大学の医学部は、入試において難易度がとても高く、また入学するにも学費が高額なことで知られています。
今回はその中で私立大学の医学部について、ヒエラルキーがどうなっているかを考えてみることにします。
国公立大学の医学部にヒエラルキーがあるように、私立大学の医学部にもヒエラルキーがあるのでしょうか?
また、難易度はどれくらいなのでしょうか。
「私立大学の医学部のヒエラルキー」について、マナビバが調査、解説します!
日本医科大学
私立大学医学部のヒエラルキーは?
私立大学の医学部では、他の学部と同様に難易度で見るヒエラルキーと、国の政策も関連してどの年代に設立されたかという歴史的・伝統的な観点で見るヒエラルキーがあります。
<難易度で見るヒエラルキー>
順位 | 医学部のある大学 | 偏差値 |
---|---|---|
1位 | 慶應義塾大学 | 73.5 |
2位 | 東京慈恵会医科大学 | 72 |
3位 | 順天堂大学 | 71.5 |
3位 | 日本医科大学 | 71.5 |
5位 | 自治医科大学 | 70.5 |
5位 | 産業医科大学 | 70.5 |
5位 | 大阪医科薬科大学 | 70.5 |
8位 | 関西医科大学 | 70. |
8位 | 昭和大学 | 70 |
10位 | 東京医科大学 | 69 |
10位 | 東邦大学 | 69 |
10位 | 東北医科薬科大学 | 69 |
13位 | 日本大学 | 68.5 |
14位 | 国際医療福祉大学 | 68 |
14位 | 東海大学 | 68 |
16位 | 久留米大学 | 66 |
16位 | 藤田医科大学 | 66 |
16位 | 愛知医科大学 | 66 |
19位 | 近畿大学 | 64.5 |
19位 | 兵庫医科大学 | 64.5 |
19位 | 帝京大学 | 64.5 |
22位 | 杏林大学 | 64 |
22位 | 金沢医科大学 | 64 |
22位 | 福岡大学 | 64 |
22位 | 岩手医科大学 | 64 |
22位 | 北里大学 | 64 |
27位 | 東京女子医科大学 | 63 |
27位 | 聖マリアンナ医科大学 | 63 |
27位 | 埼玉医科大学 | 63 |
27位 | 獨協医科大学 | 63 |
31位 | 川崎医科大学 | 61.5 |
上記の偏差値表を見ると、私立大学医学部の入試の難易度は非常に高いことがわかります。
特に慶應義塾大学を筆頭に、慈恵会医科大学、順天堂大学、日本医科大学は難関中の難関です。
「私立大学の医学部って、偏差値が低いってホント?」という疑問ですが、まず偏差値は決して低くありません。他の学部と比べてもずっと高いことがわかります。
では、国公立大学の医学部と比べるとどれくらい違うのでしょうか。
最難関の東京大学理Ⅲの偏差値は75以上にランクされています。それに次ぐランクの京都大学医学部は72〜73で、偏差値では慶應義塾大学医学部と同じくらいです。
一方で、国公立大学の医学部の中で偏差値上では高くないとされている旭川医科大学や福島県立医科大学、琉球大学医学部などは、偏差値が62.5となっています。
それに対して私立大学医学部で最も偏差値が低いとされている岡山県の川崎医科大学は61.5であり、その次に偏差値が低いとされている埼玉医科大学や獨協医科大学は63なので、国公立大学の医学部と大差ありません。
受験の科目数やテスト形式が違う点を除いて入試問題の難しさでは私立大学も簡単ではないということです。
慈恵医科大学
<歴史と伝統で見るヒエラルキー>
医学部の大学群 | 大学群の概要 |
---|---|
東京大学・京都大学・大阪大学 名古屋大学・東北大学・九州大学 北海道大学 | 旧帝国大学の医学部 略称は「旧帝医」 1886年~1939年に設立 |
慶應義塾大学・東京慈恵会医科大学 日本医科大学 | 私立で旧制の医科大学 「私立医大御三家」とも呼ばれる 1920年~1926年に設立 |
千葉大学・岡山大学・金沢大学 新潟大学・熊本大学 長崎大学・(京都府立医科大学) | 旧制の六医科大学 略称は「旧六」 1922年~1923年に設立 |
東京医科歯科大学・広島大学・鹿児島大学 弘前大学・群馬大学・信州大学・鳥取大学 徳島大学 | 新制の八医科大学 略称は「新八」 1946年~1948年に設立 |
神戸大学・三重大学・岐阜大学・山口大学 福島県立医科大学・和歌山県立医科大学 名古屋市立大学・奈良県立医科大学 札幌医科大学・横浜市立大学・大阪公立大学 | 旧設の公立医科大学 「旧設」とも呼ばれる 1947年~1950年に設立 |
