「コスパが悪い」は、経済的に損をしてしまう意味で使われることが多い言葉です。
しかし、それ以外にも幾つかの意味合いで使われるかことがあります。
例えば、「時間がかかった割に見返りが少なかった」「労力を費やしたのに成果が上がらなかった」などです。
ではこれを、「大学のコスパ」に当てはめてみるとどんな表現になるでしょうか。
- 受験勉強にかかった時間と労力の割りにはあまり評価されなかった
- 高い学費の割りには就職後の収入があまり良くはなかった
というようなことになります。
今回は、「コスパの悪い大学」についてマナビバが調査し、解説します!
コスパの悪い大学6選
最初にズバリ、「コスパの悪い大学」とはどんな大学かを見てみましょう。
- 1.難易度の低い私立理系の大学
- 2.難関大学の農学部、生物系の学部
- 3.上位レベル以上の大学で実学系以外の文系学部
- 4.TOCKY
- 5.成成明学獨國武の文系学部
- 6.知名度の低い中堅クラス以上の国公立大学の理系学部
以上の6つがコスパの悪い大学です。
文系、理系でいうと、
- 文系 ⇒ 「経営や法律などの実学系、英語などの実技系」以外の学部
- 理系 ⇒ 「生産・販売につながる工業・情報系、医療系」以外の学部
では、これらについて、どのようにコスパが悪いのかを具体的に見ていきましょう。
考察する材料は、大雑把ですが次のようになります。
- その大学、学部・学科に入るために必要な準備のコスト
- その大学、学部・学科を卒業するために必要なコスト
- 就職した後に得られる収入や地位など
以上のように、主に進学に関わる費用や時間、労力などをまとめて「コスト」として見ます。
そして、就職後に得られる収入、リターンが「コスト」に見合うだけのものになったかどうか、を考えます。
もっとも、好きなことがあって、一生その好きなことに関わっていければ十分に幸せとも言えるので、「コスト」という現実に無関心な人もいます。
全く「コスト」がかからないという話はありません。ただ、費用や時間や労力がかかったとしても、その後の収入や地位などリターンについては一切関知しない無頓着なままでオーケー、という人は少なからずいます。
「大卒なのに収入が少ない」
まず、確認しておきましょう。「高卒」と「大卒」とではどちらがコスパがいいのでしょうか?
それは、「大卒」です。
以下のグラフは、いわゆる「生涯賃金」を学歴別に表示したものです。
(退職金データは就労条件総合調査から推定)
(退職金データは就労条件総合調査から推定)
男女を別々に見ると、男性で「大学・大学院卒業」の人は「高校卒業」「専門学校・短期大学卒業」の人より約4千6百万円も上回っています。
一方、女性は、「大学・大学院卒業」の人は「高校卒業」の人と比べると5千万円以上も上回っています。
ここまでの金額の差が広がると、例えば地方で土地が高くない場所なら家1軒くらいの違いになってきます。
大学に行けば、後から大まかに4千万円くらい高卒の人より生涯の収入が高くなります。当然ながら医学部でもない限りは大学の学費に4千万円もかかりません。
したがって、前提として、「大卒」の人は平均的な年収を得ていれば、決してコスパが悪いと言うことにはなりません。
ところが、学歴はあまり関係なく「ただ大学を出ただけ」という評価になると、まるで違ってきます。
理系は理系でも、難易度の低い私立理系の大学を出ていて企業側の求める開発や研究のレベルに届かない人は、特別に高い給料をもらえることにはなりません。
仮に国公立で難関大学の農学部、生物系の学部で研究活動が得意な人でも、自分の得意分野とは異なる分野に取り組むのが苦手だったり、他の人とコミュニケーションが取れない、企業としての視点が持てない、などで期待外れになることもあります。
就職先で企業が想定していた戦力として評価されず、解雇もできず、その結果それがもし「大卒も高卒も関係なく一律で一般社員はみんな同じくらいの給料」という扱いになってしまったら、どうなってしまうのでしょうか。
就職活動が上手くいかず、年齢に関係なく新人は全員一律で同じ給料からスタートする企業、もしくは高卒と大卒とで月収1万円くらいしか差がない企業に就職すると、後から逆転するのが難しくなります。
そのような企業は、
- 優秀な大学を出た人が来ないので、学力よりもヤル気を優先して採用する
- 人手不足で困っていて、誰でもいいからとにかく採用する
という路線になります。
このような企業は、一見すると売り手市場に見えますが、実際に仕事が見つからなくて「どこでもいいから就職しないといけない」という状況の就活生がいる限り、そう簡単には賃金を上げたりしません。
