より難関であり、それらの国立大学の受験生が早慶もついでに受けて合格できるような時代がありました。
地方では、戦後に米軍占領下で各都道府県に1校ずつ国立大学を設置することが決まり、国公立大学は急激に増加します。特急列車が停車する駅の数とあまり変わらない多さから「駅弁大学」との蔑称が生まれたほどです。
それでも、その県での最難関大学は国立大学で、ほぼ全ての国公立大学は中堅クラスの私立大学よりかなり上位にいました。国立は難関で優秀、私立は入学が簡単で遊んで卒業できる、というイメージが出来てしまったのです。
最後に、「学費が格安で親孝行になる」という理由ですが、これは説明不要ですね。まして戦後しばらくは、国立と私立の学費の差が大きく、国公立大学の授業料は私立大学の5分の1程度でした。
1980年代あたりも国公立大学の授業料は私立大学の3分の1程度で、一般家庭の経済事情を考えると、わざわざ私立大学に進学する特別な理由でもない限りは国公立大学に進学するのが当たり前という風潮でした。
以上のような歴史的な経緯から国公立大学という存在は、国の機関の一部であること、難関で優秀な人材が集まること、費用面でも大いに助かること、などで私立大学よりエライ、と言われています。
宮城教育大学
国公立大学の難易度は?
国公立大学は、国立大学が86校、公立大学が100校で、計186校あります。
一方、私立大学は590校もあります。
2024年の時点で日本国内の大学は総計776校ということになります。
今回は国公立大学の難易度についてご紹介します。
<国公立大学・文理総合ベスト30校>
大 学 名 | 所 在 地 | 全学部の平均偏差値 |
東京大学 | 東京都 | 73 |
京都大学 | 京都府 | 72 |
一橋大学 | 東京都 | 70 |
大阪大学 | 大阪府 | 69 |
東京工業大学 | 東京都 | 67.5 |
東北大学 | 宮城県 | 67 |
九州大学 | 福岡県 | 67 |
神戸大学 | 兵庫県 | 67 |
名古屋大学 | 愛知県 | 67 |
東京外国語大学 | 東京都 | 66 |
東京農工大学 | 東京都 | 66 |
北海道大学 | 北海道 | 65 |
横浜国立大学 | 神奈川 | 65 |
筑波大学 | 茨城県 | 64.5 |
東京藝術大学 | 東京都 | 63 |
お茶の水女子大学 | 東京都 | 62.5 |
千葉大学 | 千葉県 | 62.5 |
大阪公立大学 | 大阪府 | 62 |
横浜市立大学 | 神奈川 | 62 |
広島大学 | 広島県 | 61.5 |
金沢大学 | 石川県 | 61.5 |
東京学芸大学 | 東京都 | 61 |
京都府立大学 | 京都府 | 61 |
東京都立大学 | 東京都 | 60.5 |
国際教養大学 | 秋田県 | 60.5 |
信州大学 | 長野県 | 60 |
電気通信大学 | 東京都 | 60 |
岡山大学 | 岡山県 | 60 |
奈良女子大学 | 奈良県 | 58 |
(医学部のみの単科大学は除く)
以上の順位となりました。
旧帝国大学、東京一工などハイレベルの大学群がこぞってランクインしています。
ではこの反対に、難易度の低い国公立大学は、どのくらいの学力なのでしょうか。
<国公立大学・文理総合ワースト30校>
大 学 名 | 所 在 地 | 全学部の平均偏差値 |
沖縄県立芸術大学 | 沖縄県 | 46.5 |
琉球大学 | 沖縄県 | 46.5 |
秋田公立美術大学 | 秋田県 | 46.5 |
周南公立大学 | 山口県 | 46 |
長崎県立大学 | 長崎県 | 46 |
茨城大学 | 茨城県 | 46 |
高知工科大学 | 高知県 | 46 |
山形県立保健医大学 | 山形県 | 46 |
高知工科大学 | 高知県 | 46 |
宮城教育大学 | 宮城県 | 46 |
山形県立米沢栄養大学 | 山形県 | 46 |
北九州市立大学 | 福岡県 | 45.5 |
公立鳥取環境大学 | 鳥取県 | 45 |
宮城大学 | 宮城県 | 45 |
会津大学 | 福島県 | 44 |
旭川市立大学 | 北海道 | 43.5 |
富山県立大学 | 富山県 | 43.5 |
前橋工科大学 | 群馬県 | 43.5 |
公立はこだて未来大学 | 北海道 | 43.5 |
青森公立大学 | 青森県 | 43.5 |
