日本の国立大学や公立大学は、2024年現在で186校あります。
うち、国立大学が86校で、公立大学はちょうど100校です。
国公立大学の魅力は幾つもありますが、
- 学費が安い
- 研究施設が整っている
この2点は特に代表的です。
また、これが地方の国公立大学となると、
- 学生も教授も地方の私立大学より優秀
- 就職活動で優位
この2点が評価点として加わります。
もし、ここに「理系」であると、研究施設の充実度が高く、学費のお得さが断トツになります。さらに、地方での国公立大学は地域の中で比べる相手がいないくらい別格の扱いとなり、就職活動での優位な状況が顕著になります。
では、それに対して「文系」の評価はどうなのでしょうか。
「地方」の「国公立大学」で「文系」となると、評価の高い大学にはどんな大学の名前が挙がるのでしょうか?
マナビバが調査し、ご紹介します!
学力の評価が高い地方国立大学(文系編)
<広島大学>
国立広島大学については、わざわざ説明するまでもなさそうですが、ここでは広島大学をご紹介します。
旧帝国大学ではなく、関東圏にも関西圏にも中京圏にもない地方の大学で、文系に特に強い大学でかつ学力が高い、となると真っ先に広島大学が出てきます。
歴史と伝統があり、社会的にも評価があり、非常によく知られた存在ですが、現代の三大都市圏から外れた中四国エリアにあるという点で、広島大学は地方の大学という位置づけになります。
日本には旧帝国大学が7校しかありません。もし旧帝国大学が10校くらいあるなら、広島大学はその中の1校に数えられたに違いないでしょう。中国地方と四国地方を合わせたエリアで最高レベルの学力があり、九州大学や北海道大学に匹敵する難易度です。
現在の広島大学は総合大学で、理系も医学部を筆頭に優秀な学部が集まっています。それでも広島大学は元来は教育に特化した大学だったため、教員養成に長い実績があり、そういう意味で文系寄りの大学というイメージがついていまいた。
明治7年(1874年)の白島学校という名称が広島大学のルーツですが、旧広島師範学校、広島高等師範学校、広島高等女学校、広島高等工業学校、広島県実業補習学校教員養成所、広島高等学校、広島文理科大学、広島市立工業専門学校、広島県立医学専門学校、といった多くの学校も前身です。
各分野で専門家や教員を輩出し続けてきた広島大学は、常に高い学力を維持してきました。
学力の評価が高い地方公立大学(文系編)
<都留文科大学>
山梨県の公立大学である都留文科大学は、教員養成で長い伝統を誇り、また幅広い教養を身につけられる大学として定評があります。
2018年より教員養成と幅広い教養をさらに深めるため、4学科を有する「教養学部」になりました。教養学部の他には文学部があります。
教養学部の中に有名な学校教育学科があります。蓄積されたノウハウと教育現場に即した独自のカリキュラムで、豊かな学びを実現できる教師を目指します。
学校教育学科とは別に、実践的な授業を重視して地域で活躍できるグローバルな視点をもった人材を育成する地域社会学科があります。
また、異文化間の関係の探究を通して、新たな文化創造の担い手となる比較文化学科もあります。
グローバルな視点で現代世界の諸問題を捉えていきます。
さらに、日本文化を基盤とした創造性を地域から世界へ、様々な分野に活かすことのできる国際教育学科も設置されています。世界に通用する教育のクリエイティブ・リーダーを育成します。
都留文科大学は、同じ中部地方で距離の近い静岡大学や信州大学、隣接する関東の埼玉大学などと比べても遜色のない教養レベルがあり、全国から受験生が集まります。それだけに長い間、国立大学並みの難易度を維持してきました。
どちらかといえば学力というよりも教養の高さで就職にも力を発揮しているのが都留文科大学の特徴です。
国公立大学文系・学力トップ30
総合大学には幾つもの学部があります。今回は、代表的な学部を中心に、他の学部も加味してランキングを作成しています。
なお、文系と理系の両方に股がる総合〇〇学部や〇〇科学部、環境〇〇学部については、文系色の強い学部のみ掲載しました。
順位 | 大学 | 所在地 | 偏差値 |
1 | 東京大学 | 東京 | 67.0~72.5 |
2 | 一橋大学 | 東京 | |