そもそも売り手市場の時代は終焉を迎え、AIなどが人間に取って代わって作業をしてくれる時代に入って来ています。わざわざ人件費を投入する企業は既にドンドン減っていることは大概の人が承知している時代です。
その結果、
- 大学に通う4年間分は収入が得られなかった
- 大学に通う学費の出費が大きかった
ということになります。これは相当な痛手になります。
さらに、
- 実働年数が高卒者よりも少ないので退職金も少ない
- 年金保険を支払った期間が短いので老後の年金支給額も低くなる
塵も積もれば山となる、のことわざ通りで後からボクシングのボディブローのように効いてくることでしょう。
結論を言えば、「学歴フイルター」で外されてしまう大学の人は、早い段階から入念に就職活動の準備をしておくのが賢明、ということになります。
以上のことから、コスパの悪い大学を出てしまった、ということになりかねません。
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「上位の大卒なのに評価されにくい」
大学に合格するためのコスパ、という観点ではどうでしょうか。
難易度の高い大学に合格するためには、中学や高校で楽しく遊ぶ時間を削り、多大な学習時間を注ぎ込んで中学生活や高校生活を送ることになります。塾や予備校に通い、その通塾費用もけっこうな金額に達します。
せっかく費用と時間と労力をかけて合格した難易度の高い大学なのに、それをあまり評価してもらえなかった場合、色々な面で損失を被ったと感じてしまうことでしょう。
ただし、本来は大学という所は高等教育機関であって就職や将来の給料を保証してくれる場ではありません。
しかし、それを言ってしまうと元も子もありません。
費用と時間と労力をかけて難易度の高い大学に合格し、卒業するからにはそれ相応の見返りが欲しくなるのも自然な感情です。
そういう面でコスパの悪そうな大学は、関東圏など大都市の国立大学に集中します。
例えば「筑横千」と言われる筑波大学、横浜国立大学、千葉大学などが当てはまることがあります。また、国立で最高峰の女子大学であるお茶の水女子大学も同様です。
これらの国立大学は、北海道大学や九州大学のような旧帝国大学と同じくらいの難関大学です。しかし、その割には北海道や九州のような絶対王者の扱いではありません。
中京圏の名古屋大学や東北地方の東北大学も、他に比べる存在がない「天下の名大」「天下の東北大」ですが、こと関東圏となると筑波大学、横浜国立大学、千葉大学は東京大学や一橋大学や東京工業大学、語学の東京外国語大学などと比べられてしまいます。
さらに、電気通信大学、東京海洋大学、東京農工大学など専門性の高い大学が東京にあり、公立では東京都立大学や横浜市立大学、国立では埼玉大学など実力のある大学がひしめいています。
お茶の水女子大学も、やはり「女子枠」を撤廃できない企業が未だ大勢であることから、「私立女子御三家」の東京女子大学、日本女子大学、津田塾大学と同列に扱われることが多々あります。
この「私立女子御三家」にお茶の水女子大学を加えて「茶津本東」で一括りにされることもあります。
つまり、首都圏の大学はお互いにいい大学同士が並んでいて存在感が薄れ、目立たなくなってしまうのです。そのため、たくさんあるいい大学の中のひとつ、という印象になります。
関西圏では「旧帝国大学+3校」の一角に入る神戸大学も似たようなイメージで見られることがあります。京都大学、大阪大学と並ぶ「京阪神」のビッグ3でありながら、「京大・阪大」と「それ以外」に分けると後者に入れられてしまいます。
以上の損しがちな5大学は、皮肉にも近年の大学群で非常に強力な難関大学を集めたグループである「TOCKY」になります。
この他、知名度の低い中堅クラス以上の国公立大学の理系学部も受験勉強に費やした時間、労力、学費、など諸々の面で大変な割りには評価が低い傾向にあります。
一方、私立では「早慶上智」の一角である上智大学も、やや損をしています。上智大学の看板である英文学科などを除くと、「上位レベル以上の大学で実学系以外の文系学部」が幾つかあり、そこに入学するまでの道のりは大変なものです。
受験の難易度では早慶とほぼ同じでありながら、就職になると早慶とは別枠にされることが度々あります。特に理系学部は、難関なのに知名度が低く、東京理科大学のほうが有名です。
文系は、さらにその傾向が強くなります。上位レベル以上の大学で実学系以外の文系学部を卒業している人も当てはまります。
かなりのキツイ受験勉強に取り組んだのに、「大学で何を研究してこようとも、その個人の興味の範囲内のもので、業務とはほぼ関係ない」程度にしか見てもらえないことはザラです。
受験ではMARCH以上の大学に進学することを目指して頑張ったものの、一歩及ばずに「あと1問正解で合格だった」などで成成明学獨國武の文系学部へ進む人が大量にいます。