順天堂大学・昭和大学・東京医科大学 日本大学医学部・大阪医科大学・久留米大学 岩手医科大学・関西医科大学・東邦大学 東京女子医科大学 | 旧設の私立医科大学 1942年~1950年 |
秋田大学・山形大学・筑波大学・愛媛大学 浜松医科大学・滋賀医科大学・富山大学 島根大学・佐賀大学・大分大学・高知大学 福井大学・山梨大学・香川大学・宮崎大学 旭川医科大学・琉球大学・(防衛医科大学) | 新設医科大学・国公立 1970年代に設立 |
杏林大学・北里大学・川崎医科大学・帝京大学 聖マリアンナ医科大学・藤田保健衛生大学 愛知医科大学・埼玉医科大学 金沢医科大学・兵庫医科大学・獨協医科大学 福岡大学・東海大学・近畿大学 | 新設医科大学・私立 1970年代に設立 |
東北医科薬科大学・国際医療福祉大学 | 新設医科大学 2016年以降に設立 |
上記の表の太字が私立大学の医学部です。
以上のように医学部の大学群が幾つもあり、それがヒエラルキーの各階層を形成するような様相です。
国民の生命と健康を守るという国の使命を考えれば、国立大学だけでなく私立大学の医学部も国家が関与して設立されていったのは理解できます。
やはり設立年代が昔の大学ほど長い研究実績があり、その点で格上の扱いになるようです。
旧帝国大学の医学部はさすがに別格ですが、出身大学は卒業後・就業後のキャリア形成にも少なからず影響があるとも言われています。
ただし、医学部の伝統的序列は絶対的なものではありません。
順天堂大学
私立大学医学部の特徴
<難易度はマチマチ>
私立大学の医学部は一次試験で英語、数学に理科2科目のうち2〜4科目で出題し、二次試験で面接と小論文、という学校が多くあります。
このように、私立大学の医学部は3教科で受験できる大学が多くあります。あとは、面接か、面接+小論文か、というところです。その点に限っては、私立大学の医学部は受験しやすいかも知れません。
その一方で、二次試験の出題レベルは国立大学の医学部のほうが私立大学の医学部より難しいと言われています。
国公立大学の医学部では、前期日程の二次試験に英語、数学、理科の3教科を出題するのが主流です。また後期日程の二次試験で英語の長文を読んで1000文字程度の意見を日本語で書く小論文試験、などを課す学校もあります。
このように難しい国公立大学の医学部と比べると、大体の私立大学の医学部はマークシート式の出題が多いようです。そのため受験対策を立てやすいと言われています。
ただし、慶應義塾大学や東京慈恵会医科大学、日本医科大学などは記述式の出題が多く難関大の中でも特に難関です。
科目の数が少ない大学もありますが、国際医療福祉大学や東京医科大学は5教科7科目であるなど、マチマチです。それぞれの大学ごとの対策が必要になります。
私立大学の医学部を受験する場合、共通テストを受ける必要がなく、大学ごとの個別試験のみを受ければ大丈夫、というところは近年も変わりません。
この個別試験は基本的に数学・英語・理科2科目ですが、さらに小論文を課す大学もあります。
ただし、今後の医療界の学術研究レベルはさらに高まると考えられます。例えば遺伝子レベルの研究を応用して再生医療が発展します。ガンやHIVの治療も徐々に進んでいくと思われます。
このような医学の進歩についていける学習と研究の能力が求められます。仮に少子化が進んで受験倍率が減ったとしても、医学部の試験が簡単になることはなかなか考えられません。
また、現在は医学部の志望者が少しずつ増えていることもあり、偏差値は低くはならないと予想されます。
<学費が高い>
私立大学医学部の学費を、6年間の総計が安い順に見ていきましょう。
順位 | 大学名 | 学費 | 諸経費について |
---|---|---|---|
1 | 国際医療 福祉大学 | ¥18,500,000 | ・教育後援会年会費、海外臨床実習積立金は除く。 ・教科書代、臨床実習に関わる費用、 国家試験対策に関わる費用、同窓会費等は除く。 |
2 | 順天堂大学 | ¥20,800,000 | ・寮費・諸会費・教材費は除く。 |
3 | 関西医科大学 | ¥21,440,000 | |
4 | 日本医科大学 | ¥22,000,000 | ・諸経費を除く。 |
5 | 慶應義塾大学 | ¥22,239,600 | |
6 | 東京慈恵会医科大学 | ¥22,500,000 | ・学生会経費、保護者会費等は除く。 |
7 | 自治医科大学 | ¥23,000,000 | |