3 | 京都大学 | 京都 | |
4 | 東京工業大学 | 東京 | 65.0 |
5 | 大阪大学 | 大阪 | |
6 | 東京外国語大学 | 東京 | |
7 | 東北大学 | 宮城 | |
8 | 九州大学 | 福岡 | |
8 | 神戸大学 | 兵庫 | |
10 | 名古屋大学 | 愛知 | |
10 | 東京農工大学 | 東京 | 52.5~67.5 |
11 | 東京藝術大学 | 東京 | |
12 | 横浜国立大学 | 神奈川 | |
13 | 筑波大学 | 茨城 | |
13 | 北海道大学 | 北海道 | |
15 | お茶の水女子大学 | 東京 | |
16 | 金沢大学 | 石川 | |
17 | 東京学芸大学 | 東京 | |
17 | 信州大学 | 長野 | |
17 | 三重大学 | 三重 | 50.0~65.0 |
17 | 広島大学 | 広島 | |
21 | 東京都立大学 | 東京 | |
21 | 千葉大学 | 千葉 | |
23 | 電気通信大学 | 東京 | |
24 | 岐阜大学 | 岐阜 | 47.5~70.0 |
24 | 岡山大学 | 岡山 | |
24 | 島根大学 | 島根 | 47.5~65.0 |
24 | 山口大学 | 山口 | 47.5~65.0 |
24 | 熊本大学 | 熊本 | |
24 | 佐賀大学 | 佐賀 | 47.5~65.0 |
30 | 奈良女子大学 | 奈良 |
順位 | 大学・学部 | 偏差値帯 | 所在地 |
---|---|---|---|
1 | 東京大学(文科Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ) | 67.0~72.5 | 東京 |
2 | 京都大学(文、法、経済、教育) | 62.5~72.5 | 京都 |
3 | 一橋大学(商、経済、社会、法) | 65.0~70.0 | 東京 |
4 | 大阪大学(文、法、経済、外国語) | 60.0~70.0 | 大阪 |
5 | 名古屋大学(法、経済、教育、情報文化) | 57.5~65.0 | 愛知 |
6 | 神戸大学(文、法、経済、経営、国際文化) | 57.5~65.0 | 兵庫 |
7 | 九州大学(文、法、教育、共創、経済) | 57.5~65.0 | 福岡 |
8 | 東北大学(文、法、教育、経済) | 57.5~65.0 | 宮城 |
9 | 北海道大学(文、法、教育、経済) | 60.0~65.0 | 北海道 |
10 | 東京外国語大学(言語文化、国際社会、国際日本) | 60.0~65.0 | 東京 |
11 | 筑波大学(人文文化学群、社会国際学群、芸術専門学群) | 60.0~62.5 | 茨城 |
12 | 大阪公立大学( 文、法、経済、商) | 57.5~65.0 | 大阪 |
13 | 横浜国立大学・(教育人間科、経営 、経済、都市科学) | 55.0~65.0 | 京都 |
14 | お茶の水女子大学・(生活科、文教育) | 57.5~62.5 | 東京 |
15 | 京都府立大学( 文、公共政策) | 57.5~62.5 | 神奈川 |
16 | 千葉大学・(文、法経、国際教養、教育) | 52.5~65.0 | 千葉 |
17 | 広島大学(教育、文、法、経済 ) | 50.0~65.0 | 広島 |
18 | 国際教養大学(国際教養) | 57.5~60.0 | 秋田 |
19 | 名古屋市立大学(経済、人文社会) | 50.0~62.5 | 愛知 |
20 | 奈良女子大学(文、生活環境) | 52.5~60.0 | 奈良 |
21 | 岡山大学(法、文、教育、経済、 グローバル・ディスカバリー・プログラム) | 50.0~65.0 | 岡山 |
22 | 東京都立(人文社会、都市環境、健康福祉) | 52.5~62.5 | 東京 |
23 | 東京芸術大学(美術、音楽) | 55.0~62.5 | 東京 |
24 | 神戸市外国語大学(外国語) | 50.0~62.5 | 兵庫 |
25 | 東京学芸大学(教育) | 50.0~60.0 | 東京 |
26 | 熊本大学(文、教育、法) | 50.0~60.0 | 熊本 |