名桜大学 | 沖縄県 | 43 |
長岡技術科学大学 | 新潟県 | 43 |
東北農林専門職大学 | 山形県 | 43 |
三条市立大学 | 新潟県 | 42.5 |
秋田県立大学 | 秋田県 | 40.5 |
釧路公立大学 | 北海道 | 40 |
北見工業大学 | 北海道 | 39.5 |
室蘭工業大学 | 北海道 | 39 |
徳山大学 | 山口県 | 36 |
筑波技術大学 | 茨城県 | 35 |
ご覧のように、所在地が北海道、東北、北陸、九州、そして北関東にある大学が目立ちます。また公立大学が多いようです。
この二つの表からわかるように、国公立大学の難易度には大きな差があり、一口に国公立大学といっても非常に難易度の高い大学から容易に合格できそうな大学までバラエティに富んでいます。
国公立大学の入試の特徴は、
- 共通テストを受ける
- 試験の科目数が多い
という二点が挙がります。
単純に考えると、試験の科目数が多い国公立大学を受験するのは、受験生にとっては負担の大きい作業となります。
国公立大学を目指す人は、早い段階で5科目以上で試験に臨むことを考えて対策を始めましょう。
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京都工芸繊維大学
私立大学と国公立大学、どっちを選ぶ!?
国公立大学を受ける人は、試験の科目数が多くなります。逆に、私立大学を受ける人は、少ない科目数で受験します。
したがって、同じような偏差値でも国公立大学と私立大学を比べると、1科目あたりの難しさで言えば私立大学のほうがやや難しいと見られています。
その点で考えると、難関の私立大学は試験の科目数が少なくても試験問題が難しいため解けない問題も出てきます。
このことから、単に偏差値だけではどの大学が上か下かはなかなか決められません。
一方で、学力の低い大学では、そもそも勉強を苦手とする生徒が集まって受験をします。そういう受験生にとっては試験の科目数が多いと、それだけでも大変な試験になります。
そう考えると、難関大学では試験の科目数が多いか少ないかで有利不利が決まるとは言い切れませんが、比較的難易度の低い大学においては試験の科目数が少ない方が受験しやすいと言えます。
また、地方では国公立大学の学力が私立大学を上回っていることが大半です。ライバルとなりそうな私立大学が少ないため、元からある国立大学が地元の最難関校として君臨し、そこに後発の公立大学が続く、という構図になりがちです。
このような状況を見ると、やはり地方では学力が高い国立大学に優秀な学生が集まり、そこに届かない受験生は公立大学を狙うようになります。このことから、公立大学には国立大学よりも難易度が易しめの学校が多くなる傾向にあります。
そして、その国公立大学に学力が届かない受験生は私立大学の中から自分の希望に合う大学を探すことになります。
ただし、それは地方においての話です。首都圏は私立の難関大学を目指して私立中学へ入学時から私立大学一本の6カ年計画で学習を進めてきた受験生がゴマンといます。
しかも私立中学の受験のメインは算数と国語であり、文系では国語も鍛えられている受験生が私立大学の国語・英語・社会の3科目で勝負してきます。
これに対して地方では英語と数学に比重を置いて国語の学習をほぼ放置してきた文系の受験生が多く、この首都圏での私立大学文系で対決するのはかなり不利です。
首都圏では、私立大学の人気が1980年代から上昇し、国立の最上位校と私立の最上位校の学力差が縮まりました。
かつてのように「国公立大学だから私立大学よりも上」という単純な決めつけはできません。 ただし、国立に比べて私立有名大学は大規模になりすぎて大学側が学生一人ひとりをキメ細かく管理しにくい状況にあるのは確かです。
大きな私立大学は「マスプロ教育」と呼ばれ、学業に手を抜きやすい傾向が今も残っていると言われています。これも含めて国公立の出身者は私立の出身者より有能というイメージを持たれています。
しかしながら、それが大学入学時の学力差にはなりません。現代では私立大学の入試で落ちても国立大学には受かった、というケースも珍しくありません。
これらのことを踏まえて、国公立大学か私立大学か、また地方の大学を無難に受けるのか首都圏、関西圏の強力な私立大学に挑むのか、よく考えて準備する必要があります。
公立鳥取環境大学
就職でも国公立大学は優位だ!