8 | 東邦大学 | ¥25,800,000 | ・委託徴収金は除く。 |
9 | 昭和大学 | ¥28,145,000 | ・2年次以降の学生会費、父兄会費 (計25万円)を含む。 |
10 | 大阪医科薬科大学 | ¥29,075,000 | ・委託徴収金を含む。 |
11 | 東京医科大学 | ¥29,841,800 | |
12 | 藤田医科大学 | ¥30,526,000 | |
13 | 産業医科大学 | ¥30,697,800 | |
14 | 日本大学 | ¥33,380,000 | ・諸会費を含む。 |
15 | 東北医科薬科大学 | ¥34,000,000 | ・入学時の教科書代は除く。 ・保険料・諸会費等は除く。 |
15 | 岩手医科大学 | ¥34,000,000 | ・諸会費等は除く。 |
17 | 愛知医科大学 | ¥35,100,000 | |
18 | 聖マリアンナ医科大学 | ¥35,142,000 | ・学生自治会費(6年計:20,000円)、 同窓会会費(初年度のみ:200,000円)、 保護者会会費(初年度のみ:112,000円) を含む。 |
19 | 東海大学 | ¥35,506,200 | |
20 | 近畿大学 | ¥35,827,000 | ・校友会終身会費は除く。 |
21 | 久留米大学 | ¥36,378,000 | ・委託徴収金を含む。 |
22 | 獨協医科大学 | ¥37,300,000 | |
23 | 杏林大学 | ¥37,590,700 | |
24 | 兵庫医科大学 | ¥37,600,000 | |
25 | 福岡大学 | ¥37,738,260 | ・入学時の教科書代は除く。 |
26 | 帝京大学 | ¥39,380,140 | |
27 | 北里大学 | ¥39,528,000 | |
28 | 埼玉医科大学 | ¥39,570,000 | ・毛呂山会支部会費(別個設定)は除く。 |
29 | 金沢医科大学 | ¥40,543,000 | |
30 | 東京女子医科大学 | ¥46,214,000 | |
31 | 川崎医科大学 | ¥47,400,000 | ・諸会費を含む。 |
(2023年度の学費の場合)
以上のようになりました。
最も学費がかからない国際医療福祉大学は2千万円を切っています。最難関の慶應義塾大学もかなり良心的で、2千2百万円強です。安価な順から数えて10位以内に入る大学は3千万円に届かない学費です。
ただし、これを「安い」と表現するのも一般市民の感覚からするとピンと来ません。また、後援会費や寄付金などで別途に費用が必要になることもあります。
学費についても、医療機器が高額なので医学部では高い授業料を徴収するのも多少はやむを得ない事情もあります。
例えばレントゲンの検査機器は1千万円以上します。CTスキャンの画像解析機器に至っては高品質なものは10億円以上もします。
これらの医療機器を学校が幾つも用意して使うため、学校側の負担もかなりのものになっています。そういう点で、ますます高性能の医療機器を次々と導入していくのなら、相応の授業料を支払うことになります。
以上のように、2千万円程度〜5千万円弱くらいが私立大学の医学部の6年間の学費です。
国際医療福祉大学
私立医学部合格までに必要な勉強時間
私立大の医学部に合格するには、どれくらい勉強すればいいのでしょうか。
大雑把にいうと、
- 高校生は最低でも年間1,000時間
- 浪人生は最低でも年間2,500時間
以上が目安としてよく言われるところです。
もっとも、英語検定のように合格点数が設定されているワケではなく、受験生同士の競争でその大学の定員数に入り込まないと医学部に合格できません。
したがって、何時間やればいい、というよりは他の人よりも得点できるまでやると思っておきましょう。
私立大学の医学部は、まだ合格し易しいと言われる学校があるかもしれませんが、それでも私立で最も偏差値が低い医学部でも偏差値60以上、最も高い医学部で70以上が合格レベルとなっています。
ただし、医学部受験はやみくもに勉強すればいいというものではありません。
特に私立の場合は大学によって出題傾向にばらつきが大きいため、志望校の特色を把握した上で戦略的に勉強を進めることが大事です。必要な学力を無駄なく強化することを意識しましょう。
その上で、現役の高校生が授業以外でできる家庭内学習の時間で年間1,000時間、高卒生の場合は2,500時間の勉強時間を確保するくらいの意気込みが必要です。
私立大学医学部の卒業後は?