27 | 愛知県立大学(外国語、日本文化、教育福祉) | 52.5~57.5 | 愛知 |
28 | 都留文科大学(教養、文) | 52.5~57.5 | 山梨 |
28 | 新潟大学(人文、教育、法、経済科) | 50.0~60.0 | 新潟 |
28 | 信州大学(人文、教育、経法) | 50.0~60.0 | 長野 |
28 | 横浜市立大学(国際教養、国際商) | 52.5~57.5 | 神奈川 |
28 | 埼玉大学(教養、経済、教育) | 52.5~57.5 | 埼玉 |
28 | 金沢大学(人間社会学域) | 52.5~57.5 | 石川 |
総合大学では、やはり東京大学と京都大学を筆頭に旧帝国大学の文系学部が際立っています。
文系のみの大学では一橋大学が群を抜いた存在です。また、受験科目の英語は文系か理系かに分けられていませんが、大学で英文学や国際文化、語学教育などは文系の範囲となるため、東京外国語大学やお茶の水女子大学も上位です。
首都圏と近畿圏、中京圏は、国立大学だけでなく公立大学も優秀です。このように見ていくと、地方の国公立大学が首都圏や近畿圏に割って入るのは困難な状況と言えます。大都市圏に近い所にある大学では、静岡や岡山にある大学もほぼ大都市圏に含んで見ても差し支えありません。
熊本大学は旧帝国大学に匹敵する歴史と伝統があるので上位にいても何の違和感もありません。それ以外の地方の大学は上位30校に入るだけでも健闘していると言えるのかも知れません。
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就職の評価が高い地方国立大学(文系編)
<香川大学>
香川大学は、戦前からの高等商業学校の名門で、経済学部と法学部は間違いなく四国でトップです。
四国にはそもそも経済学部と法学部を持つ国立大学は、香川大学しかありません。
文系の受験生で四国在住の人は、例えば経営学を勉強したいなら、経済学の中に経営学も含まれるため、香川大学を受験することになります。当然に国立大学なので簡単には合格できませんが、ここを受かれば四国の国立大学で経営学の勉強ができます。
私立大学なら四国の中に松山大学がありますが、やはり文系の名門というと、経済や法律に関しては香川大学が四国で最高峰です。レベル云々の前に、競合する大学が見つからない点で香川大学の独壇場と言えます。
理系ではなく文系で、さらに国立大学でしっかり勉強してきた人が企業に入るために就職活動を始めるとなると、四国では香川大学の学生が企業の人事部から注視され、まず優位に立つ公算が非常に大きいです。
四国の国立大学を見ると、同じ文系の学部でも人文系では高知大学がよく知られています。一方で医学や歯学の医療系では徳島大学が有名です。また、農学部などに実績があり、文系理系のトータルでは愛媛大学が総合大学としての評価が高いです。
それらの四国の国立大学の中で、実学系の法律と経済に強い香川大学は、文系の大学で就職の評価が高い大学です。
就職の評価が高い地方公立大学(文系編)
<国際教養大学>
秋田県の国際教養大学は、公立大学です。2004年に全国で初めての公立大学法人として設立されています。
「国際教養大学部」のみの単科大学で、全ての授業を英語で行います。
徹底した少人数教育で、1クラス15人前後の編成です。新入生は1年間の寮生活で外国人留学生と共にコミュニケーションをとります。また卒業までに1年間の海外留学が必須となっています。キャンパス内は外国人留学生が多数で、外国人の教員も日本人の教員と同じくらい沢山います。
事実上、英語漬けの学生生活が義務づけされていると受けとめて相違ありません。そのキャンパスや教室の光景は他の大学とはかなり違い、さながら異文化空間と言えます。
それだけに、企業から注がれる目も違います。特に商社やメーカーなどの全国企業で評価が高いのも当然かも知れません。
地方の田舎暮らしや外国人と共同の寮生活、海外留学などを経験した国際教養大学の卒業生は、都会で便利な楽しい学生生活を送るイマ時の学生たちとは一線を画し、どんな僻地に飛ばされてもたくましく働けます。
単に英語ができるだけでなく、学生生活を送った環境も評価の対象になっているのです。
地方の国公立大学「文系」は就職できるの?