MARCH下位の法政大学や中央大学と比べても、成成明学獨國武の文系学部の実際の学力はあまり変わりません。しかし就職戦線ではあからさまに学歴フイルターの洗礼を浴びることが多々あります。
上智大学ほどの学力はありませんが、往々にして経営学部や法学部の実学系以外の文系学部や、実践的な外国語を習得している語学などの実技系を除く非実技系の文系学部は、たとえ上位校に合格していても企業からすると戦力として確実に計算できないのです。
厚生労働省の資料では、以下のような賃金格差が出ています。
出身の学部 | 平均年収 |
---|---|
文系出身者 | 583万円 |
理系出身者 | 681万円 |
平均で理系が文系より百万円くらい年収が高いことがわかります。働く年数には個人差がありますが、単純計算で理系の生涯賃金が4千万円程度は多いことになります。
「大学の学費が高かった」
学費が高い、といえば私立大学です。また、学費が高いといえば理系の学部は文系より費用がかかります。
これを合わせると私立大学の理系学部は学費が高い、と認めざるを得ません。さらに、理系は大学院まで進学する人が多く、2年間の学生生活が追加されます。
つまり、私立理系の高い学費を6年間も払わなければならないワケです。この時点でかなりコスパが悪いことは自明です。これが、就職で高い給料をもらって大きなリターンがあるなら話は別です。
ところが、工学や電子などの学部学科とは違い、理学や農学、生物学や環境科学のような、機器を生産して利益を上げることに直接は繋がらない学部学科も理系には多いのです。
大学に入学するのに理系は文系より学習時間が必要で、なおかつ入学後は目一杯ずっと研究活動に時間を奪われ、その学費は文系より高額、というのが理系の宿命です。
それなのに就職先でそれほどの見返りがなかったら、コスパが悪いということになります。総じて、難易度の低い私立理系の大学の出身者は、支払った学費が高いのに就職後の収入は特に高くなかった、という事例が多いようです。
ただ実際には、どちらかと言うとコスパの良し悪しで学部学科を選ぶよりも、その学問分野が好きか嫌いで進学先を選ぶ人が多いのが自然と言えるため、見返りを考えて進学先を決めろというのも少し無理があります。
理系以外には、ピアノなど音楽の学部学科は他の学部学科より授業料が高いのもよく知られています。音楽関係の仕事に就いたはいいが、収入は高くなく、副業でアルバイトをして生活を維持している人はゴマンといます。
まとめ
今回は、「コスパの悪い大学6選!なぜ、その大学に行くと損をするのか?マナビバが解説!」のテーマで書き進めました。
コスト(cost)とは、何らかの作業や営業、習い事、レジャー、食事などをする際に伴う出費のことを言います。何をするにもそれなりの費用がかかる、というのは誰もが承知しているところです。
このコストには、同じような和訳で「犠牲」と訳すこともあります。単純に買い物をするときの代金、料金、ということならわかりやすいですが、今回のテーマのような勉強や進学に関わるコストとなると、少し話が違います。
学費はもちろんですが、大学入学前の受験勉強にかけた時間、労力、大学入学後に費やした時間や労力なども加味すると、単純に数字では表せなくなります。様々な点で金銭以外に払った犠牲も大きいことでしょう。
その一方で、大学に行くことで得られるものも非常に大きいワケですが、それをコストに対する見返りとして考えると、数字だけではないにしても「コスパ」が良かった、悪かった、という表現が出てきます。
まず学生生活そのものが大事な人生の1ページになるので、そのコスパは簡単には計れません。ただ、就職した後の収入に絞って見れば、大体のコスパは大雑把ながらも計ることは可能です。
- 1.難易度の低い私立理系の大学
- 2.難関大学の農学部、生物系の学部
- 3.上位レベル以上の大学で実学系以外の文系学部
- 4.TOCKY
- 5.成成明学獨國武の文系学部
- 6.知名度の低い中堅クラス以上の国公立大学の理系学部
大前提として、文系、理系でいうと、
- 文系 ⇒ 「経営や法律などの実学系、英語などの実技系」以外の学部
- 理系 ⇒ 「生産・販売につながる工業・情報系、医療系」以外の学部
これらのコスパが良くない、ということが言えます。
みなさん、進学については自分の興味関心が第一かも知れませんが、自分ひとりで学費を捻出しているのでないなら、負担する家族の犠牲についても一考するのは当然ですね。
ただし、これたのコスパの良し悪しは、あくまでも傾向に過ぎず、自分の頑張りや工夫、磨いた個性でどのようにもなります。
ひとつの参考資料としてご覧ください。