<医師になるには>
学生の大半は、大学を卒業すると臨床医として働きます。臨床医とは、一般的にいう「医師」「医者」のことを指します。
医学部の学生は、医師として実務経験を積むため卒業後の2年間は「臨床研修医」として働きます。そしてこの臨床研修の期間内に、自分が専門とする診療科(内科・整形外科など)を決めます。
「臨床研修医」の仕事の内容は病院ごとに多少違いますが、幅広い分野を実務として習得する研修プログラムが幾つもあります。「医師」として活躍したいと考えている医学部生は、将来を見据えた上で臨床研修へ真剣に臨むことが重要です。
「臨床研修医」はある程度の大きな病院で採用されます。医学部6年生の夏ごろまでに就職活動を始め、卒業後に就職する病院を決めます。研修中は複数の科を経験します。
研修した中で自分の専門としたい診療科を決め、卒業後3年目からその診療科について専門的な研修を終えて、医師として独り立ちをしていきます。
<医学部出身者が就職する主な業界・職種>
- 病院の勤務医になる、または開業医になる
- 研究機関で研究医になる(大学教授も含む)
- 行政機関で医系技官などの公務員になる
- 民間企業で産業医や研究員になる
- 講師などその他の職業に就く
以上が医学部の卒業生の主な就職先です。では、順に見ていきます。
病院の勤務医になる、または開業医になる
臨床医の主な就職先には大学病院、国立病院・公立病院、一般的な民間の病院などがあります。
中でも大学病院には、より高度で難易度の高い検査や治療を必要とする患者さんが来院します。そのため、最新の医療機器や設備導入を積極的に実施することが多く、進んだ医学研究や高度医療の実践が求められます。
一般の病院では、医療機器は最新かつ高性能なものを現場でも必要と感じているものの、高額になるためなかなか導入できないのが実情です。
それに対して、大学病院に勤務すると、医学研究に携われるだけでなく、最新の医療機器や設備を使用した診療を経験できるチャンスがあります。
私立大学病院の業務内容は、外来と入院でそれぞれの患者さんに対する診療と付随する業務があり、多岐にわたります。
また、周辺地域における救急機能を求められている場合には、その中枢としてより高度な治療の提供が必要です。したがって、私立大学病院の職員は多忙といえます。
私立大学病院は、入院機能を持つ医療機関としての役割だけでなく、医学の発展や後進の育成のための研究教育機関という側面も担っています。
そのため、私立大学病院の特徴として、地域の病院・診療所から紹介される難しい症例の患者さんを診療する機会が多いことも挙げられます。
また、医師は自分の病院・診療所を始めることも可能です。ある程度の実務能力をつけた目安として10年目くらいに自分の病院・診療所で診療を始める「開業医」となる医師も出てきます。
研究機関で研究医になる
臨床医に次いで医学部生に人気の高い就職先は、研究医として働くことです。研究医とは、医学における特定の分野の研究をおこなう研究職のことです。
研究医は臨床医と異なり、患者に対して直接医療行為をすることが少なく、それが就職先を考える大きな判断材料となります。例えば大学の研究室などで、医学の発展のために研究をしていきます。
医学部に通い「医師国家試験」に合格し、その後に大学院の博士過程に進む人や、2年間の臨床研修を終えて大学院に進学する人がいます。近年では、臨床研修後に大学院に進学する人が多くいます。いずれにしても、研究医となるには大学院へ進学して医学の知識を深め、学位をとる必要があります。
現時点では治療できない病気の治療方法を研究したい人や、研究そのものが好きな人は研究医を目指します。
研究医の主な就職先には大学の研究所、政府や民間の研究所などがあります。
現在では医学の研究レベルが上がり、一昔前には知られていなかったことも解明されるなど医学は少しずつ進歩していますが、それでも国の難病指定の病気を抱える患者は約百万人もいます。
解明されていない難病の治療法を見つける大事な責務を負って研究機関で働くことになります。