<就職率の比較>
文系 | 理系 | |
国公立大学 | 97.3% | 97.5% |
私立大学 | 97.0% | 98.4% |
文系vs理系は
地方の国公立大学文系の就職率は、文系と理系で大きな差はありません。
文部科学省の「令和4年度大学等卒業者の就職状況調査(令和5年4月1日現在)」によると、2023年4月1日時点では、国公立大学で文系の就職率は97.3%です。
一方で理系の就職率は97.5%となっています。これを見る限り、文系でも理系とほぼ同じくらいの就職率です。
また、約97%という数値から、大都市圏の学生と比べても変わらないことがわかります。いくら大都市圏だからといっても100%になることは考えにくく、有名な大手企業などに就職できるかどうかの差はあったとしても、まず就職という大枠については地方の国公立大学の学生も安心できる状況です。
国立vs私立は
また、私立大学と比べると、国公立大学の文系が97.3%の就職率であるのに対し、私立大学の文系は97.0%でした。文系では国公立大学の就職率が私立大学より少しだけ高い数値です。
これにより、国公立大学で文系の学生は、理系と比べてもそれほど就職率が低いワケでもなく、また私立大学よりも良い結果であることがわかりました。
大都市圏vs地方は
さて、肝心の「地方」についてはどうでしょうか。
実は大都市圏と地方を区分けして就職率を比べることができていないのが現状です。なぜなら、どこまでが大都市圏でどこからが地方であるかの区分けによって結果がマチマチだからです。
また、地方出身者で大都市圏の大学へ進学した人が、地元の企業や公務員でUターン就職した場合には、どう見るべきでしょうか。大学の所在地が大都市圏ならば、元々が地方の人で地方に就職できているにも拘らず、地方の数値としてカウントできないのが致命的です。
これでは単に大学単位での比較になってしまい、「地方で就職できるのか?」という問いの答えになっていません。
ここでは、大きなブロックで分けた地域別の就職率をご紹介します。
<地域別就職状況>
地域 | 就職率 |
---|---|
北海道・東北 | 94.8% |
関 東 | 98.4% |
中 部 | 95.4% |
近 畿 | 97.6% |
中 国・四 国 | 98.6% |
九 州 | 96.2% |
この一覧を見る限りでは、確かに関東地方や近畿地方の就職率が高く、やはり大都市圏を持つ地域が優位に思えます。
しかし、中国四国地方は98%以上で近畿地方より高い数値を出しており、広島と岡山以外に大きな都市圏がない割には就職率がいいです。
また、中京圏を有する中部地方は96%に届いていません。北陸などの地方が広いといえば納得できるかも知れませんが、一概にそうとも決めつけられません。
以上のように、大都市圏か地方かについては、ある程度は影響があるものの決定打というところまでにはなっていないのがわかります。
まとめ
今回は、「文系編・評価が高い地方国公立大学とは?マナビバ調査!」のテーマで書き進めました。
「文系」の国公立大学は、「理系」と比べると少し異なる点があります。それは、「文系」なら研究施設にかかる費用が「理系」より低額で済むために私立大学も参入して運営しやすい、という点です。
国には、そもそも国家の産業を育成して経済的基盤を築き、国民の生活に不便がないようインフラ整備などをする責務があります。このため、物資の研究や建造物、交通、農林水産、電気やエネルギー、製品開発など様々な面で理系に関わる研究が必要になります。
こうなると、必然的に国の予算を投じて理系の大学が優先的に造られていくのも納得できます。
これに対して、私立大学は純粋に学問研究や文化、語学、教育などに力をいれることができます。そこで、明治時代から有名な私立大学が「文系」を中心に次々と誕生していくことになります。
以上の経緯から、私立大学も「文系」では国公立大学と競争し得るくらいの充実度を誇るようになっていきました。この結果、「文系」の国公立大学は「理系」ほどの希少価値には見られません。
実際に受験生たちも、学費で多少の負担は強いられるものの「理系」ほどの高額な学費を私立大学へ支払わないで済みます。このことから、志望校を考えるにも最初から私立大学を候補に加えて検討するのは全く珍しくなく、むしろ当たり前のような時代になりつつあります。
それでも、研究施設や教授陣の体制に恵まれ、優秀な学生が集まり、しかも学費が安いとなれば、国公立大学の「文系」も無視できません。特に地方になればなるほど、有名な私立大学が少なくなるので第一志望は国公立大学、という受験生はまだまだ多数います。
今回の記事を参考に、志望校の選定は早めに進めていきましょう!