大学への入学時では、難易度、偏差値など学力について見られることが大半です。
しかし大学の卒業時は、どこに就職できたかについて問われます。
<有名企業就職ランキング>
順位 | 大学名 | 設立/所在地 | 有名企業就職率 | 有名企業への就職人数 |
---|---|---|---|---|
1位 | 一橋大学 | 国立/東京 | 55.5% | 482人 |
2位 | 東京工業大学 | 国立/東京 | 54.6% | 970人 |
3位 | 国際教養大学 | 公立/秋田 | 44.6% | 75人 |
4位 | 東京理科大学 | 私立/東京 | 41.4% | 1149人 |
5位 | 名古屋大学 | 国立/愛知 | 40.0% | 843人 |
6位 | 電気通信大学 | 国立/東京 | 39.8% | 304人 |
7位 | 名古屋工業大学 | 国立/愛知 | 39.7% | 393人 |
8位 | 大阪大学 | 国立/大阪 | 38.9% | 1511人 |
9位 | 九州工業大学 | 国立/福岡 | 38.3% | 375人 |
10位 | 豊田工業大学 | 私立/愛知 | 37.8% | 28人 |
上記のように、有名企業就職率という「率」で見ると、人数だけではなくその学校全体で就職活動に良い結果が出ているのがわかります。
ランキング上位30校のうち20校が国公立大学で、いかに国公立大学が企業から評価されているかがわかります。すなわち就職にも強いということがわかります。
<国家公務員試験合格者数トップ30>
大 学 名 | 設 立 | 合格者数 |
---|---|---|
東京大学 | 国立 | 217 |
京都大学 | 国立 | 130 |
北海道大学 | 国立 | 111 |
早稲田大学 | 私立 | 84 |
東北大学 | 国立 | 75 |
慶應義塾大学 | 私立 | 71 |
立命館大学 | 私立 | 63 |
岡山大学 | 国立 | 61 |
中央大学 | 私立 | 49 |
千葉大学 | 国立 | 47 |
大阪大学 | 国立 | 46 |
名古屋大学 | 国立 | 45 |
東京工業大学 | 国立 | 44 |
広島大学 | 国立 | 44 |
九州大学 | 国立 | 44 |
明治大学 | 私立 | 34 |
神戸大学 | 国立 | 30 |
東京農工大学 | 国立 | 29 |
筑波大学 | 国立 | 27 |
新潟大学 | 国立 | 27 |
東京理科大学 | 私立 | 26 |
法政大学 | 私立 | 24 |
一橋大学 | 国立 | 23 |
横浜国立大学 | 国立 | 22 |
大阪公立大学 | 公立 | 21 |
東京都立大学 | 公立 | 20 |
同志社大学 | 私立 | 20 |
日本大学 | 私立 | 18 |
岩手大学 | 国立 | 17 |
東京海洋大学 | 国立 | 15 |
東京農業大学 | 私立 | 15 |
国家公務員の合格者も上位30校のうち国公立大学が21校を占めています。
共通テストや二次試験などでも多くの科目を勉強している国公立大学の学生は、公務員試験のような幅広い分野から万遍なく出題されて速いスピードで解いていくタイプの試験に強いようです。
国公立大学に合格できるような対応力を持つ人は、それだけ公務員になれる可能性が高いと言えます。受験対策の上でも私立大学一本の人より対策を立てやすい傾向があります。
岡山大学
まとめ
今回は、「国公立大学のヒエラルキーとは?マナビバ調査!」というテーマで書き進めました。
国公立大学は、
- 国家主導の組織や団体の一部なので格が高い
- 入試問題が難しい学校が多く、難関である
- 学費が格安で親孝行になるので社会的にも評価される
以上の三点で国公立大学はヒエラルキーが高いと言えます。
また、就職においても、
- 有名企業就職率が高い
- 公務員試験の合格者が多い
という結果を出しています。この点でも大学全体の中でヒエラルキーが高いと言えます。
このように、国公立大学は入試でも就職でも高い位置づけにある、と見られています。
ただし、最難関の旧帝国大学から、地方の定員割れする公立大学まで、全て国公立大学です。あまりに一括りにして国公立大学と呼ぶのにも、随分と格差があります。
国公立大学の特徴とヒエラルキーを把握し、受験に挑むかを考えていきましょう。