医学部進学を考えている皆さんの中には「医学部に入学したら必ず医者にならないといけないのか?」「他の選択肢はなくなるのか?」など様々な疑問が生じるかと思われます。
医学部を志望する大半の受験生の皆さんは医師を志して入学するとは思いますが、一応他の選択肢についても記載しておきます。
その他の職業としては以下のようなものがあります。
行政機関で医系技官などの公務員になる
医学部の学生のなかには、公務員関係の仕事に就く人も一定数います。人気が高い就職先は、厚生労働省に入省して医療技官として働くことです。
医系技官とは、保健医療に関わる制度づくりの中心になり、人々の健康を守る任務に従事する技術系の行政官のことです。
医学の専門知識を活かし、保健医療に関する制度づくりなどに従事する職種は、日本全体を対象とする制度づくりを担当します。それだけに、社会に与える影響も大きい重要な仕事になります。
ただし、医系技官として働く場合も、卒業後すぐに医系技官にはなれません。まず医療業界で初期2年の臨床研修医として働くことが応募条件となり、その後に公務員試験を受けて合格し、医系技官として働くという順序です。
「臨床医」や「研究医」の働き方をあまり魅力と思えない人は、公務員関係の仕事に就くことを検討する方法があります。
医系技官をはじめとする公務関係の就職先には、厚生労働省、防衛省、地方自治体などがあります。
大体は病院を管轄している厚生労働省で働きます。さらに各市町村の保健所など地方自治体の保健行政や国際機関などに行くこともあります。
保健所では、一般的な医学の知識はもちろんですが、公衆衛生についての知識なども必要なため、医療業界、医系技官を数年経てから就職する人が多いようです。
食品の他に、衛生など環境面を調査して医療機関や国の機関と感染症の対策を考える責務もあります。現在のコロナ禍においてはまさに最前線で働くことになるかも知れません。
民間企業で産業医や研究員になる
医師免許を持った人が「産業医」として民間企業へ就職するケースもあります。産業医とは、企業で労働者の健康管理を行う医師です。
「労働安全衛生規則」という厚生労働省の法令があり、それに基づき一定以上の規模の企業は産業医を選任することを義務づけられています。産業医になるためには所定の研修を終了する必要があり、その後に企業専属で産業医になります。
特定の企業の社員ではなく、嘱託産業医として数社と契約して仕事をすることもできます。企業は自社の社員に健康診断を受けさせる役目もあり、その際は産業医が必要な健康診断をします。
各企業が実施するストレスチェックの結果に基づき、必要な場合は面談などもします。現代はストレス社会と言われ、今後は産業医の人数も増える可能性があります。
産業医の他では、製薬会社の社員となり新薬の開発や市販された薬の安定性や有効性の検証に関わる仕事をする人もいます。仕事内容としては、市販された新薬を処方した医師の反応や、新薬の今後の課題などについての学術論文の作成に携わります。
新薬の評価により、今後その新薬の売上に大きく影響することになるため、医師の感想や論文を調査することは製薬会社にとって重要です。製薬会社で働くためには基本的に5年以上の医師としての経験や専門医資格が求められていることが多いようです。
このように、病院の医師になる以外にも、国内外の大学や研究機関で医学の研究者になる、公務員となって医療行政に携わる、大きい企業の社員の健康を守る産業医になる、製薬会社などの一般の企業で薬の調査研究に関わる、など様々な就職の選択肢があります。
医学部で学んだ知識を活かせるような場で働くにも、幾つもの就職先の候補があるということです。
その他にも以下のような進路があります。
- 旅客船や商業船に同乗する「船医」
- 空港で感染症を担当する「検疫官」
- 保険会社に務める「査定医」
さらに、出生や学歴に左右される事のない起業家や医療系のベンチャー企業勤務など一口に医学部とは言っても様々な道があります。
どの業種にも「医療を通じて社会に貢献する」というコアの部分は変わりません。
講師などその他の職業に就く
教室医学部から教育の道へと進む道もあります。それは予備校講師です。医師国家資格取得を目指す人の為に試験対策のサポートや相談などに応じるという仕事にやりがいを感じる人も少なからずいます。
医師国家試験のための講師ということであれば当然その試験を突破している医師免許持ちの人しかなれません。
職業としては医師ではないため給与面で心配だと考えている方もいるかもしれませんが、そもそも医学部を卒業した学生が教育の職に就くこと自体が珍しいので、優秀な人材を求めている予備校では非常に高い水準の給与で講師を募集しています。
医師経験が10年ほどある医者がそのような予備校講師になる場合は月収が200万円になるとも言われています。
それほど医師免許保有者は貴重な存在です。医者としてのキャリアに疑問を感じた際は予備校講師という選択肢があることも覚えておいていいでしょう。
就職以外の進路
就職以外の進路では、大学院への進学があります。
大学院は研究医として働いていくためにはほぼ必須なものです。そのため、医師のなかには普通の医師として数年働いた後に大学院に入学して、人体の機能のメカニズムや病気の治療法について研究することを主目的に研究医になる人もいます。
また、病院で勤務している医師にとっても大学院を修了すれば将来に大学の教授になる道もあります。次代の医師や研究者を育成する人も当然に必要で、例えば研究医の育成を専門とする「MD-PhD」というコースもあります。
このコースでは医学部4年生までは他の学生と同じように学習を進めますが、次に大学院で研究する生活を過ごし、医学博士の学位を取得してから再び医学部5年生として復学します。
こうして医学部を卒業し、国家試験を受験する学習課程になっています。
このメリットは、研究に早い段階から取り組めることです。
大学では一通りの医学を修めて卒業するため、卒業時点ではどの分野の医師になるかまでは決められていません。
医師国家試験に合格し、医学部を卒業した後は臨床医として2年もの間、医師のキャリアを重ねることになります。この2年間を臨床研修と呼び、病院に正規採用される前段階の研修とされています。
臨床研修では責任者が作成した研修プログラムに沿って行われる事になっており、大抵の場合は7分野(内科や外科など基本的なもの)で構成されています。
2年間の臨床研修が終わると、その後専門医を目指すためのプログラムに参加することになります。分野にもよりますが、研修期間は5年ほどと専門技能を身につけるためには十分な期間といえるでしょう。
専門医を目指すための研修では皆さんの進みたい分野に応じて研修を行い、認定を受ける事で完了します。
その後は更に専門性の高い専門医の認定を受けることが出来ます。
医学部卒業後の基本的な流れとしては2年間の臨床研修、その後皆さんの希望に合わせた5年ほどの専門医研修、更に専門性を磨きたいのであればそれに特化した資格取得の為に研修や学習を行うことになります。
こうした一連の流れを経て一人前の医師として現場で活躍することになります。
慶應義塾大学医学部
まとめ
今回は「私立大学の医学部でヒエラルキーがあるのか?マナビバ調査!」のテーマで書き進めました。
難易度でヒエラルキーを見る場合、医学部に関しては、国公立大学の中の上位の学校よりは総じて合格しやすいと見られている私立大学が多くある、ということがわかりました。
それでも非常に難関であることに変わりありません。
また、歴史や伝統でヒエラルキーを見ることもあります。
医学部は国民の生命と健康を守るため、単に民間で好きなように私立の医学部の大学を設置できるようにはなっていません。国との関わりが大きいことから、国公立大学とともに私立大学も設置の年代が大学の格付けに大きく影響しています。
その他、合格するための勉強時間は大まかに高校生は年間1,000時間であることや、医学部の卒業後の進路は私立大学の出身なら私立大学病院や開業医など幾つもの選択肢があることもわかりました。
これを参考に、私立大学医学部への準備をしっかり整えましょう。